第13話初めての魔物討伐

 さて……今、俺達は馬車に乗っている。


 ちなみに、今日魔物討伐するのは、SクラスとAクラスのみだ。


 それ以下のクラスでは、ゴブリンすら倒せないからな……。


 まだ8歳だし、魔力強化を使えない子も多いだろうし。


 俺も闇魔法を温存しつつ、どこまでやれるかだな……。


 闇魔法は……邪神の眷属が使う魔法とされているからな。


 もちろん、過去には使い手もいたが……。


 ただでさえ、聖痕がないのに……何を言われるか……。


 だから、人前では使えないんだよな……。


「アレス様?どうしたのだ?」


「いや、なんでもないよ。少し緊張しているのかもね」


「わ、私もです……良かったぁ……私だけじゃないんだ……」


「僕も緊張しますね。ゴブリンとはいえ、初めての魔物ですから……」


「オルガは嫡男だけど、よく許可が出たね?」


「いえ、だからこそです。国境付近を守る我が家は、強くあらねばなりませんから。断ったら……父上に殺されます。なら、ゴブリンの方が怖くないです」


「ハハ……そういや、そういう家だったね。実直で真面目な方だと、父上も褒めていたなぁ……」


「それは……父上も喜びます!わぁ……!嬉しいなぁ!」


 あらあら、やっぱり大人びてても8歳だな。

 オルガは良い子だし、これからも仲良くしたいな。


「アレス様!拙者の家は!?何が言ってましたか!?」


「うん?ああ、もちろん。平民にも平等に接するし、悪いと思ったら自分にも意見を言ってくれる貴重な存在だと。あれこそが家臣の鏡であり、本来の貴族のあるべき姿とも」


「そ、そうですか……!やったぁ!えへへー」


 ウンウン、カグラも素直で良い子だ。


「ところで、カグラも許可出たの?なんか、溺愛されているって聞いたけど……」


「……実は、反対されたのです。でも……アレス様の役に立ちたいって言ってきたのです!アレス様こそが拙者の探してた方だって!」


「えっと……?」


「す、すみません!意味がわからないですよね……えっと……あの……」


「はーい!みなさーん!そろそろ着きますからねー!準備してくださいねー!?」


「カグラ、それはまた今度ね。ただ、その気持ちはとても嬉しいよ。ありがとう」


「は、はぃ……」


「えへへー、良かったね!」


「うんうん、嬉しいですよね」


 その後馬車を降り、最終準備をする。


「さて……フォーメーションの確認かな。剣と身体強化を使うカグラが前衛、そのフォローを魔法と剣が使える僕、その後ろに魔法を使えるセレナ、最後に殿とセレナの守りとして槍使いのオルガ。これでいいかな?僕は、皆の力を頼りにしてる。一緒に頑張ろう!」


「「「はい!!!」」」




 その後、俺達は強い魔物が排除された指定の位置につく。


「はい!皆さん!今から実戦訓練を始めます!先生や軍人の方々が見守っていますが、基本的には手を出しません!もし危ないなと思ったら、すぐに助けを求めること!それを見極めることも大事なことです!」


「「「「はい!!!!」」」」


「良い返事です!それでは……スタート!」


 森の中を、予定通りに隊列を組んで進んでいく……。


 すると……出てきた……!


「全員止まれ……あれが魔物……」


 身長140センチ前後の俺より、少し大きい緑色の身体。

 耳がとんがり、目は落ち窪んでいて気味の悪い顔。

 手には棍棒を持っている……うん、イメージ通りのゴブリンだ。


「あ、アレス様、どうするのだ?」


「まだ、気づかれてないね……セレナ、風魔法を放てるかい?」


「は、はい……でも、まだ威力が弱くて……」


「倒す必要はないよ。あくまでも牽制だ。その隙をついて、僕が攻撃を仕掛ける。カグラはトドメを。オルガは僕たちに隙ができるから、辺りを警戒してくれ」


「わ、わかったのだ」


「お任せください」


「大丈夫だ、カグラ。君の本来の力なら、ゴブリン如き敵じゃないはずだ」


「はい……!」


「い、いきます……!ウインドカッター!」


 木々の間を通り抜け、ゴブリンに命中する!


「ギャギャ!?」


「き、効いてないよぉ……」


「それでもいい!カグラ!僕に続け!」


「はい!」


 さあ……覚悟を決めたんだ。

 躊躇いは……死を招くと思え……!


「ハァ!」


「グギャー!?」


 奴の身体から血が流れる……。

 よし!魔力なしでも、俺の剣は通じる!

 カイゼルの言った通りだ!


「いきます……!セァ!」


 振りかぶりによる一撃は、ゴブリンを真っ二つにする!


「ゴ、ガ……」


「や、やったぁ!できた!」


「おわっ!?だ、抱きつかないでくれ!」


 何をドキドキしてるんだ!俺は……!

 相手は小学生だぞ……!


「私は何もできなかったです……」


「そんなことないさ。きちんとダメージは通っていたはずだよ。動きが鈍かったからね」


「そ、そうなんですか……ほっ……」


「よし、まずは魔石を拾おう」


 魔物を倒すと、宝石のようなものが生まれる。

 白、赤、青、緑、紫、銀、金、黒の順にランクがある。

 それらは教会が買い取り浄化した上で、女神へのお供え物として扱われるらしい。


 白い魔石を拾い終えると……オルガが耳打ちしてくる。


「アレス様……!二匹います……」


「オルガ、警戒ありがとう。さて……オルガ、一体を頼めるかい?倒さなくて良い、引きつけるだけでも。もちろん、倒しちゃっても良いけどね?」


「ええ、お任せを」


「アレス様、拙者は?」


「セレナの護衛を頼めるかい?今度は、僕が倒す……!」


「け、牽制しますか?」


「ああ、お願いするよ。ただ、右にいる奴にね。そうすれば、寄ってくるだろうから。それをオルガ、頼んだよ」


「はい!」


「それと、セレナ……魔法とはイメージらしい。優しいところはセレナの良いところだと思う。でも、これは戦いだ。攻撃するという意思を持って放つんだ」


「アレス様……はい!やってみます!……ウインド……カッター!!」


 先ほどとは速さが桁違いの風の刃が飛んでいく!


「グギャー!?」


「き、効いた……?で、できたぁ!」


「よくやったね。では、僕はアイツをやる……一撃でね!」


 女の子に偉そうなこと言ったんだ……!

 ここで臆したら……男じゃない!!


 怒ったゴブリンを躱し、奥のゴブリンに向かう。


「グギャー!」


 魔力を通す……全身に……一撃で!!


「ハァァ——!!」


「グギャ——!!??」


 俺の一撃は、棍棒ごと真っ二つにした!


「フゥ……できた……」


 それに……特に忌避感は感じない。

 やはり……俺は和馬ではなく、アレスということなのかもしれない。


「はっ!そんな場合じゃない!オルガ!?」


 振り向くと……心配は無用のようだ。


「セイッ!」


「グ、グギャ……」


 オルガの槍捌きに、ゴブリンは近づけないでいる。

 へぇ……防御も上手いな。

 オルガは精神も強そうだし、敵を引きつけるの得意そうだな。


「セレナさん!今です!」


「はい!ウインドカッター!!」


「グ、ぎゃ、ギャ……」


 至近距離からの魔法により、ゴブリンは絶命した。


 ……うん、みんなすごいな。


 俺も、負けていられないな……!


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