第6話癖の強い女の子に懐かれたみたいです

 入学式が終わると、中学生くらいに見える女性がこちらにくる。


 最上級生だろうか?


「はいはーい!皆さん!おはようございます!今から教室に案内しますからね!」


 なるほど、案内人か。

 敷地内が広いから、それも当然だな。

 皆も大人しく立ち上がり、その人についていく。

 そのまま建物を出て、歩いていく。

 入り口で揉めた奴らは、気不味いのか前の方を歩いている。


 すると、声をかけられる。


「少し、よろしいでしょうか?」


「ん?どうしたの?」


 振り向くと、そこには美少女がいた。

 将来は、間違いなく美人になるであろう顔立ち。

 純真無垢な黒い瞳に、綺麗な長い真紅の髪をポニーテールにしている。


「失礼。先程の騒動を見ていた者です」


 ん?随分硬い口調だな?

 しかも、まだ幼いのに無理した感じではない。

 日頃から使い慣れている感じだな。


「それで、どうしたのかな?」


「いえ、感服いたしまして。貴方のような皇族がいらっしゃったのですね」


「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」


「拙者の名前は、カグラ-ブリューナグと申します。侯爵家の長女であります」


 拙者?はい?クセが強い……!


「そ、そうなんだ」


「失礼ながら、貴方のことは存じあげておりませんでした」


「それは、仕方ないよ。僕はそういう集まりにも出ないしね」


 どうやら、僕の事情も知らないようだ。

 でも、確かブリューナグ家は実直な家柄で、平民にも気軽に接するという。

 ならば、悪い子ではなさそうだな。

 ……クセは強そうだけど……。


「そうなのですね。では、これからよろしくお願い申し上げます」


「そ、そう。うん、よろしくね」


 人のこと言えないけど、とても8歳児とは思えないな……。

 まあ、そういう子もいるか。


「して、隣にいるのは?」


「は、はい!えっと、私……平民で……」


「ん?それがどうしたのだ?クラスメイトだろう?」


 へえ……クセはあるが、とても良い子だ。

 仲良くできそうだな。


「え、えっと……セレナっていいます!」


「そうか、拙者の名前はカグラだ。よろしく頼む。ちなみに、様つけとかはいらない」


「はい!よろしくお願い申し上げます……?」


「いや、セレナ。そこは真似しなくていいから」


 こうして3人で話しながら、二階建ての建物の中に入る。


 中は、まさしく学校のという感じだった。

 入ってすぐに受付がある。

 その奥には、クラス別に教室があるようだ。

 ただSクラスだけは特別で、一階にある端の一番小さい教室のようだ。

 まあ、人数が少ないから当然のことだな。


 引率の人についていき、中に入る。


「はい!ここが皆さんの教室になります!」


「先輩、案内してくれてありがとうございました」


「え!?先輩!?わ、私、先生なんだけど……」


 なんと……大人びた子供ではなく、子供っぽい大人だったようだ。

 背の大きさも150センチほどで、おかっぱ頭をしてるからそうとは思わなんだ。


「それは、失礼しました。先生でしたか」


「うう、どうせ子供みたいですよー。でも、負けない!」


 どうやら、愉快な先生のようだ。


 教室には椅子と机が、4つずつ二列に置いてある。

 名札が置いてあるので、そこに座る。

 俺は前の席の、入り口側の端だな。

 右にはセレナ、後ろには……オルガと書いてあるな。


「アレス様、オルガ-アラドヴァルといいます。よろしくお願いします」


 そちらを見ると、顔が東洋系の美少年がいた。

 髪の色は青いけどね。

 アラドヴァル……こちらも、評判は悪くなかったはず。

 確か、男爵家だったかな?


「うん、よろしくね。良かった、良い人そうで」


「こちらこそ、安心しました。そ、その……」


「噂とは違った?」


「失礼ながら……」


「気にしないで。誤解が解けたならいいよ」


「あ、ありがとうございます!」


 なんか、キラキラした目で見てくる……どうしたんだろう?


 斜め後ろには、カグラがいるようだ。


 反対側にはさっきの2人と、女の子と男の子か1人ずついる。


 男が5人、女の子が3人のクラスのようだ。


 とりあえずは、このクラスでやっていくようだな。


 というのも、成績が悪いと下のクラスの上位の人と入れ替えだからだ。


 年に二回のテストがあるらしい。


 確か、実技と筆記があったはずだ。


「さて、皆さん!おはようございます!担任のコルン-トリアイナです!これから、よろしくね!」


 トリアイナ家……確か、魔法が優秀な家系だったな。

 爵位は伯爵家だったか?

 まあ、Sクラス担当ならそれぐらいないと弊害がおきるか。


 そして、それぞれ自己紹介をすませる。


 侯爵家と言ってたのが、ザガン-ゲイボルグ。

 年の割に身体が大きく、金髪の男の子だ。

 ゲイボルグ家は、傲慢な貴族で有名だ。

 理由は、その強さにもある。


 その取り巻きが、ロレンソ-ハデス。

 伯爵家の者で、特徴は特になく、金髪の男の子だ。

 ただ、魔法を使えるとのことだ。

 ここも、特権意識が高い。


 最後の男の子が、エルバ。

 商人の子のようだ。

 こちらも年の割には身体が大きく、黒い髪をしている。


 最後の女の子が、アスナ-ルーン。

 見た目は、地味な女の子で、茶色の髪をしている。

 子爵の者で、情報を担当する家だったかな?

 ただ、黒い噂がある家でもある。


 以上8名が、このクラスのようだ。

 さて、上手くやっていけるかな?

 その後は、すぐに解散となる。

 今日は、入学式とクラスの顔合わせだけのようだ。


「アレス様、少しよろしいか?」


「ん?どうしたの、カグラさん?」


「拙者のことは、呼び捨てにしてくだされ。この後、何かご予定はありますか?」


「うーん、特にないかな。何か用事あるのかな?」


「もしよろしければ……そ、そのお茶でも……」


 何やら、顔が紅くなりモジモジしだしたな……うーん、好意を抱かれたかな?

 でも、理由がいまいちわからない……。

 まあ、小学生だからなんとも思わないけど。


「うん、いいよ。うちにでも来る?」


「え!?よ、よろしいのですか!?」


「うん、もちろん」


 友達を家に呼ぶ感じだしね。


「やったぁ!嬉しい!」


 あらら、やはりまだまだ子供の部分はあるよね。

 嬉しそうに、跳ねている。

 どうやら、癖の強い子に気に入られたようだ。


 そして……うーん、これはこちらから声をかけるべきか?


「セレナも来るかい?」


 さっきから視線を感じるんだよね。


「え!?い、いや、私なんかが……」


「何故だ!?私達は、友達になったのではないのか!?」


「え?わ、私がいても良いの?カグラさんは……」


「うん?良いに決まってる!」


「なら、決まりだね。じゃあ、付いてきて」


 俺は2人を連れて、校舎を出る。

 俺は先程の台詞に感動していた。

 侯爵家長女が、平民の人を友達と言っていた。

 悲しいことに、これはほぼ無いことだ。


 どうやら、俺の方もカグラのことが気に入ったようだ。




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