第2回 握力50㎏の厄介先輩に首絞められて、生命が危ない件ww


 本日、打ち合わせでエドワード・マスタングの魂である阪井弘樹は事務所に向かっており、卑弥呼様にどのような説教が来るかを想像すると胃がキリキリしてくる。


 


 打ち合わせが終わり、会議室で卑弥呼様を待っていると、黒のロングヘアーですらっとした長身の女性が来た。


 


「我は卑弥呼だが、お前が豆か?」


 長身の女性は鋭い目を細めながら、イライラした口調で語りかけてきた。


 


「はい。そうです。」


 少し視線をそらしながら、俺は答えた。豆と言われて、いつもならコミカル調で怒って返すのだが、数々の伝説を残した卑弥呼さんには返す勇気がなかった。


 


 卑弥呼は右手を伸ばして、俺の首を絞めてきた。


 


 反撃をしたいが首が苦しくて、動くことができない。


 


「我の握力は50㎏以上あってね。リンゴをつぶそうと思えばつぶせるんだよね。」


 卑弥呼は淡々と語る。


 


「首絞められている理由はもちろん分かるよね。我はかなり怒っているよ。」


 卑弥呼はにこやかに笑いながら語ってきた。


 


 おそらく、アリスたんと絡んだことについてだろうけど、理不尽すぎるだろう。


 


「そうか、しゃべることができないか。少し緩めるよ。」


 卑弥呼は絞めている手を少し緩めて、しゃべりきれるくらいで絞めてきた。


 


「アリスたんのことですか?」


 俺は弱弱しく答える。


 


「そうだ。我の一番の押しであるアリスとコラボしやがって。我もコラボしていないんだぞ。お前みたいな豆に渡したくないんだが。」


 卑弥呼は、嫉妬で怒り狂いながら言った。


 


 正直怖くてこの場からすぐに逃げたかったが、人生を変えてくれたアリスたんとコラボしたいから、戦うと決意した。


 


「別にコラボしても問題はないですよ。卑弥呼さんもコラボすればいいでしょう。」


 俺はあまりの理不尽な理由で首を絞めてきたので、反論した。


 


「我は人見知りだから、同期としかコラボできないんだ。」


 卑弥呼は、恥ずかしそうに顔を隠しながら言った。


 


「そんなの知りませんよ。」


 呆れた感じで俺は言ってしまった。人見知りなら、人の首を絞めるなと突っ込みたかった。


 


「はぁ~。我、先輩ぞ。言葉には気をつけろ!!!それに、我のアリス愛は誰にも負けないから!!!」


 卑弥呼が怒鳴り散らかしてきた。


 


 俺のアリスたんへの愛は誰にも負けていないし、その言葉は不快でしかなかった。


だから、暴力団に勝ったという武勇伝を持つ卑弥呼が相手であっても、アリスたんへの愛はあなたが一番ですなどと言いたくなかった。


 


その愛で負けたら、人生を救ってくれたアリスの母親である“月の使徒ルナ”との最後の約束を破ってしまう。


 


 月の使徒ルナの配信に魅せられ、その配信が無かったら、もしかしたら自殺していたのかもしれない。俺はブラック企業で勤めており、毎日残業して人生すべてが苦しかったが、彼女の配信を見て、笑うという感情を思い出した。


 


 彼女が所属しているキラライブに俺は入りたいと思い、仕事を辞めて、何度もオーディションを受け続けた。


 


 その思い・努力は裏切られ、月の使徒ルナはリアルでいろいろあったらしく、引退してしまった。


俺がキラライブでデビューした直後にそのことを知ってしまって、かなりの喪失感を覚え、生きる活力がなくなった。


 


 ルナちゃんはファンのみんなに申し訳ないと思い、引退配信にて同じキラライブライバー群馬先生と“百合受精”配信にて自分の意志を受け継ぐ子どもを作った。


 


 ルナちゃんの銀髪ロリっ子と群馬先生のドSな褐色が混ぜ合わさり、すばらしいアリスたんが誕生した。そのアリスたんをルナちゃんの代わりに愛し続けることがルナちゃんの願いである。


 


 その願いからルナちゃんの喪失感を忘れて、アリスたんを愛することに専念しようと思った。


 


 決意の表しとして、ツブヤイターでアリスたんを宣伝したことを鮮明に覚えている。


 


 ルナちゃんの愛のために、目の前の卑弥呼さんの恐怖に立ち向かう。

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