呪い

食べたらダメよ。


そう言った母の声は思い出せるけど、顔は思い出せない。



食べたらダメよ。


うん、わかってる。でもどうしてだっけ。理由は忘れてしまった。



食べたらダメよ。


繰り返し聞いていた言葉。気が付けばそれは幻聴だった。



食べたらダメよ。


初めて口にした。甘い果汁が溢れ出る。



食べたらダメよ。


赤い皮と白い果肉を喰い千切る。

だって私は何も知らないもの。



食べたらダメよ。


ぐちゃぐちゃの塊が喉を下る。





これでやっと聞こえない。


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