第5回 卑弥呼様は、やはりひみ民にも忖度させている。


 画面上には、大きくゲーム画面が映っており、右下に黒上ロングの白い着物を着て、頭に金の装飾をつけている清楚な女性が居た。


「おはひみ~。みんな元気している?」

 画面に映っている女性は心地の良い大人のハスキーボイスで言った。

あの時は、生命の危機だったため声質までは聞けなかった。

しかし、かなりの美声で実力があると実感させられた。


コメント

:おはひみ~。

:おはひみ~。今日も美しい。

:おはひみ~。

:おはひみ~。卑弥呼様、今日も頑張って。


「あはは、元気でよろしいw。我さ、へっぽこマリモカートじゃん。」


コメント

:卑弥呼様は普通だよ。

:卑弥呼様は下手じゃない。

:プレイじゃなくて、癒し求めているから。

:卑弥呼様が楽しんでくれたらうれしいよ。


「我は、楽しんでいくよ。ではマリモカートしていこうか。」


卑弥呼はオンラインに接続して、レースに参加した。

 コースは崖の多い鉱山で、用心しないと崖に落ちてタイムロスをしてしまうコースである。

 レースが始まり、各プレイヤーはスタートダッシュを行うためにタイミングを計っている。卑弥呼はスタートダッシュを失敗して、いきなり最下位に落ちている。


「我だけじゃん。スタートダッシュ失敗しているの。悔しい。」


コメント

:どんまい。

:スタートダッシュ難しいよね。しょうがないよ。

:このレースは、レベル高いな。

:卑弥呼様は、惜しいですよ。


 俺はふっと思ってしまった。ここのリスナーって、卑弥呼に忖度しているよね。

 普通の配信だと、ざまwwと下手くそwwって1個ぐらいコメント打たれているけど、一個もないぞ。

 俺の配信がそんなコメントをかなり打たれているから、感覚が狂っているだけかなと考え直した。


 卑弥呼が少し走っているが、コースから外れて崖に落った。ジュゲマに崖から引き揚げてもらった数秒後にまた、崖から落ちている。


「また、落ちっちゃった。悔しいね。」


コメント

:よくあるよ。

:俺も何度も落ちるから、大丈夫。

:アイテムで逆転だ。

:卑弥呼様、頑張れ。


 よくあることじゃないよ。ここで何度も落ちる奴なんていないからね。


          やっぱり忖度しているじゃん。


 おまえら、卑弥呼に尻敷かれすぎだぞ。ハスキーボイスがどんだけ好きなんだよ。


 何度もコースアウトし、案の定卑弥呼様は最下位になってしまった。


 レースが終わり、卑弥呼が口を開いた。


「我さ、オンラインで最下位取るのはそこまで悔しくないんだけど。知り合いに負けると相当イライラするから、オンラインのほうが気楽でいいわ。」


 俺は、葵さんの負けず嫌いという情報と今回の発言で、卑弥呼に勝たせないといけないと思ってしまった。

 もし、俺が勝つことがあれば、また首絞められるのかと恐怖した。


俺は、自分を守るために忖度しようと思った。



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