第336話 こっちの世界でも、安定の独眼竜(前編)
「という統治方法に徐々に持っていくが、不満はあるかな?」
「いいえ、滅相もない!」
降った南部晴政たちに俺がこの島の統治方法を伝えたが、彼らは反対しなかった。
俺たちがいなくなってから再び反抗する可能性も否定できなかったが、俺は『瞬間移動』ですぐここに来れること。
バウマイスター伯爵家に逆らわなければ、魔導飛行船を用いた交易も始まると伝えたらとても喜んでいた。
「この島に入植したご先祖様は、魔導飛行船を所持していませんでした。製造、維持ができる技術者もおりませんでしたので……」
同じ名族でも、この島に入植した秋津洲家は神官の出であった。
もう一方の瑞穂家は、一族や分家に職人や技術者が多かったそうだ。
ミズホ公爵領ですら今の領地に腰を据えるまでに失った技術が多かったのだから、アキツシマ島は余計にそうなのであろう。
外部との交流もなかったわけだから、魔導技術がここまで衰退してもおかしくない。
「同じ民族であるミズホに支援を要請するか?」
「それは反発が大きいと思います」
すっかり従順になった南部晴政が、自分はともかく、他の領主たちの反発が強いはずだと断言する。
「一万年も前とはいえ、瑞穂家と秋津洲家は仲が悪かったそうです。昔は互いに当主を暗殺しようと、暗殺団を定期的に送り込んでいたとか……」
「大昔のことなのに、随分と詳しいんだな」
「南部家は、元々秋津洲家に仕えていた警備隊幹部の子孫なので、大昔の書物が残っているのです」
一万年以上も続く名族か……。
ヘルムート王国でもビックリなお話だな。
「ハルカ、そうなのか?」
「私も以前、父や兄からそんな話を聞いたことがあります。未曽有の大災害であったはずの古代魔法文明崩壊時に、どうして同じ民族で行動を別にしたのかと言えば、双方の仲が非常に悪く、一緒にいると内輪揉めどころか、殺し合いになる可能性があったからだと」
「一万年経っているから、さすがにねぇ……」
織田信長と比叡山延暦寺の子孫だって数百年ぶりに和解した、なんてニュースもあったくらいだから。
「ミズホ側としても、無償での支援は難しいと思います。新しい領地の開発や入植で忙しく、今は魔族対策もあります。なにしろ、これまで優位を誇っていたミズホの魔道具が一瞬で陳腐化してしまったので」
「それもあった……」
内乱鎮圧の功績で、陞爵、加増されたミズホ公爵家は、新しく得た領地の把握と統治で忙しかった。
こんな遠く離れた島の支援は難しいのが現状だ。
一万年以上も離れていたのに、突然同族だから支援して、というもの難しいか……。
アキツシマ島側にもプライドがあり、支援してもらったがために下に見られるのも嫌だろう。
それが原因で、新しい争いのネタが増えると困る。
しばらくは様子見だな。
「こちらとしても、瑞穂側に支配される危険を考えますと……瑞穂家に支配されるくらいなら、バウマイスター伯爵家に従った方がマシという領主も多いでしょう」
戦に負けた俺たちに従うのは仕方がないが、負けてもいないミズホ公爵家から下に見られるのは嫌というわけか。
それにしても面倒な……。
一万年以上にも及ぶ確執か……。
でもそのおかげで、彼らはバウマイスター伯爵家に素直に降伏したとも言えるのだから。
「まあいい。領地は没収だが問題ないな?」
「はい」
これも揉めるかと思ったが、意外と素直に受け入れられた。
領主を廃止するのは、彼らはバウマイスター伯爵家の家臣になるわけだから、寄子になって独立でもしなければ、領地を与えられないからだ。
王国政府も例外は認めないだろう。
とはいえ、今統治している領主の代官には任じる予定だ。
彼らは代官として土地を管理し、バウマイスター伯爵家の代わりに行政、徴税、治安維持などを行う。
ミスがなければ、跡継ぎを子々孫々代官に任じる。
そんな彼らを纏めるのが、細川家と秋津洲家というわけだ。
領地を没収とはいえ、今の時点ではあまり変化もないとはいえる。
南部家はその家柄と元々持っていた領地に比した屋敷と土地の所有を許され、代官職の他にも商売をおこなったり、大規模農地の経営もできるからだ。
ただ領民たちに対し、バウマイスター伯爵家で決められた以上の税の徴収や労役を課すことはできなくなった。
領民たちの土地や家屋の所有も正式に認定され、そこからあがる収入から決められた比率の税をバウマイスター伯爵家に収める。
元領主たちは代官として税の徴収をしてバウマイスター伯爵家に納め、代官としての給金は、バウマイスター伯爵家が金銭で支払う仕組みだ。
最初は上手く行かないかもしれないが、代官としてミスが多ければ解任もあり得るとは言ってある。
もし反抗すれば、すぐに鎮圧可能なので問題ないだろう。
それに、彼らを統括する予定の雪は優秀だからな。
彼女が同じ方式でなんの苦もなく旧秋津洲領と旧七条領を統治していると聞き、ローデリヒが『部下に欲しいです』と言っていたくらいなのだから。
「こちらの統治を受け入れれば、利益も供与する」
まずは、一万年も待ちに待った外部との交易だ。
彼らは水上船しか持たず、しかもこの島を出て海を北上すると海竜の巣があった。
これまでに外部との交易を目論んで海に沈んだ者はほぼ全員だそうで、普段は島の周囲で漁をするくらいだったそうだ。
その漁ですら、この島はほぼ断崖絶壁に囲まれており、砂浜や港になる場所が非常に限られていたため、大した規模でもなかったのだから。
「今、みんなで井戸を掘っている」
「井戸はありがたいです。このところ、枯れる井戸が増えておりまして……」
この島には、河川や湖沼が異常に少ない。
中央部にある琵琶湖とそこから伸びた短い支流くらいだ。
大半の領主たちは、大昔に掘られた井戸や、雨水を溜める溜め池に頼っている。
井戸は深く掘らねばならず、水脈の上に『黒硬石』という特殊な岩盤の層があり、これを破壊するのは上級以上の魔力を持つ者でないと難しい。
中級以下では削れもせず、ここ数百年優秀な魔法使いが出ていない彼らは新しい井戸を掘れなかった。
昔に掘った井戸が次々と枯れる事案も発生し、彼らは水の確保に懸命であったのだ。
「一度枯れた井戸も、もう一層黒硬石の岩盤を砕けば復活するみたいだな」
「おかげで、みんな助かっています」
名族南部家の当主晴政をもして、水の確保は容易ではない。
琵琶湖を持つ三好家の力が、いかに強大であるかの証拠もあった。
「ただ、琵琶湖の水を持ってしても、中央の民たちが水に不自由しない生活が限界なのです」
だから三好家は、地方に手を出さなかった。
晴政も年に一度贈り物を持って挨拶に行き、すると三好家から返答の贈り物が貰える。
その贈り物とは、琵琶湖で獲れる魚を干したり、塩漬けにしたもので、これを転売すると大きな利益が出る。
アキツシマ島の住民は日本人に似ているので、彼らも魚が好きなのは同じようだな。
「他にも、商人たちが行商に来てくれる頻度が上がります。三好家は、挨拶に来る領主には気前がいいですね」
「それで地方が大きく荒れないのなら、安い買い物なんだろうな」
「下手に争いが増え、そこから中央に流民が押し寄せるのを恐れているみたいです」
下手に地方に介入すると経費ばかりかかって赤字なので、地方領主を贈り物と交易の利益で従わせるのが、三好家のやり方なのであろう。
彼らが、新しいこの島の支配者であるバウマイスター伯爵家に対しどう出るかはわからないが、その前に色々とやらねばいけないことが多い。
上級の魔力を持つ魔法使いたちは、降った南部家以下の領主たちの領地を回っている。
新しい井戸を掘ったり、過去に枯れた井戸の再生を行っているのだ。
だが彼らの実力を持ってしても、一日に一度全魔力を用いて岩盤を砕いたとして、五日から一週間はかかる。
それでも、これまで黒硬石を砕ける魔法使いが一人もいなかったので、我々は大いに歓迎された。
命の水を提供してくれる、新しい支配者を素直に受け入れている。
使える水の量が増えるということは、彼らの大好きなお米を作れる量が増えることでもあるからだ。
歓迎されないわけがない。
エリーゼと涼子は無料で領民たちの治療を行い、これも好評だ。
強大な魔法で脅すという方法で従わせたので、飴の政策も必要というわけだな。
「貨幣についても感謝しております」
ミズホには独自の通貨があったが、このアキツシマ島にもないわけでもなかった。
だがその質は、お世辞にもいいとは言えない。
この島は金と銀が少ししか採れず、銅は島内数ヵ所に銅山があるので、銅銭が主流であった。
形は時代劇に出てくる銅銭によく似ている。
ところがその銅貨が、まったく統一されていないのだ。
秋津洲家が島全体を押さえていた時に発行された古い銅銭『秋津通宝』。
ただしこれは、最後に作られたのが今から五百年ほど前だ。
鋳造技術がいいので価値は高いが、ほとんど市場に出回っていない。
次に、三好家が製造している銅銭『三好通宝』。
一番数が流通しており、そう作りも悪くない。
最後に、それぞれに地方領主や商人が勝手に鋳造している通称『雑貨』。
質はピンキリのうえ、地方貨なので現地でしか使えない。
少なくとも中央では、贋金扱いなので絶対に使えなかった。
地方領主の大半は、外部との決済用に三好通宝を、地元で使う雑貨の両方を備蓄していたわけだ。
銅銭がなくて、金片、銀塊、水晶などの宝石、岩塩、塩、いまだに物々交換が主流の地域もあるそうで、誰が考えても不便なのは確実だ。
そこで、金、銀、銅の量を計ってセント貨幣に交換することを義務付けた。
施行は北部を完全に把握してからになるが、その頃にはバウマイスター伯爵領から交易船も来るので、セント貨幣で色々な品が買えれば不満もないはずだ。
この島がバウマイスター伯爵領となった以上、王国のセント貨幣しか使えないので、特に私鋳した雑貨などは撤廃させないといけない。
「今は、北部の平定に全力を傾ける」
「本拠地は、やはり米沢ですか?」
「あそこが一番便利だ」
北部一の名族伊達家の本拠地とあって、そこを押さえれば北部支配が容易となる。
そこに涼子と雪の屋敷を置き、常備兵を兼仲に任せる。
統治の補佐として晴政たちに文官を出させ、まずは北部の支配権を強固にする計画だ。
「(まるで、リアル〇長の野望だなぁ……)兵力を常備兵主体として、北部の開発も推進。井戸ももっと掘らないとな」
魔法で海水を真水にしてもいいのだが、俺が常にこの島にいられないのだから。
ここは島なのに地下水が豊富なので、岩盤を魔法で撃ち砕き続けるしかない。
人口が増えた場合、バウマイスター伯爵領に移住だな。
土地は余っており、降伏した旧領主たちの子弟には仕官先を提示できる。
すでに、バウマイスター伯爵家に仕官してしまった者たちもいた。
領主やその家臣の一族でも、仕官先や働き口がないのは、リンガイア大陸の貴族と似たようなものだったりする。
いや、もっと大変だな。
水不足なので、気軽に開墾しようというわけにもいかなかったからだ。
若い彼らは外の世界に出られるとあって、みんな目を輝かせてうちに仕官した。
今は俺直属の常備兵部隊を編成し、訓練の合間に街道の整備などを行っている。
「次は、最上家か伊達家か」
「最上家の攻略が先ですね」
「どうして晴政はそう思う?」
「両家は親戚同士ですが、元は仲が悪かったですから」
少しでも関係を改善しようと、現伊達家当主に、前最上家当主が妹を嫁がせた。
だが、一代の婚姻くらいで両者の関係はなかなか改善しないであろう、というのが晴政の考えだ。
「伊達家は、最上家に援軍を送らないのか?」
「伊達家はうち以上に重臣の力が強いですからね。いまだに最上家との婚姻に反対している者たちも多く、援軍を送れるか疑わしいところです」
「詳しいんだな」
「ええ、南部家はアキツシマ島北部三大名族と言われておりますが、その力は最下位です。伊達家と最上家の動きには、常に注意を払っていました」
生き残るためとはいえ、名族の当主というのもなかなかに大変なんだな。
「井戸掘りがひと段落したら、次は最上家だな」
やはり黒硬石の岩盤は強固であり、俺が加わっても領民たちから支持される数の井戸を掘るのに二週間もかかってしまった。
その間にエリーゼと涼子は領民たちに対し無料で治療を行い、兵士たちは兼仲が訓練を施したり、領内の街道整備、開墾なども行っている。
次は、北部三大名族の中で二番目に力を持つ最上家。
その当主である義光の決断が気になるところであったが……。
「降ります。一門の清水、大山、上野山、山野辺、楯岡、松根、家臣の鮭延、寒河江、日野、志村、延沢、氏家他全員、一人残らず降ります」
「はい?」
動員兵力でいえば南部家よりも多いはずの最上家は、当主義光が自らやって来て、俺たちに降ると宣言した。
念のため雪が事前に降伏条件を認めて送っていたのだが、まさかこちらが力を見せる前に降るとは思わず、雪ですら唖然としていた。
「魔法勝負を挑むとかしないのか?」
「最上家当主である私の魔力は、残念ですが南部晴政殿とそう差がありません。勝てない勝負を挑むほど我々はバカではないのです」
「領地は没収だぞ」
「代官職の世襲と、子弟の仕官、バウマイスター伯爵領への移民も認められるそうで?」
「ああ」
「では、問題ないですな」
この最上義光という人物、本心からそう言っているのだろうか?
みんな、代々数千年以上も領主としてその土地で暮らしていたというのに。
「領地に未練はないのか?」
「ないと言えば嘘になりますが、このままですと我らはジリ貧ですから」
徐々に当主とその一族の魔力量が減少していき、このままでは領地の開発も侭ならない。
ちょうどいいタイミングで強い支配者が外部からやって来たが、過酷な統治条件が出たわけではなく、むしろいい条件なので降って当然だと義光は述べた。
「領主が独立独歩でやっているといえば聞こえはいいですが、この数百年で我らは衰退する一方なのです。三好家も中央にしか興味がありませんので。バウマイスター伯爵様が強者で、我らに利益を与えてくれるのなら降ります」
「そうなんだ……」
俺はもっと『先祖代々の土地がぁーーー!』と必死で抵抗するかと思った。
「なにより困っていたのが水です。我らは新しい井戸を掘れません。今年も、あそこの井戸が枯れたという報告を受けると、領主はみんな胃が痛くなります。溜め池を掘って対策していますが、ここ最近もそうですが、雨が降らないことも多いのです。まさか三好家も、水は売ってくれませんから」
兼仲もそうだったが、一番の問題は水かぁ……。
三好家としては、この島全体を直接支配してしまうと、地方領主たちに水を保証しなければならなくなる。
中央の人たちが暮らせる水は確保できるが、それ以上は難しいから、地方に興味がないというよりも、地方に手を出す余裕がないのが実情なのであろう。
「そこにおられる秋津洲高臣様には申し訳ありませんが、せめて秋津洲家が島内に統一した強固な統治体制を維持していれば……と思います」
「それがあったら、俺はヘルムート王国に朝貢させていたから」
今のところは順調に平定作業が進んでいたが、収支でいえば完全な大赤字である。
アキツシマ島が安定的に統治できるようになっても、このままだと元を取るのに数十年規模でかかるはず。
もっとも金がないわけでもないし、俺が変に貯め込むよりも派手に使った方が王国も安心であろうから、俺は金を使う。
元々、浪費癖も大層な趣味もないからな。
というわけで、俺は大金をかけてこの島を平定しなければいけないのだ。
いくらまで使うのかは、ローデリヒの胸先一つだけど。
「我らは降りましたが、伊達家はどうなるかわかりません」
「義光は、伊達家当主の義兄だと聞くが」
「そうですね。伊達家当主政宗の義理の兄になります」
伊達家の当主は政宗というのだな。
もしかして、片眼で眼帯をしているのかね?
「それともう一つ」
「まだなにかあるのか?」
「それが、現伊達家当主政宗は急病で床に伏せているという噂が。我らも探ってみましたが、勿論そう簡単に探らせてもらえるはずもなく」
「これはまた厄介な……」
当主が降ってくれれば楽だったのに、もし病状が悪化して亡くなりでもしたら、今度は御家騒動か?
とにかく状況がわかるまで、最上領の慰撫に務めるしかない。
「つまり、ボクたちやヴェルは井戸掘りなんだね?」
「他にできる人がいないからなぁ……」
本当、黒硬石って硬すぎだよ。
この島の基礎の大部分がこの石でできているのだから。
魔法にも強いので、井戸掘りで砕いた石を王都の魔道具ギルドに見せたらサンプルに大金を支払ってくれた。
魔族が作る高度な魔道具に危機感を抱いているが、金はあるし、なにか新しい技術のヒントが欲しいと思ったのであろう。
だが、黒硬石は硬すぎて加工すら難しい。
オリハルコン製の工具でしか削れないそうで、これを使った製品の実用化には膨大な年月がかかると予想される。
ようするに、今の時点ではただの固すぎる岩であった。
「井戸を掘りつつ、体制を整えて伊達家と戦わねばならないわけだ。ところで、現当主はどの程度の魔力を持つんだ?」
「我々とそう違わないです」
伊達家も犠牲を出さずに降せるだろうか?
そんなことを考えながら、俺たちは併合した旧最上領や、服属領主たちの旧領に井戸を掘り、開墾を行い、街道を整えていく。
あとは伊達家の対応を待つのみであったが、俺たちは予想外の敵と戦うことになるのであった。
「父上、お加減はいかがですか?」
「すまないね……藤子。私が元気なら、すぐに北の敵に対応できるのに……」
「父上は、心安んじあれ」
今、俺の父伊達政宗は病床にあった。
密かに呼び寄せた医者に見せたが、病状はよくない。
そこで、最北に領地を持つ名族秋津洲家の当主にして高名な治癒魔法使いである高臣殿の招聘を計画していたところ、予想外の出来事が発生した。
その高臣殿が、外部から来たバウマイスター伯爵を名乗る集団に降り、この島の北部地域平定を始めたのだ。
その動きは思いのほか早く、彼らは難なく南部家と最上家、その他多くの小領主たちを呑み込んだ。
当然次は、父上が当主を務めるこの伊達領が標的となる。
本来ならその対応は父の仕事なのだが、今は重病で床から離れられない。
ならば、父の唯一の子である私、次期伊達政宗を継ぐ伊達藤子がバウマイスター伯爵に対抗しなければ。
これ以上、余所者に好きにはさせない。
名門伊達家の意地を見せてやるのだ。
「大体、伯父上も不甲斐ない!」
「しかしながら、義光殿は優れた人物。彼が降るほどの実力を持つバウマイスター伯爵家は危険だ。私が動ければなぁ……」
「父上、ここは俺にお任せを。バウマイスター伯爵とやらは優れた魔法使いと聞きますが、俺とて父上を超える魔法使いと言われているのですから」
俺は、父上よりも魔力量が多い。
父上が病床にあって無理できない以上、俺が一族と服属領主たちを率いて戦わねばならないのだ。
「しかしだな。藤子はまだ……」
「父上、事ここに至っては年齢など関係ありません。みなの補佐を受けつつ、バウマイスター伯爵とやらを撃退してみせましょう。なあ、小十郎、成実」
「お館様、我ら必ずや藤子様をお守りいたします」
「他の一族もついておりますれば、お館様は病状の回復に専念していただきたく」
俺の付け家老の片倉小十郎と従姉の伊達成実も、俺の代理出陣に賛成してくれた。
父上は、病気が治ってからまた伊達家で辣腕を振るえばいいのだ。
「わかった。藤子の意志を尊重しよう。だが、くれぐれも無理をしないように」
「心得ました」
父上から許可はいただいた。
見ていろ、バウマイスター伯爵め!
南部家、伯父上と立て続けに降していい気になっておるようだが、俺の魔法で必ずやこの島から追い出してやる。
そう決意した俺は、急ぎ全軍を率いて出陣するのであった。
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