第3話 王都と夢〜3〜

「ん〜。ようやく王都に入れたねー」


 私は両手を上げて体を伸ばす。

 今は門を抜けてから大通りを歩いている。

 やっぱり人が多い。


「そうだね。結構かかった気がするよ。」

「でしょー」

「でも、あのお兄さんと話してたときは楽しかったよ。レイも話せば良かったんじゃない?」

「いーの。今回はハルの役目でしょ」

「そうだけどー」


 検査場は基本的にどの都市にもある。

 最初のほうは2人で一緒に検査官と話していたけどいつの間にか交代制になっていた。

 理由は忘れちゃった。

 さて、


「最初は宿探しでいい?」

「そうだね。宿がないと困っちゃうしね」


 私の提案にハルが同意する。

 そのまま私たちは大通りを引き続き歩く。


「♪〜」


 ハルが珍しく鼻歌。

 私だけじゃなくてハルもウキウキワクワクしてるのかな?

 さすがにお城の中には入れないと思うけど、他にはないものがいっぱいありそうだ。


 大通りには屋台がいっぱい。

 その中から私とハルの好きそうなお店を探す。

 果物屋さん、惣菜屋さん、漬物屋さん、あれ? 食べ物屋さんばっかりだ。


 ぐー


 お腹の音。

 ハルが笑う。もう……そんなに笑わなくてもいいじゃん……。見てたらお腹がすいてきたの!


「どうする? 何か食べる?」


 意地悪く聞いてくる。


「むぅ……」

「ごめんごめん……怒らないで♪」

「……許す」


 もう…ハルってば……。


「食べ歩きできるとこがいいよね」

「そうだね。串焼きとか?」

「いーじゃん。あるかな? お店」

「ちょっと探してみよう」


 ハルが周りを見渡す。


「あっちだね」

「……え? もう見つけたの?」

「たまたまだよ〜。ラッキーだったね」


 ハルは目がいい。

 眼鏡なんて必要としないし。これは私もだけど。

 遠くまでよく見えるらしい。羨ましい……。


「ほら、すぐ近くだし早く行こうよ」

「ちょっと待ってよー」


 歩き出すハルに走ってついて行く。

 そのお店は30メートル先にあった。


 ジュー


 お肉の焼けるいい音。いい匂いが私たちを襲う。


「串焼き2つください」

「あいよ!」


 ハルがお金を出す。

 少し時間が経ちお肉が2つハルに手渡される。

 店頭に並んでるお肉より少し大きめ。


「兄ちゃん、彼女さんか? 少しサービスしとくよ!」

「そんなんじゃないですって……。でも、ありがとうございます」

「おうよ!」


 そうだ。私とハルは恋人ではない。パートナーだ。

 恋人だなんて……。ちょっと恥ずかしい。


「はい。レイ」

「……っ! ありがと……」


 もう……。あんなこと言われたら意識しちゃうじゃん……。

 ハルから貰ったそれを半ばやけくそにほおばる。


「!? はふはふ……ん!美味しい!」


 口の中でお肉が肉汁と共にとろける。

 深い旨みと程よい噛みごたえ。


「お! そうかい! そりゃあ嬉しいねぇ」


 お店のおじさんがニカッと笑う。

 それを見てハルも1口。


「うん! 美味しいです!」


 ハルの声を聞いておじさんはまたニカッと笑って話し始める。


「これはな、俺の故郷で育ててる大猪の肉なんだ。こいつを売るためにこっちまで出てきてるんだ」

「そうなんですね」

「ルキフェルってとこでな、のどかでいいとこなんだぜ。何も無いけどな! ハッハッハ!」


 おじさんが笑う。今度は口を開けて。

 のどかな場所かー。


「行ってみたいです!」

「……おう! 楽しみに待ってるぜ!」


 おじさんは少しびっくりしたあと、言葉を返す。

 驚かせちゃったかな?


 はふはふ……もぐもぐ……。少し無言の時が流れる。


「ご馳走様でした! 美味しかったです!」

「そりゃあ良かった。また来てな!」

「はい!」


 おじさんに手を振って屋台を後にする。

 やっぱり旅はいい。いろんな人と出会って、いろんなことを知って、王都だからかもしれないけど賑やかで楽しい。


「楽しいね。ハル」

「うん。来たばっかりだけど来てよかったって思えるね」


 ハルも同じ気持ちみたい♪


「ハル。次はこっちに行ってみない?」

「うん。いいよ。でも、迷子にならないようにね」

「大丈夫! ハル、目、いいでしょ」

「そうだね。どこにいても見つける自信はあるよ」

「ほら! 大丈夫」


 そうして私たちはまた歩き出した。



==================================


あとがき


3話目もお付き合い頂きありがとうございます!

シュシュ・トウカです!

話が進まないよーって思ってる方すみません……。

次回は新キャラが出てくるので楽しみにしててください!

よければ応援ボタンをポチってフォローしてくださると嬉しいです!

では、また4話でお会いしましょう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る