第17話侯爵家にお泊り

 休憩を挟みつつ、観光的なことをしながら馬車は順調に進んでいく。


 そして……夜暗くなるギリギリに到着することができた。

 朝早く出たから……10時間ってところか。

 貴重な魔物である、調教された魔物の馬(ホースベアーというらしい)のおかげだな。

 疲れ知らずて、速さも落ちることなく走ってくれたからな。

 さすがは、侯爵家といったところか。




 到着して、門の中に入ったのは良いのだが……。


 ……はて……どうしたら良いのかな?


 目の前には……何百人という人間が……


「「「申し訳ありませんでした!!!」」」


「「「そして、ありがとうございます!!!」」」


「えっと……なにかな?」


「ち、父上!皆の者も!顔を上げてください!恥ずかしいですから!」


「ハハ……なるほど、似た者親子ってことか……」


 カグヤも、母さんに土下座してたし……。



 その後、人々は俺に挨拶をして去っていった。

 どうやら、カグラは相当愛されているようだな。

 無理もないか……貴重な人間だもんな。


「お初目にかかります、アレス様。私がブリューナグ家当主である、クロイス-ブリューナグでございます。我が娘を助けてくれたこと、誠にありがとうございます。そして、本来守るべき方に守らせてしまったこと、深くお詫びいたします」


「妻のクレハと申します。娘がご迷惑をおかけしております」


「いえ、お気になさらないでください。僕が勝手にやったことですから。カグラは大事な人ですからね」


「あぅぅ……」


「あらあら……これは大変ね」


「……むむむ……!複雑だが……まあ、このような方なら安心ではあるか……」




 挨拶の後、部屋へと通される。

 今日は、このまま泊まっていく予定だ。

 三連休なので、明日1日は自由に使えるな。


「オルガ、よろしくね」


「い、良いのでしょうか?僕のような男爵の子息が、皇子であるアレス様と一緒の部屋で……」


「オルガが嫌じゃなければ、お願いしたいかな。一人じゃつまらないし、護衛の騎士じゃ気疲れしちゃうしね」


「……そういうことでしたら。僕でよければ、お供いたします」


 ウンウン、良かった。

 オルガは、俺達に遠慮してるところがあるからな。

 一緒にいるのが、侯爵子息と皇子と平民だから無理もないけどね……。

 どういう組み合わせだって話だよなぁー。

 これを機に、遠慮が少しでもなくなると良いんだけどな。



 荷物を置いたのちに、食事会にお呼ばれする。


「さあ、お召し上がりください」


「本日は僕達のためにありがとうございます。では、いただきます」


「いただきます」


「い、いただきます!」


「いただくのだ!」


「ふふふ……セレナさんと言ったかしら?」


「ひゃい!?」


「そんなに緊張しなくても良いわ。今は、ただの母親としてお礼を言わせてください。カグラと仲良くしてくれてありがとう」


「私からも礼を言う。この子は、少々変わっておってな……それが良いところでもあるのだが……魔境と言われる皇都でやっていけるか心配だったが……友達が出来たようで安心したよ」


「い、いえ!私の方がお世話なってます!カグラちゃんは、平民の私にも普通に接してくれます!えっと、あの、私はカグラちゃんが好きです!」


「セレナ!拙者は嬉しい!」


「こら!食事中に立ち上がるんじゃありません!」


「ご、こめんなさい!」


 ……これが、父上が信頼するというブリューナグ家……。

 なるほど……これが、本物の貴族というやつか。

 他の貴族とは器が違うな……。


「して、アレス様」


「はい、何でしょうか?」


「敬語はよしてくださいませ。貴方様は、皇族なのですから」


「公の場ならそうしますが……こちらはお世話になる身です。それに敬意を払うのは当然のことかと。あなた方のおかげで、我々は平和に暮らすことが出来ているのですから。父上からも、感謝を伝えてくれと言付けを預かっております」


「な、なんと……!」


「まあ……!」


「ふふん!どうですか!これがアレス様なのだ!」


「……噂を鵜呑みにはしてなかったが……ここまでとは……」


「ええ……王妃様達が気にくわないわけですね……こんなに真っ直ぐな人では……」


「うむ……アレス様」


「はい、何でしょうか?」


「もしお困りのことや、何かありましたら当家を頼ってくださいませ。出来る限り力にならせて頂きます」


「娘の命の恩人ですし、初恋の方ですからね」


「は、は、母上ぇぇ——!?」


「あら、ダメよ。こんな良い男はそういないわ。早めに掴まえておかないと」


「ハハハ……」


「さて……オルガ君と言ったかな?」


「は、はい!」


「父上は元気かな?私は戦場で共にしたことがあってな……」


「はい!聞き及んでいます!」


「それで、セレナちゃんもアレス様が好きなのかしら?」


「え、えっと……はぅぅ……」


「ふふ……ごめんなさいね」


 ……気配りまで完璧だ。

 緊張している2人に、さり気なく話しかけている。


「カグラ」


「は、はぃ……」


「良いご家族だな」


「……はい!ありがとうございます!」


 こうして楽しい時間は過ぎていった……。


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