第5話 王都と夢〜5〜

目の前の建物。その看板に僕たちは驚いた。


「食事処 ルキ ってさ、レイ……」

「そうだね……、ハル……」


「「あのお兄さんに進められたところじゃん!」」


「ハルたちここ知ってるの?」


 マインが不思議そうにこちらを見る。


「実はね、今日検査場を通ったとき、検査官のお兄さんにここが美味しいって進められたの」

「ほんと!? 嬉しいなぁ、ここのことが褒められるなんて」

「そんなに珍しいことなの?」

「そんなことないよ。褒められるは褒められるんだけど、ここ、結構穴場だからさ」


 穴場なんだ。びっくり。


「じゃあ僕たちはいいとこを知ったね」

「うん。まあ、マインがいるから知らなかったとしてもここには来たと思うけどね」

「たしかに」


 それでも、あのお兄さんがここを教えてくれたことは偶然だとしてもすごいことだと思う。


「ふたりともー。入るよー」

「おっけー」


 マインが宿側の玄関を開ける。

 続いて僕たちは中に入った。


「はーい。いらっしゃーい」

「ルキさん。マインです。ただいま戻りましたー」

「あ、マインちゃん。おかえりー。どう? 会えた?」


 出てきたのは優しそうな女性。

 この人が店主さんらしい。


「はい! バッチリと! この子たちが今日言ってたハルとレイです!」


 マインが僕たちを紹介する。

 そのまま僕たちもご挨拶。


「こんにちは。ハルです」

「レイです」

「いつもマインがお世話になってます」


 軽くお辞儀。


「ルキです。よろしくね。ハルくん。レイちゃん。」


 ん? ルキ?


「もしかして、お店の名前のルキってルキさんのことですか?」


 レイがルキさんに聞く。

 僕と同じことを考えたみたい。


「そうなのよー。お店を作ろうと思ったまでは良かったんだけどね、名前決めてなくて。どうしようかなーって思ったら結局自分の名前になってたの」

「そうなんですね。なんかいいですね。自分の名前がお店の名前になるって」

「ほんと? 嬉しいわ」


 ルキさんが柔らかく微笑む。笑顔がとても似合っている。


「ルキさんそろそろいいですか? ハルたちをお部屋に案内しないと」

「そうね。でもその前にお金、払おうね」


 おお……、しっかりしてる……。


「分かってますよ。ハル、こっち来て」

「うん」


 カウンターへ。


「お部屋の数は 一部屋 でいいんだよね?」

「あら? 2人なのに一部屋でいいの?」


 ルキさんの疑問の声。やっぱりそういう反応かぁ。


「いいんですよ。ルキさん。私たちは同じ部屋で」

「そうなの? ちょっと不思議ねぇ」


 レイがルキさんにそう伝える。

 僕たちはそれでいいのだ。お金のこともあるし。


「少しちっちゃいベッドがふたつあるとこにしとくね」

「ありがとう、マイン」

「なんのなんの、2人のことは分かってるつもりだからねー」


 お金を払う。商売だからね。

 よし、


「レイー、お部屋行くよー」

「はーい」


 レイがトコトコ寄ってくる。

 それを見てマインが歩き出す。


「それじゃあご案内しまーす!」

「おー!」


 レイもテンションが高い。

 王都で初めての宿。僕もテンションが上がっちゃう。


「今日は他にやること決まってる?」

「ん〜。特にないなぁ」


 王都に来た最大の目的はマインに会うことだからもう達成してしまった。あとはゆっくり王都観光するくらいかな?


「なら、この後連れていきたいとこがあるの! 2人とも一緒に来てくれない?」


 上目遣いで言ってくる。

 これじゃあ予定があっても断れないよ。


「うん! いいよ! 楽しみだなー、マインの連れてってくれるとこ」

「ありがとう!期待してていいよー」


 僕の変わりにレイが答えてくれた。

 マインは嬉しそう。僕も楽しみだ。

 マインが足を止める。


「着いたよ」

「ここ?」

「うん。開けるね!」


 マインはドアを開ける。


「おー」


 部屋にはシングルベッドがふたつ。あとはソファがひとつ。

 シンプルだけどしっかりしている。

 しかもベッドもソファもふかふか!


「わーい!」


 レイがベッドに飛び込む。

 子どもっぽいけどそこが可愛い。


「どう? ふかふかでしょ?」

「うん〜。ふかふかぁ」


 マインは得意げ、レイはふにゃふにゃ。

 これはレイが寝ちゃうな。


「レイ。ここで寝ちゃダメだよ。起きて」


 レイを持ち上げる。


「ふにゃあ!?」


 レイはびっくり。マインが笑う。


「あはは。ハルの言う通りだよ。そろそろ行くんだから」

「はーい……」


 レイは少し名残惜しげにベッドから降りる。

 寝る時が楽しみだ。僕もあのふかふかが体験出来るから。


「じゃあ行こー!」


 マインが声を上げる。

 そのまま玄関へ。


「マインちゃーん、そろそろ行くの?」

「はい。7時くらいに帰ります」

「分かったわ。お夕飯の準備しとくわね」

「ありがとうございます!」

「行ってらっしゃい。ハルくん、レイちゃんも、お夕飯楽しみにしててね」


「「ありがとうございます」」


「それじゃあ」


 マインが玄関のドアを開ける。


「「「行ってきます!」」」


 どこに連れてってくれるんだろう?

 楽しみだな。



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あとがき


皆さんこんにちは!シュシュ・トウカです!

5話目もお付き合いありがとうございます!

ここで質問なのです。このあとがきって毎回書いているのですが読んでて面白いですか? 必要はありますか?

良ければコメントの方に意見を聞かせてくれると嬉しいです。

ということで、この話が面白かったらハートマークの応援ボタンをポチって頂けるとモチベーションが上がるのでよろしくお願いします!

それではまた!

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