第一章 出会い2

「い、一緒に帰る…か?」


 その日の放課後、俺はいや〜な気配を感じたので穂雁を誘って一緒に帰ることにした。そして俺は今、その穂雁を誘っている訳だ。


「え、そう?そんなに一緒に帰りたいなら帰ってあげるよ。もお、寂しがりやだなあ。ふふっ」


 なんか、しょうがない感出してるけど、めっちゃ嬉しそう。なんでだろう。


「あの、そ、それとさ。私、ちょっと寄りたいところあるんだけど、い、一緒に来る?」


 そして、穂雁は頬を赤くしながら尋ねてきた。なぜ俺を誘うんだ?


「あー、いいよ、付き合うよ。」


 今日はなんの用事もないので、その買い物に同行することした。…が。


「つ、付き合ッッ!!?…あ、う、い、言い方には気を付けてね?」

「お、おう?」


 何か変な言い方をしてしまったらしい。相変わらず穂雁は頬を赤く染めている。


「ま、まあグダグダしててもあれだし、早速行こうよ!」

「そうだな。よし、行こう」


 そういうと、俺たちは玄関を出て、てくてくと目的地へと向かっていた。


「そういえば、俺たちはどこに向かっているんだ?なんか駅に向かってるっぽいんだけど」


「あー。ええとね?あの…言いづらいんだけど…————」


 ん?この反応は何なんだ?………はッ!?も、もしかしてこれは!?ここからランジェリーショップとか言ってキャッキャドキドキのイベントが起こる的なあれか!?あれなのか!?なんて少し…いや結構期待しながら聞いていると…。


「お、お茶を買いに行くの…」


………え?イベント無し?俺の期待踏みにじり?


「な、なんだお茶か…あー、あれかアール何たらティーとか何たらジリンティーみたいなやつだろ?俺はよくわからないんだが」


 もう希望はなさそうなのでとりあえず聞いてみる。


「ち、違うの…あのね?私が欲しいのはね?」


「——————こ、こぶ茶なんだけど…」


んー。うまく聞こえなかったようだ。コブチャ…?とか聞こえたけど。


「あのさ、こ、コブチャって何だ?」

「何って…そのままの意味だよ、、こぶ茶だよ」


 まじかよ…こぶ茶って今流行はやってんの?インスタ映えするとかあんのか?今の女子ってなんか不思議な趣味持ってんだな。


「お、おう。そうか…じ、じゃあ買いに行こうか」

「そ、そだね」


 そうして俺たちは楽しい買い物をした。中でも驚いたのは、穂雁がこぶ茶を2、3箱買ったことだ。それもあって俺は今、そのこぶ茶の箱を持って歩いているわけだが。


「ありがとね。その、手伝ってくれて。調子に乗って買いすぎちゃったよ。いつもは1箱しか買わないんだけど、今日は奮発して3箱も買っちゃった」


 いつも箱で買ってんの!?


「あ、あのさ、これどうすればいいの?」


 俺は穂雁にこぶ茶の行方ゆくえを尋ねた。


「んー、えっとね。うちで飲むから…あ、ここでお別れだよね?じゃあ私にくれる?持って帰るよ」


 穂雁は俺にその箱を寄越すように手を差し出す。


「いやいや、お前が持てるわけないだろ。俺が家まで運ぶから、案内してくれ」


 こんな重たいのをこんなきゃ華奢きゃしゃな少女が持ち運べるわけない。付き合いのついでだと思って…とかではなく人として当然の行為だと思っていた。………だが。


「え?うちまで来てくれるの?」

「愚問だな」


「えへへ」


「どうしたんだよ、そんなにやけて」

 何その顔クソかわいいんだけど!?


「に、にやけッ!?ソ、そんなんじゃないし!」


 あ、声が裏返ってる。焦ってるな。なんでかは知らんけど。しかも裏返ったことによってさらに恥ずかしがってる。かわいー。


「ま、まあとにかくこれ置きに行こうぜ」

「そ、そうだね」


 そして俺は穂雁の家にお邪魔し、こぶ茶を置いて帰ったのだった。……え?何もなかったのか、だって?ご安心いただきたい。その物語は、また次の機会にお話しするとして、俺は今、穂雁の家からの帰り道、電灯の通りを歩いていた。


「おっ、これはこれはハーレム男じゃないですかぁ」


 そして帰り道に出会ったのは…いや、出くわしてしまったのは、古法基哉ふるのりもとやだった。


「うっせえ、ちょっとこっちに用があってな。寄り道して帰ったんだ。そういうお前は家こっちなのか?」

「へえ、俺の家はここからもう少し行ったとこ。ファミレスのキャストってあるだろ?そこら辺。…で、、ねえ?」


 古法はニマニマしながら俺の方を見て、何かブツブツ唱えている。


「なあ、古法」

基哉もとやでいいぞ」

「明日の放課後、一緒にキャスト行かないか」

「おお、いいな。ゆっくり恋バナでもしようじゃないか?」


 そう言うと、俺たちは雑談をしながらそれぞれの帰路に着いていった。そして俺は、家へとたどり着いた。


「ただいまあ」


 そして俺を出迎えてくれたのは、かわいいメイドさん…などではなく……


「おにーちゃん!おっかえりいい!」

「おうおう、つむぎは今日も元気だなあ。」


 普通に妹だった。…え?妹がいるだけまだいいって?いやいや意外とそうもいかない。いちいちめんどくさいし、大事なことしてる時に限って、からんでくるし。ま、まあ多少はかわいいんだけどね?いや結構かわいいけど!!


「おにーちゃんがいなくて寂しかったんだよ?」

「はいはい、ラノベの読みすぎな」

「ちぇー、ちょっとぐらい照れてくれないの…」

「うんうん、もうちょっと頑張ろうなー」

「いじわる!!」


 紬は頭はそこそこいいものの、なぜか少しバカっぽい所があるのだ。そしてライトノベルが大好物。ポイントをためまくっては、うまく使ってたくさんのラノベを買っている。だから、紬の部屋にはラノベがごっそりあるのだ。


「そういえばさー」

「ん、なんだー?」


 突然紬が俺に尋ねてくる。


「さっき女の子の家に行ってたんでしょー?」

「ぶっっ!?ど、どうしてお前がそれを…?」


 何を言い出すのかと思ったらとんでもないこと言いだし始めたぞ!?てかマジでなんで知ってんの?神なの?ゲッターズ〇田なの?紬は嬉しそうに話し始めた。 


「さっき家電に電話が来て、留守電になってたから聞いたんだけど…『き、今日はありがと。助かっちゃったよ。まるで前まで険悪だったのが嘘みたい…また、一緒にデー…じゃなくて!買い物に付き合ってくれると嬉しい…かな』って来てたから、わたしのおにーちゃんもついにモテ期が来たのかと思って」


「そ、そうなのか…」


 まさか穂雁がそんなことを言っていたなんて!出たかったなあ、その電話………ってそうじゃねえよ!!めっちゃ紬がニヤニヤしてんのはそれを聞いたからかよ!?


「ま、おにーちゃんがせいしゅんするのもいいけどさ」


 そういきなり紬が話し始めると…


「——————少しは紬にもかまってよね!そうじゃないと…こうだぞー!」


「うわ!!」


 紬はそういうといきなり俺に向かってダイブしてきた。正直言ってすんごいかわいい。だが、こいつももう中学二年生。そろそろ恥ずかしがるころじゃないか…?そしてなんか腕の中で猫みたいにゴロゴロしてるせいで、俺の腕がだんだん疲れてきた。


「わ、わかった!わかったから!今度の土日どこかに連れて行ってやるから!これで勘弁してくれ!俺の腕が…死ぬ!」


「ほんと!?やったー!じゃあ約束ね!わたしチバニーランドがいい!」


 そういって紬は自分での部屋へと戻っていく。父さんも母さんも仕事でまだ帰ってきていないので、俺は夜ご飯を作るために台所へ向かった。






 








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クズで優柔不断な主人公(俺)がラブコメしてしまったのだが。 棚狭 杏丞 @Tanase-kyosuke

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