第342話 東方DQN三人娘(後編)

「降伏します」


「抗戦の意志はありません」


「抵抗はしません」




 中央に近い東部領域に領地を持つ領主たちは、バウマイスター伯爵家の情報を知っていたのですぐに降った。


「もう手に負えません。北条家も降ります」


 東部で大きな領地を持つ北条家の当主氏康は、一戦もせずにこちらに降った。

 彼の目の下には酷い隈が目立つが、原因は俺たちではない。

 この地で三つ巴の争いを繰り返す織田家、武田家、上杉家の存在のせいであった。


「織田のウツケ、武田の卑怯、上杉の戦闘狂。今は三者で睨み合っていますが、いつこちらに牙を剥くかわかりません。降伏の条件も厳しいものではありませんし、あの三家を押さえてくれるのなら……」


 氏康は三家の対処で身も心も疲れたらしく、なんの抵抗もしないで降った。

 苦労性な人物に見えてしまう。

 過去に、色々と貧乏クジを引かされていたのかも……。


「北条家は、今川家と武田家と同盟を結んでいたと聞きますが……」


 ここで、俺の側に控えていた松永久秀の娘唯が氏康に質問をした。

 確か、戦国時代の三国同盟だっけか?

 世界は違うのに、共通性があるんだな。


「いかにも。ここ最近、織田の小娘が今川に妙なちょっかいをかけることが多く、義元殿は忠告のために兵を出したのです」


 それが、いきなり奇襲を食らって今川軍は崩壊し、その領地も大半が織田家によって併合されてしまったそうだ。

 さらに、同盟を結んでいたはずの武田家までもが、どさくさに紛れて今川家の領地をかすめ取ってしまった。


「戦で当主を討つなど、卑怯にもほどがあります!」


「細川殿、義元殿は生きていますぞ」


「あれ? 死んだと聞きましたが……」


「戦場が混乱しておりましたからな。義元殿は負傷が激しく、軍勢も崩壊したので家臣たちがこちらに避難させてきました」


 おかげで義元は死なずに済んだが、今川家の領地は織田家と武田家によって分割されてしまった。

 義元の家族も処刑はされていないが、軟禁状態にあるという。


「織田のウツケ殿は、武田家を激しく非難しました。すべての今川家の領地は戦に勝利した自分たちのものなのに、卑怯だと」


「間違ってはいないけど、『お前が言うな!』って感じね」


「ウツケのやり方に信秀殿も強く抗議したのですが、逆に当主の座を奪われて領地から追放されてしまいました。彼女の弟である信勝殿も一緒に追放されております。武田家も同じです。現当主である信虎殿が追放され、長子の晴美が信玄を通り名として武田家を乗っ取ったのです」


 武田家の当主も女性なのか……。

 どちらも気が強そうだな。

 

「最後の上杉家は?」


「あの家は、元々小領主でもある家臣たちの力が強い家なのです。それを前当主為景の急死後、その娘である竜子が反抗的な小領主たちを追放し、上杉家の力を大きく増しました。彼女は、当主の通り名を謙信と改め、周辺の小領主たちを降すか追放して力を増しています」


「厄介なのが三人もいるじゃないか」


 この三名、当然魔法使いで中級レベルの実力者である。

 煮え切らないルールのため、一向に統一が進まないこの島の現状に憂慮し、力技を用いても統一すると決起し、三人は所領が近いので、勢力拡大の途中で激突するようになったのだと、氏康が説明してくれた。

 とにかく三人共、血の気が多いのがわかった。


「今川義元主従、信長に追放された義元殿の家臣、織田信秀、信勝親子、武田信虎殿、旧上杉家臣の本庄家、竹中家、新発田家など。他にもこの三家に領地を奪われた村上家、諏訪家、松平家、蘆名家、神保家……他にも多数です。みんな、なぜか北条家を頼ってきましてね……」


「一番の大身で、再び戦に負けて追放される危険性も少ないからな」


 エルの推察どおりだと思うが、三人が暴れたせいで中立的な小領主が減り、逃げ込む候補が減ったのも理由であろう。


「これだけの方々を養い続ける財力が……」


 北条家は東部のある有力五家で一番統治者として評判がいいのに、こんなに亡命者を抱え込んでしまうと、増税でもしなければやっていけないはず。

 氏康は、信長、信玄、謙信の戦バカたちに対し、恨みつらみがあるのであろう。

 彼らの身勝手な行動に頭を抱えていた。


「それで、彼女らは?」


「なんでも、最終決着をつけるそうです。三人から、お前も加われと文が来ました。戦費なんてありませんけどね!」


 一番まともそうなのに、近所に三人ほどDQNがいるばかりに苦労するとは、この氏康というおっさんは、不幸の星の下に生まれてきたのかもしれない。


「あなた、急ぎましょう」


「そうだな。義元殿は大丈夫なのか?」


「はい、応急処置がよかったので重傷の割には簡単に治りました」


 エリーゼは負傷して寝込んでいる今川義元の治療を行い、無事に回復したようだ。

 このおっさんも死亡説が流れたり、家族が信長に監禁されて不幸以外の何者でもないと思う。


「では、行くか……」


 あまり関わり合いになりたくない雰囲気を醸し出す三人であるが、こいつらを好き勝手させておくと、本物の血で血を洗う戦乱に突入しかねない。

 バウマイスター伯爵家諸侯軍は、三人の軍勢が睨み合う場所に到着した。


「おーーーい! 空気が読めないおバカ娘三人!」


「なんだとぉーーー! お前が噂の侵略者バウマイスター伯爵か! 私は織田信長だ!」


 エルの単純な挑発に一番最初に乗ったこの世界の織田信長は、ヤンキー系美少女であった。

 染めたと思われる茶髪に、フルプレートに似た鎧、この島は一万年以上も鎖国をしていたくせに、リンガイア大陸風の軍装をつけている。

 どこから入手したのかは知らないが、舶来物好きなところだけは織田信長によく似ていると思った。


「俺は、バウマイスター伯爵の家臣! エルヴィン・フォン・アルニムだ!」


「お前には用がない! バウマイスター伯爵はいるか?」


「ぷっ、信長は雑魚だから相手にされないんじゃないの?」


「言ったな! このおチビが!」


「体の大きさなんて関係ないわよ。戦はここで勝つのよ。ここで」


 真っ赤な鎧をつけ軍配を持った小さな少女は、自分の頭を指差す。

 彼女が、第二のDQN武田信玄のようだ。


「軍勢の数だけは立派ですね」


「ビビったのか? おチビ」


「なんですって! この脳筋娘!」


 信長と信玄は、俺たちの存在を忘れたかのように醜い口喧嘩を始めた。

 発する言葉のレベルがほぼ同じ、とても低く安定している二人だ。

 

「敵がいくらいようと、すべて叩き潰すのみ!」


 三人目の少女は、僧兵風の格好に薙刀を持った黒髪の美少女であった。

 だが、三人目のDQNなので俺は勿論トキメキもしない。

 彼女が上杉謙信のようだ。


「これだから戦闘狂は……」


「常に卑怯な策ばかり考えているおチビには言われたくない!」


「あんたたち、人をいつもおチビ扱いして!」


「レベルの低い言い争いだな」


「ああ……」


 俺とエルは、三人のくだらない言い争いを聞いてテンションを下げた。

 というか、そろそろこちらの相手もしてほしいところだ。


「島の外からの侵略者がなんだ? 私は、おチビと戦闘狂を倒してお前に戦を挑む! この島を統一し、バウマイスター伯爵領とやらを併合し、ヘルムート王国、アーカート神聖帝国、魔族の国をも平らげて世界の王となるのだ!」


 この世界の信長も、気宇壮大であった。

 ただし、現実は見えていないようだが……。


「言い分は聞いてあげたから、本題に入るぞ。お前さんが頑張らなくてもバウマイスター伯爵家がこの島を統治するから、安心して降るように」


「バカにしているのか? ちょっとくらい魔法が使えるからって! 勝家!」


「おう!」


 信長に降るように言うと、彼女はキレてしまったようだ。

 後ろに控えていた身長二メートルはありそうな大男が、馬に乗ってこちらに突撃してくる。


「はははっ! 織田家一の猛将である勝家に勝てるかな?」


「戦いたい人は?」


「はーーーい」


 勝家って言ったから、柴田勝家風な人なのであろう。

 猛将という共通項はあるか。

 魔力も持っており、それでも初級くらいだ。

 小領主の小競り合いで、魔力をパワーに乗せて戦えばほぼ無敵だと思う。

 俺が戦うまでもないので希望者を募ると、ヴィルマが手を挙げた。

 許可を出すと、華麗に馬に飛び乗り、大斧を持って勝家へと突進していく。


「俺に勝てるか! チビ!」


「噛ませは、物語でもこういうセリフをよく言う」


「抜かせぇーーー!」


「あと、馬が可哀想」


 残念ながら、この世界の柴田勝家はヴィルマの挑発に簡単に乗ってしまう猪武者であった。

 この島の馬についてだが、外の馬に比べると一回り小さく、勝家ほどの巨体が乗ると馬が大変そうに見えた。

 ヴィルマはバウマイスター伯爵領から持ってきた馬に乗っているので、そんなことはないけど。


「馬上にてその大斧を振るうか!」


「別にどこでも使える」


「自信満々なのは今のうちだけだぞ! 我が槍の前に破れるがいい!」


 二人は武器を構えながら馬を走らせ、一瞬だけ交差した。

 俺にはただすれ違っただけにしか見えなかったが、エルは違う意見のようだ。


「ヴィルマの勝ちだな」


「そうなのか?」


「一撃で決まったよ」


 エルの言うことに間違いはなかった。

 その直後、意識を失った勝家が馬から落ち、勝利したヴィルマが大斧を掲げたからだ。


「まあまあ強かった」


「勝家が……」


「駄目じゃないの。これだから、信長の質の低い家臣たちは……。この武田家が、四天王を出してあげるわよ。信春、昌豊、昌景、昌信」


「「「「ははっ!」」」」


「弥太郎!」


「お任せを!」


 信長と信玄と謙信。

 別に共闘しているわけではないが、先に俺たちを倒した方がいいと判断したのであろう。

 次々と戦力を差し向けてくる。

 この三人、実は気が合うのかもしれない。

 信玄は負けた勝家を出した信長に文句を言いつつ、多分四天王扱いの馬場信春、内藤昌豊、山県昌景、高坂昌信を、謙信は鬼小島の異名を持つ小島弥太郎を出してきた。

 なぜ彼らの名前がわかるのかと言えば、俺の側にいる唯がそっと教えてくれるからだ。


「唯殿」


「以前から私の父は、長慶公の命で各地域の有力領主とその配下について調べておりました。その情報を、長慶公の後継者であるお館様にお伝えてしただけです。雪殿は心安んじて軍政を担当していただきたく」


「くっ!」


 雪は、情報収集能力で松永親娘に先を越されたと、とても悔しそうな顔をしていた。

 唯姫は俺よりも年上だが、出しゃばらず頭もよく気が利く綺麗なお姉さんである。

 松永久秀自慢の一人娘であり、将来は婿を取って松永家を継いでもらうそうだ。

 俺は条件に合わないから、気楽につき合えていいな。


「ヴェル、行って来るわね」


「ボクも行く」


「あたいも」


「某も!」


「いや、導師は止めとけ!」


 ゾロゾロとムサイお兄さんや小父さん武将が出てきて一騎打ちを所望し始めたが、イーナ、ルイーゼ、カチヤが勝負を受けて戦い始めた。

 導師も暇なのか戦おうとするが、彼らは全員初級魔法使いでしかない。

 どう考えても敵の方が可哀想なので、すぐにブランタークさんが止めた。

 代わりに、導師が鍛え直していた兼仲が導師から与えられた六角棒を持って一騎打ちに臨んだ。


「信玄様以外の女子が、俺たちに勝てるものか」


「女子は、後ろでお菓子でも食べているがいい」


「勝負に負けて泣かないようにな」


「外の世界では、女子に戦わせなければいけないほど男が弱いらしいぞ」


 自称武田四天王の面々は、女性が一騎打ちに出てきたのでバカにし始めた。


「いやね、ああいう言い方をする人って」


「イーナちゃん、ああいう発言をする人って大抵それほど強くないから」


「あんまり強そうには見えないけど、旦那のためだ」


「うーーーむ、なぜかあまり強そうに見えない。師匠のおかげか?」


 イーナ、ルイーゼ、カチヤ、兼仲は武田四天王と一騎打ちに臨んだが、俺がどいつがどいつか見分けがつかないまま全員倒されてしまう。

 死んではいないが、しばらくは意識を戻さないであろう。


「なっ! 私の四天王が!」


「四人いるということは、私の鬼小島の四分の一の強さなのでしょう。私の鬼小島は……」


「あまり強くないのである! ガッカリである!」」


 ブランタークさんの静止を振り切った導師は、謙信自慢の猛将小島弥太郎を一撃で殴り倒し、その意識を刈り取ってしまった。

 殺してはいないが、脳震盪で完全に戦闘不能だ。

 残念ながら彼は、自慢の大太刀を抜く暇すら与えてもらえなかったようだ。

 

「駄目じゃねえか」


 ブランタークさんが、三人のDQN自慢の配下に駄目出しをした。


「実は織田軍で一番強いのは私だ! バウマイスター伯爵、勝負しろ!」


「奇遇だな、信長。私もバウマイスター伯爵と勝負しようと思っていたんだ」


「鬼小島がやられた以上、私が戦わねばなるまい」


 自慢の猛将たちを打ち破られたDQN三人組は、一斉に俺に対し勝負を挑んだ。


「三対一か?」


「なにを言うか。あくまでも私は一騎討ちを望んだのだが、勝手に信玄と謙信が割り込んだのだ。私に譲るという選択肢はないので、あの二人がバウマイスター伯爵に同時に挑もうと、私には関係ない」


 信長は、とてもいい性格をしていた。

 彼女は、自分一人では俺に勝てないと瞬時に理解したのだ。

 だから三人で俺を倒そうとするが、あくまでも自分は一騎打ちを望んだ。

 信玄と謙信は、勝手に加わっただけで関係ないと言い放った。

 これまでに経験のない、清々しいまでの卑怯っぷり。

 勝つために手段は選ばない女性なのであろう。


「信長が退かないけど、私には時間がないので仕方がないわ。私はあくまでも一対一で戦いに挑んでいるから、残り二人と組んだわけじゃないもの」


 信玄も信長と同じく、ここは三人で俺を倒してしまい、あとでまた三人による戦いを再開しようと目論んでいるようだ。


「まあ、仕方がないな」


 戦闘狂と噂される謙信は、戦えれば卑怯もクソもない。

 それ以上に、勝てれば嬉しいタイプのようだ。

 結局三人同時に戦いを挑まれ、俺対信長、信玄、謙信の戦いになってしまう。


「いい性格をしていますわね」


「貴族や王としては間違っていないのじゃがな……」


 いい性格をしている三人に、カタリーナとテレーゼも呆れていた。

 元々大貴族であったテレーゼは三人の作戦を理解はできるのだが、今となっては卑怯としか言いようがないと思っているようだ。


「あなた、頑張ってくださいね」


「すぐに済ませるよ」


 俺はエリーゼにすぐ戻ると言ってから、三人の前に立つ。


「聞いたか? 信玄」


「聞いてはいないが、聞いている。この状況で随分と余裕だな」


「まあよかろう。我々ではなく、私が勝つのだ」


 この三人、先ほどまでそれぞれ軍勢を率いて睨み合っていたのに、俺という大敵の前ではとても仲がよかった。

 似た者同士、考えが一致しやすいのであろう。

 

「お前ら、実は仲いいだろう?」


 いい性格をしているという部分と、いきなりこれまでのルールを破ってしまうというKYな部分では似た者同士、とても気が合っているように俺には見えるのだ。


「誰が仲がいいものか!」


「あくまでも、たまたま攻撃の機会が一緒になっただけだ!」


「バウマイスター伯爵、降伏すれば命だけ助けてやるぞ」


「その言葉をそっくり返すよ」


 謙信の降伏勧告を、俺はそのまま三人に返した。


「いかに魔力に自信があるとはいえ、三人ならば!」


「まずはバウマイスター伯爵を降してから、東部、アキツシマ島全土と平定を進めるべきか」


「どのみち、信長と信玄とはケリをつけないといけないがな。その前に倒されるがいい」


 信長は『火炎』魔法を、信玄は『カマイタチ』の魔法を、謙信は『氷弾』で俺に攻撃を仕掛けたが、すべて『魔法障壁』で防いでしまう。

 この三人、そこそこ有望な中級魔法使いという感じだ。


「三種類の属性魔法攻撃だ! 思い知ったか?」


 信長が魔法を連発しながら高笑いを続けているが、特に工夫もない攻撃魔法なので欠伸が出そうなほど暇だった。

 師匠のように、魔力量が多い敵に対し、色々と応用を利かせるというレベルに達する者は少ないようだ。


「もっと派手なのはないのか?」


 三人の大したことない魔法が続くので俺は退屈してしまい、つい余計な一言を口にしてしまう。

 それを挑発だと受け取った三人は激高した。


「言わせておけば!」


「ならば食らうがいい!」


「地獄で後悔するなよ!」


 三人は俺の挑発に簡単に乗ってしまい、信長は『火柱』魔法を、信玄は『竜巻』魔法を、謙信は巨大な『氷弾』を作って、さらに激しく攻撃を続ける。

 だが、こちらにはまったくダメージがなかった。

 魔力も向こうばかりが大量に消費し、俺は必要最低限の『魔法障壁』だけで三人の魔法攻撃を防いでいる。


「(もうそろそろかな?)」


 中級魔法使いが上級魔法使いが展開した『魔法障壁』をうち破らんとする時には、一撃で全魔力を用いるくらいしないと駄目だ。 

 それなのに、中途半端な威力の攻撃魔法をダラダラ連発している時点で、この三人の負けは確定した。

 もうこれ以上は時間の無駄というやつだ。


「はあ……はあ……」


「なぜバウマイスター伯爵の『魔法障壁』が破れない」


「こんなはずは……」


 三人は次第に口数も少なくなり、ついに大半の魔力を使い果たして動けなくなってしまう。

 だが彼女たちは、ここで逃げるわけにはいかない。

 三人は、魔法の強さで家臣や兵を率いてきたのだ。

 ここで逃げたら、その軍勢は崩壊してしまうであろう。

 そうでなくても、名だたる猛将たちが俺の妻たちに倒されているのだから。


「なにか、攻撃魔法を披露しないとな」


 犠牲を少なく勝利するためには、圧倒的な力を見せて相手の心を折らなければならない。

 そこで俺は、膨大な魔力を使って三人の前に巨大な『火柱』を派手に撃ちあげた。


「導師が『なんとかライジング』とか言ってたな」


「バウマイスター伯爵、なんとかでは格好がつかないのである! 『バースト・ライジング』である!」


「そう、それでした!」


 とにかく相手をビビらせることだけが目的の魔法なので、『火柱』は高さ五十メートルを超えるものとなった。


「これは、思ったよりも熱いな……」


「それだけ派手な火柱をあげれば当然ですわ」


 ここは元々亜熱帯の島なのでとても暑くなってしまったが、脅しの効果は十分にあったようだ。


「ひぃ……」


「魔法の威力が違いすぎる……」


「勝てない……」


 巨大な『火柱』を見たDQN三人組はその場で腰を抜かし、兵たちもなにも言わないのに次々と武器を捨てていく。

 これにより、織田軍、武田軍、上杉軍は降伏し、三人のせいで混乱していた東部もバウマイスター伯爵家によって無事に併合されたのであった。

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