第22話セレナと魔法の訓練

 セレナと合流した俺は、ついでに火属性も調べることにする。


 二人で並んで椅子に座り、お互いの話をする。


 ここは談話スペースとなっているので、ある程度の声で話しても平気だ。


「セレナはどうだ?」


「えっと……ウォーターボールと、シャワーヒールってやつを覚えようかと」


「そうだね……確か、先生も言っていたよね。あんまり数だけ覚えてもダメだって。二、三個を覚えて、それをモノにしてから次に行きなさいって……」


 だから俺も、闇魔法は少しずつ覚えたんだし……。


「はい、そうですよね。アレス様は?」


「火属性は威力が高くて扱いが難しいからね……ゴブリンくらいなら、ファイアーボールで倒せるから……これかな?」


「ファイアーアローですか……弓?」


「そのイメージで合ってるよ。炎の弓ってところかな。これなら、乱戦や森の中でも使えることもあるし。一点に集中するから、威力も高いしね」


「……私、水魔法で良かったです」


「え?」


「アレス様、遠慮なく炎を使ってください。いざとなったら——私が消します」


「……言ったね?それは、つまり……僕より威力がなくちゃいけないよ?」


「が、頑張ります……!」


 良い目をしてる……何かを決めた……。

 やれやれ……成長が早いな……。

 俺も、ますます負けてられないな……!




 ならばということで、早速稽古をしてみる。


 俺の家に移動して、庭にて対峙する。


「カイゼル、もしもの時は頼むよ?」


「御意。受けきれないと判断したら、私が弾きます」


「お願いね。嫁入り前の女の子に、火傷を負わせるわけにはいかないから」


「あら?どこで覚えたのかしら?」


「アレス様は、たまにじじ臭いというか……大人みたいですよねー」


 おっといけない。

 僕は子供、僕は子供……よし。


「さて……いくよ?ファイアーボール!」


「ウォーターボール!」


 火の玉と水の玉がぶつかり、双方が弾ける。


「やっぱり、かなりの才能があるんだな。一発で出来るなんて」


 風も使えるし、これは一流の魔法使い……賢者になれるかもな。

 どちらも応用力に優れている魔法だし……。


「えへへ〜ありがとうございます!うーん……見たら大体わかるんです!」


 ……やべぇ。

 こりゃ……天才の類だ。

 Sクラスに入れるわけだ……。


「それは凄いな。じゃあ、威力を上げるからね」




 その後もファイアーボールを放つが……全てが相殺される。

 少し、自信がなくなるほどに……。

 ま、まあ、俺は魔法剣士だし?闇魔法もあるし?

 やれやれ……俺も、やっぱり子供だな。

 少し、やり返したくなってきた……!


「カイゼル!準備を!」


「御意」


「セレナ!強いのいくから気をつけてね?」


「は、はい!嬉しいです!わたしにも——本気で来てください!!」


 ……参ったな。

 どこかで、セレナを下に見てた自分がいる……。

 カグラと同じく、この子も強い子だ……。

 ならば……手加減はしない……!


「貫け!ファイアーアロー!」


 矢を射るように構えて——火の矢を放つ!


「ウォーターボール!」


 火と水がぶつかるが——俺の矢は水を貫く!


「わわっ!?」


「カイゼル!」


「承知!」


 カイゼルが素手で掴んで消した……おいっ!?


「か、カイゼル!大丈夫!?」


 いくらカイゼルだからって、素手で火の矢を掴むなんて……。


「ええ、問題ありません。少し、火傷をしましたが。これが確実でしたから」


「ご、ごめんなさい!えっと……この者を癒したまえ——ヒール!」


「むっ……温かい……お嬢ちゃん、ありがとう」


 あれ?なんか目が優しい……?

 そこら辺にいるおじいちゃんみたいに……。

 もしや……女の子には甘いのかも……。


「いえ!こちらこそ、ありがとうございます!」


「うむ……良い子だ。それに……末恐ろしい才能……アレス様、わかっておりますか?」


「もちろんだ、カイゼル。セレナは、最早僕の大切な人。誰が来ようと守ってみせる」


「え?えぇぇ——!?」


 おそらく——貴族や軍から誘われるだろう。

 本人が、望む望まないに関わらず……。

 その場合……平民であるセレナの家では逆らえまい……。

 俺が後ろ盾になり、セレナの好きにさせてあげよう。




 ただ、軽く説明はしておかないとね。

 言質を取られたりしないように。

 素直で良い子だから、その辺は危ないかもしれないし……。


「あっ——そ、そういう意味なんですね……」


「うん、覚えておいて。その力は規格外だ。きっと色々なところから勧誘を受けるだろう……勧誘ならまだ良い……最悪の場合、強硬手段に出るかもしれない」


「そ、それって……?」


「言い辛いけど……両親を脅したりとか」


「こ、困ります!わ、私の両親は普通の人なんです!ただでさえ、私みたいな子で大変なはずなのに……!」


 そうか……やはり、苦労してきていたか。

 貴族である俺らに、相当警戒してたし……。

 学校にも、無理矢理入らされた可能性も……。


「安心して良い。僕が必ず守る」


「アレス様……」


「ただし……それだけではいけない。守りたいなら強くなることだ。どんな不条理なことからも、大切な人を守れるように……だから、それまでは僕が手配をしておくよ」


「……はい!!強くなって両親やアレス様達を守りたいです!」


「うん、その意気だ。僕と一緒に強くなろう。大切な人を守れるようにね?」


「はい!頑張ります!」


 その後も訓練を続け、一緒に夕飯を食べて、きちんと家まで送り届けた。


 ……母上は『これでセレナちゃんが一歩リードかしら?でも、カグラちゃんも良い子だし……』とか言ってたけど……。


 ……うーん……俺の意識としては、子供に見えるから恋愛対象ではないんだよな。


 当たり前の話だけど……。


 ただ……身体は子供だからなのかわからないけど、ドキドキすることはある。


 ……そのうち、アレスと和馬が完全に一体となる日も近いのかもしれない……。

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