第21話強くなるために

 父上に手紙を渡した俺は、ついでにとある許可を得た。


 その後は家に帰宅して、母上とカエラとお土産話にて談笑した。


 幸いなことに、二人共気づいていないようなので一安心である。


 ……ただ、カイゼルの顔は怖かったけど……。


 こりゃ——覚悟した方が良いな……。


 もちろん、望むところではあるんだけどな。




 夜が明けて、学校に行く前……。


 覚悟はしてたけど……きついな。


「どうしました!?もう、終わりですか!」


 模擬剣で打ち据えられ、俺の身体はボロボロだった……。


「い、いや!まただ!フゥ……ハァ!」


 それでも立ち上がり……立ち向かっていく……!


「そうです!敵は待ってなどくれません!常に先を考えて行動するのです!体力は?敵の数は?味方は?状況を把握するのです!」


「セィ!」


 渾身の一撃を放つが、軽く弾かれてしまう……!


「甘い!!その体たらくで——何が守れると!?そんなでは迷惑なだけです!大人しく守られている方が——よっぽど良い!」


「ク、クソォォ——!!」


 今度は連続で剣を打ち込む……!


「気迫だけあっても無意味!さあ!強くなりたければ——私を殺すくらいで!!」


「アァァァ——!!!」





 ……だ、ダメだ……。


 身体が動かない……。


「ア、アレス様!?」


「アレス……」


「……この辺で勘弁いたしましょう。では、失礼します」


「カ、カイゼル」


「……何でしょうか?もう、やめますか?」


「いや……明日からも、よろしく頼む……手加減したら、一生恨むよ……」


「……御意」


 カイゼルが立ち去った後、二人が近づいてくる。


「アレス様……大丈夫ですか?」


「どうしたの?アレス……何かあったの?」


「いや、なんでもないんだ。実戦授業で不覚をとったし、これから妹も生まれるからね。大切な友達や家族を守りたいから——何より、僕を守ることで……誰かに死んでほしくないから……」


「アレス様……無理はしてなさそうですね……」


「うん、それはしてないかな。むしろ、やる気がみなぎってきて大変なくらいだよ」


「ならば、母から言うことはありません。アレス——貴方の思うようにやりなさい。そして、ありがとう……」


「長男は家族を守るのが仕事だからね。じゃあ、シャワー浴びてくる!」


「あらあら……大きくなって……」


「もうすぐ9歳ですからね……」




 学校の授業を終えた後、俺はとある場所に訪れていた。


「ふぇぇ〜お、おっきいです……」


「まあ、皇都で1番の図書館だからね」


 今日は、調べ物があるので図書館に来ていた。

 一人でくる予定だったが、セレナが行きたそうにしていたので連れてきたわけだ。

 たしかに、平民には敷居は高いだろうな。

 普通は入れないし。

 ただ、セレナはSクラスであること。

 二つの属性魔法を持っているので許可がおりたってわけだ。

 俺と一緒なのも理由の一つだけどね。


「アレス様、セレナさんですね。許可は下りております。どうぞ、お入りください」


「うん、ありがとう」


「し、失礼します……」


 中に入ると……。


「わぁ……!すごいです……!」


「確かに……」


 見渡す限りの本棚が並んでいる。

 入り口から見えないところまで……。

 どんだけ広いんだ……?


「ど、どこから行けば……」


「何を調べたいんだっけ?」


「魔法の種類ですよ。私は回復魔法を増やしたくて……みんなが傷付いても癒せるように……」


「そうか……立派だと思うよ。僕らも助かるしね」


「は、はい!頑張ります!」


「ハハ……静かにね……?」


 耳元で囁く……。


「あっ——ご、ごめんなさい……はぅぅ……」


「じゃあ、僕は立ち入り禁止区域に行くから。何か困ったら、立ち入り禁止区域の前にいる人に伝えて」


「は、はい……うぅー……ずるいです」


 ……あれれー?意識されてる……?

 図書館は静かにって伝えただけなんだけど……。

 うーん……女の子はませてるなぁ……。




 セレナと別れて、立ち入り禁止区域の前に到着する。


「お名前をよろしいでしょうか?」


「アレス-アスカロンです。許可は得てます」


「ええ、確かに。では、どうぞ」


「ええ、ありがとうございます」


 ここは、皇帝陛下の許可がないと入れない場所だ。

 何千年という歴史が残っている。

 もちろん、失われたものも多いらしいけど。

 俺は以前にも、一度だけきたことがある。

 理由は、闇魔法を学べるからだ。


「えっと……この辺かな?魔族……闇魔法……ドラゴンについて……あった」


 それらしいものを二、三冊とって席に着く。


「闇魔法……影に潜む……あった……これか」


 世界の敵である魔族は闇魔法を使う。

 なので、散々に調べ尽くしたのだろう。

 その手の情報は得られやすい。

 もちろん、俺が皇族であるからだけど……。


「ふんふん……イメージはついたな……あと、必要なのは……」


 魔法は、見たり聞いたりして覚えるのが一般的だ。

 無詠唱もあるけど、中々難しい。

 やっぱり、声に出した方がイメージはしやすいし。

 そう……魔法はイメージはものを言う。

 できない人は、いつまでたっても出来ないし。

 出来る人は、すぐにても出来ることもある。


「姿を変える魔法……うん、これだ。よしよし」


 闇魔法を覚えることには抵抗があるけど……。

 これのおかげで助かったんだし……。

 もっと色々使えた方が良いよな……?

 強くなるために……。


「ドラゴンについて……へぇ……」


 ドラゴンは人間を食う。

 その力を奪い成長する。

 それ以外に食べることはなく、人類の敵とされる。

 悪魔の化身、邪神の使い、破壊の権化などとも呼ばれる。


「食べる……もしかして……」


 正確には……魔力を食べているってことか……?

 それが結果、そのまま食べているだけで……。

 魔力さえあれば良いってことか……?


「今は……寝てそうだな」


 どうやら、このドラゴンはほとんど寝てるらしい。

 反応がない時は、大体そういうことだ。

 赤ん坊だし、食っては寝るを繰り返すのだろう。


「つまり……俺に害はない……というか」


 ドラゴン自体は悪くないってことか……。

 もちろん、そんなこと言えないけど……。


「まあ……俺にも利点はあるし、しばらくは放っておくかね」


 魔力を吸われるということは消費すること。

 その度に身体が活性化し、魔力の総量が少しずつ増えていく。


「よし……こんなものかな」


 ここの使用時間は決まっているから長居は出来ない。


 俺は部屋を出て、セレナがいる場所に戻るのだった……。


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