第6話 王都と夢〜6〜

 楽しそうに手を繋いで前を歩いてるふたりの後ろで僕は王都を再度見回す。

 今日いっぱいはこの人の多さと建物の多さには慣れそうにない。


「それで結局どこ向かってるの?」

「それはねー、大教会!」

「大教会?」

「うん。この国で信仰されてるセレス教の中心になった聖地だよ」

「そんなとこがあるんだねぇ」

「ハルたちもどっちかというとセレス教の信者ってことになるんだから知っといた方がいいよ」

「マインが教えてくれてたのってセレス教のやつだったんだ」


 レイが言う。僕も同じことを思った。

 マインと出会った時、宗教的な習わしについて教えてもらったことがある。

 それがセレス教の習わしだったとは……。知らなかった。


「着いたよ」


 マインにそう言われ顔を上げる。


「おー……」

「すっごい……」


 大教会はかなり巨大な純白の建物だった。

 外にあるんだから少しは汚れているはずなのに純白。聖なるオーラ? のようなものが感じられる。

 王都に来てから驚いてばっかりだ。


「じゃあ、中、入ろっか」


 マインが歩き出す。


「ここ、入っていいの?」

「うん。大丈夫。礼拝しに来る人はいっぱいいるからね。無料開放してるんだ」

「ふーん」


 どおりで人が多い事だ。

 ここに来る人たちみんな神様に拝みに来てるんだね。

 そのまま中に入った。


「中もすごいねぇ……」

「うん……」


 レイが驚きの声を上げ、それに僕が答える。

 どっちかというと僕がこれ以上コメント出来ない。

 豪華なシャンデリアと鮮やかなステンドグラス。

 そして何より、美しい女神セレスの像。

 凄すぎる。


「せっかくだし拝んで行こっか」

「そうだね」


 僕たちはセレス像の前で手を合わせる。


(これからも楽しく旅が続けられますように)


っと。これでよし。


(ーーーー。ーーー。ーーーーー)


 ん?


「ふたりとも何か言った?」

「ううん」

「何も言ってないよ」


 首を横に振られる。

 あれ?何か聞こえた気がするんだけど……。

 ちょっと周りを見渡す。

 特に何もないなぁ。

 ん? 階段?

 あ! 2階あるんだ。


「ハルー。帰るよー」


 うーん……。


「ちょっと待ってー」


 僕が返した言葉は待っての声。

 2階が見たいなー。なんて。


「どうかした?」

「ちょっと、見たいものがあってさ。先に外で待っててくれない?」


 レイが僕を見つめる。

その後、


「嫌だ。私も行く」


 承諾してくれなかった。

離れたくないという強い意志。

 あの時からだ。


「じゃあ私は待ってるよ」


 マインは来ないらしい。


「大教会って案外迷いやすいから気をつけてね」

「了解」

「はーい」


 心配そうなマインに言葉を返し、僕たちは2階へ行った。




 歩きながら辺りを見渡す。


「2階は人が少ないなぁ」


 礼拝をする人たちは基本的に1階で行うから人が少ない。

 見た感じのイメージだから本当かは分からないけど。


「ハルー。なんで突然こっち来たの?」

「たまたまだよ。気になったんだよね、2階がどんな感じなのかなって」

「それだけ?」

「うん。それだけ」

「ハルのことだから何か見つけたかと思ったよ」


 残念。ほんとに気になっただけだ。

 こんな大きな建物王都以外にあまりないだろう。

 今のうちに目に焼き付けておきたい。


「あ、ハル。あそこ」

「ん?」


 レイが指を指す。

 先には大きな扉。なんだろう……。……開けるしかないね。


「開けるよ?」

「え? 開けていいの?」


 レイは否定的。


「大丈夫だと思うよ。ここ教会だし、危ないものはないと思うんだ」

「それはそうだけどさあ」

「大丈夫大丈夫。なんとかなるよ」


 僕は結構大胆なのだ。やりたいと思ったことはやってみるタイプだから。

 さあ、ドアを開けてみよう。


ガチャ。


 見えてくる風景。

 そこは鮮やかなお花畑。

 赤、青、白、黄、緑、紫、ピンク。

 こんなに色んな色の花が咲いている花畑を見るのは初めてだ。


「凄いね……。レイ……」


 ついに返事が返ってこなくなった。

 それだけ驚いたんだね。


「♪ー♪ーー」


 歌声。

 その綺麗な歌声に聞き惚れてしまう。

 誰がいるんだろう?

 と、自分がぽんやり見つめる先、花畑の中心に1人の少女を見つけた。

 純白なドレスを着たその少女はまるで天使のようだった。

 歌い終わり、少女が息を吐く。

 思わず拍手。ビクッとして少女はこっちを向いた。


「ごめんね、驚かせちゃった?」

「い、いえ、大丈夫です」


 僕やレイよりも幼げな少女は僕に言葉を返してくれた。


「いい歌だね」

「そんな……ありがとうございます……」


 照れたね、今。


「君、1人? お父さんやお母さんは一緒じゃないの?」

「ひ、1人です。そのお父さんもお母さんも私にはいません……」

「え……」


 これはいけないことを聞いちゃったかな……。

 ちょっと反省……。


「ごめんね……。変なこと聞いちゃって……」

「いえ!いいんです。大丈夫です。その、お兄さんも1人ですか?」

「いやいや。隣に1人いるでしょ?」


 僕はレイと一緒に来たんだから。


「その、あなたしかいませんよ?」

「え……?」


 隣を確認。ほんとに居ない。

 どうしよう……。


「レイ! どこ! いるなら僕を呼んで!」


 叫んでみる。……、返事はない…。


「ごめんね、僕もう帰らなきゃ」

「はい。大丈夫です。同伴者がいるなら行ってあげてください」


 早く戻らないとレイが悲しむからね。


「それじゃあ」

「あ、あの!」


 少女に呼ばれる。


「私っ、セセラって言います!良かったら私と、その、またおしゃべりしてくれませんか……」

「っ!」

「だ、だめですか……?」

「ううん。全然オッケーだよ。むしろ嬉しい」

「そうですか。良かったぁ……」


 少女、セセラはほっと息を吐く。

 僕はそれにクスッと笑うと、


「僕はハル。よろしくね」

「はい!よろしくお願いします」

「それじゃあまた来るよ。今度は連れと一緒に」

「楽しみです!」


 セセラは嬉しそうに笑うと、歩き出した僕に優しく手を振る。

 それに手を振り返して僕はレイを探しに行くのだった。




 ハルという名前のお兄さんがお花畑を離れたあと、私はゆっくり深呼吸をする。


「変な人だと思われてないかな?」


 独り言。

 ここにはあまり……いや、ほぼ人が来ないから驚いてしまった。

 また来てくれるかな? ……来てくれるよね。

 お兄さんとまた話すのが今から楽しみです。



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あとがき


皆さんこんにちは!シュシュ・トウカです!

6話目もお付き合いありがとうございます!

今回は謎に包まれた新キャラ、セセラが登場しました。

今回は急いで書いたため、おかしいところがあるかもしれませんがご了承ください。

そして、これから少し忙しくなるので投稿頻度が少し落ちます……。すみません……。


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