第8話女神と邪神と異世界召喚について

 さて、入学式も終わり、次の日を迎える。


 今日から、いよいよ授業の開始である。


 馬車に乗り、学校へ向かう。


「カイゼル、ありがとう」


「いえ、では」


 うーん、相変わらず必要以上の会話はしないなぁ……。

 まあ、楽は楽なんだけどね。


「ア、アレス様!お、おはようございましゅ!……あぅぅ……!」


「おはよう、セレナ。何で、緊張しているの?」


「ゆ、夢じゃない……!良かったぁ……!」


「ん?どういうこと?」


「昨日、帰ってお父さんとお母さんに話したら、そんなことあるわけないって……。勘違いして、無礼を働かないようにって……」


 ……ああ、なんとなくわかった。

 貴族が、平民をからかって遊んでると思われたかな?

 これは、そのうち挨拶に行くべきかもな。


「まあ、気にしないでいいよ。そのうち挨拶に行くね」


「え?ア、アレス様が!?」


「うん、ダメかな?友達の家に行ってみたいんだけど……」


 それも嘘じゃないけど、平民の暮らしを知っておきたいし。


「だ、ダメじゃないです!嬉しいです!」


「私も行くのだ!」


「おっ、カグラ。おはよう」


「アレス様、おはようございます!」


「カ、カグラちゃんも?」


「ダメか!?拙者も、友達の家行きたいぞ!」


「ううん!嬉しい!良いよ!」


 こうしてみると、カグラもやはり子供だな。

 うんうん、子供は子供らしくが一番だ。

 ……え?俺?俺も子供らしくしてますよ。


 最近では、意識が一体化してきて、アレスと和馬の境目がわからないくらいだ。

 ……ただ、叔父さん夫婦と、結衣のことだけは忘れないだろう……。

 今でも、たまに夢に見るしな……俺が死んだことに、結衣は責任を感じているだろうな。

 気にせずに、元気でいてくれると良いが……。


「アレス様!遅刻しちゃいますよ!」


「アレス様!行きましょう!」


「わかったから!2人共!だから、引っ張らないでー!」


 教室に入り、席に着く。

 すぐに、先生がやってきた。


「はいはーい!皆さん、おはようございます!」


 皆が、返事をする。


「はい!良いお返事です!今日から授業を始めますね。では、早速やっていきましょう」


 どうやら、点呼とかはないようだ。

 まあ、八人しかいないからか。

 そして、授業が始まる。


 まずは、この

 この大陸は女神マリアの結界により、守られている。

 そして、邪神であるバハムートが、この大陸にある魔界に封印されているらしい。

 結界の外には、バハムートの封印を解こうとして、邪悪なドラゴン達がいるらしい。

 女神マリアは邪神を封印した上で結界をはり、そいつらが来れないようにしていると。


「はい!ここまでいいですかー?質問ある人ー?」


「はい、先生」


「はい、アレス君。なんですか?」


「では、外の世界には大陸はないのですか?」


「良い質問です!外の世界には大陸があるとされています。しかし、そこは女神の加護がない闇黒の世界。凶悪な魔物が徘徊し、醜い獣人や悪魔のような魔族、人間を敵視する種族がたくさんいるとされています。女神様が守ってくれているからこそ、私達は平和に暮らすことができているのです。みんなも、感謝するように」


 ……魔族や獣人がいるのか。

 会ってみたいが、そういうわけにいかないようだ。

 ……女神か……俺は何故転生したんだろうか?

 そいつが転生をさせたのか?

 ……うーん、ずっと考えてはいるが……わからない。


「先生!」


「はい、カグラさん!」


「ですが、この大陸にも魔物はいますよ!」


「うーん、これまた良い質問です!女神様は邪神の封印をなさってくれています。その封印から抜け出そうと、邪神は力の限り暴れてるそうです。女神様も必死に抑えてはいますが、その際に漏れた瘴気より魔物が生まれるとされています。我々を守るために、女神様は頑張ってくれています。そしてみんなの応援や祈りが女神様に力を与えます。なので、皆も応援しようね!」


「へえー!頑張って!」


「すげー!」


「女神様に感謝だな!」


 ……女神信仰の大陸なんだよな。

 女神が正義!女神に感謝!女神のいうことは絶対!って感じだ。

 うーん……前世の記憶がある俺からしたら、こればかりは慣れないなぁ。


「では、次は異世界召喚についてですね。女神様の封印が弱まる時が、100年に一度あるそうです。その隙をつき、邪神が自身の分身である魔王を顕現させます。その魔王を倒すために、女神様は我々に希望を残されました。それこそが異世界召喚ですね。教会のみが神託を受け、術式を行うことで異世界人の勇者や聖女が召喚されます。その聖女や勇者と共に、各国から腕利きが集まり討伐に向かいます。そして役目を終えた二人は、元の世界へと帰るのです」


 ……随分身勝手な女神だな。

 勝手に呼んで、勝手に帰すのか……。

 呼ばれた方はたまったもんじゃないな……。

 だが、女神を否定しようものなら……異端者扱いを受けるから、何も言えないが。


「先生!」


「はい、アレス君!」


「生まれ変わりや転生といった概念はないのですか?」


「概念……難しい言葉を知っているのね!さすがね!そういったものは無いようですね。もちろん、仮になったとしても記憶はないので知るよしもないですけど」


「そうですか……ありがとうございます」


「ううん!良いのよ!そういう些細な疑問が大事なことなの!皆も何かあれば、どんどん質問してね!先生頑張っちゃうんだから!」


 ……とりあえず、良い先生で良かったな。

 多少子供扱いされ……そういや、子供だった……。



 ……転生や生まれ変わりはない……か。

 だが、俺は記憶がある……まさか、勘違いとか……?

 いや、そんなはずはない!薄れてきてはいるが、それだけは確かだ。


 ……考えても仕方ないことはわかってる。


 フゥ……とりあえずは、誰にも言わないでおこう。

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