第8回 スタートダッシュは失敗するもの

時間が経ち、マリモカートの準備に取り掛かっていた。




「卑弥呼様、フレンド戦以外だと。荒らしが出ると思うんですよ。だからフレンド戦にしましょうかね。」

俺は、卑弥呼に提案してみた。


もちろん、荒らし対策のためではなく、俺の忖度リスナーを連れていくための準備である。


「我はいいけど。」

卑弥呼はあっさりと了承してくれた。


俺と、卑弥呼、リスナーがレースをするメンバーが集まりだした。

コースの選択画面になり、少し時間がかかりそうで、マリモカートについて考えた。


そもそも、マリモカートは、普通のレースゲームとは異なっており、道におちているアイテムボックスを拾って、アイテムを使える。そのアイテムの中身は完全ランダムだが、順位が高い時は弱いアイテム、逆に順位が低い時は強いアイテムが出るとしっかりと逆転要素を残している。


レースが3分後ぐらいに始まりそうだったので、俺は動き出した。

「卑弥呼様、くしゃみが出そうだから、ミュートにしていいですか?」

俺は、卑弥呼に忖度がばれないかをどきどきしながら、聞いた。


「いいよ」

卑弥呼はすぐに返答してくれた。


「ありがとうございます。」

俺は言った後、すぐにミュートにした。


「おい、お前ら。聞こえているか?」

卑弥呼には聞こえないようにミュートにしたため、リスナーに向かって言っている。


コメント

:聞こえている。

:OK

;卑弥呼様の配信では、お前の声聞こえていないぞ。

:OK

:OK


どうやら、みんなは聞こえているみたいだ。


「レース中にいきなり止まったり、逆走とかの明らかにすぐに分かる忖度はやめてね。

コメント

:忖度って、ばれたら、やばいよね。

:OK

;忖度も、大変だね。

:OK

:OK



「まず、最初の忖度だ。みんなスタートダッシュミスれよ。」


コメント

:スタートダッシュは時たま、ミスるよね。

:OKって言いたいけど、参加していないんだよね。

;ひみ民ですが、エドワードさん協力させてください。

:OK。ミスればいいんだね。

:エドワードさんの胃が心配ですから、協力します。これからのコラボに響きますからね。


ひみ民よ、ガチでコラボいないことが悲しいのは痛いほど分かるが、俺は卑弥呼とコラボしたくないよ。気を使わないと、首絞められるからな。


ミュートを切って、卑弥呼に繋げた。


「卑弥呼様、くしゃみでミュートにしてすみません。」

俺は、卑弥呼に謝った。


「いいよ。我もゲームに集中するときはミュートにしちゃうからね。」

卑弥呼はニコッと笑って許してくれた。


「よっし~、勝負事ですから、絶対負けませんからね。卑弥呼様」

俺は思ってもいないことを言った。


こうして、忖度レースが始まろうとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る