第335話 俺は、戦国時代っぽい島で統一を目指す(後編)
「総数二百人か……で大丈夫なのか? ナンブって、結構大物領主なんだろう?」
「ブランターク殿、こちらは田植えと種まきが終わったとはいえ、農作業等で忙しいのでこれが限界です。そしてそれは向こうも同じ状況なので、戦力比は変わりませんから」
「その辺は、リンガイア大陸の田舎貴族と同じだな」
秋津洲領と七条領を併合したバウマイスター伯爵家は、第一目標としてアキツシマ島北部平定に乗り出した。
王国と魔族による交渉の行方がわからないので、なるべく急いだ方がいい。
俺たちはエリーゼたちも含めたフルメンバーで、フリードリヒたちが心配だが、ここは涙を呑んで、アマーリエ義姉さんやメイドたちにその世話を任せている。
何日かに一度、『瞬間移動』で戻って顔を見る予定だ。
ただこの予定も、計画どおりに作戦が進んだら、という前提条件がある。
昔の地球の貴族や大名も、忙しくてなかなか子供に会えなかったなんて聞くから、為政者というのは色々と大変なようだ。
「あなた、まずは慌てずに平定作業を進めましょう」
「そうだな」
従軍神官の仕事がすっかり板についたエリーゼに焦らないようにと諭され、俺は少し落ちついた。
「まあ、バウマイスター伯爵様と奥様はいいご夫婦なのですね」
「はい、私たちはもう出会ってから長いですから」
俺の隣に、名目上の代官にする予定の秋津洲さんがいる。
彼女はエリーゼに比べると治癒魔法使いとしての実力では劣るが、島一番の名族の出で、普段は領外からも来る患者たちの治療で活躍しており、北部で彼女の名声は不動のものとなっていた。
領民たちからも非常に好かれており、彼女は看板に相応しい人物というわけだ。
本人もとても優しい子で、エリーゼとも仲良さそうに話をしているのだが、どこか引っかかるんだよなぁ……。
「アキツシマさんにも、そのうちにいい旦那さんが現われますよ」
「そうでしょうか? でも、意外と近くにいるかもしれませんね」
「遠くの方かもしれませんよ」
「それはそれで面白いかもしれません」
エリーゼと秋津洲さん、一見ほのぼのと会話をしているように見えるのだが、やはりどこか引っかかるものがある。
「エリーゼ様、私たちは臣下となったのです。そのまま涼子と呼び捨てにしてください。ヴェンデリン様もです」
秋津洲さんは、エリーゼのみならず俺にも名前で呼んでくれと言った。
「ヴェンデリン様、家臣をさんつけはおかしいですから」
秋津洲さん……じゃなかった。
涼子の言い分は正しかった。
だが、どこかエリーゼの機嫌が悪いような……。
俺の呼び方も突然ヴェンデリン様になっており、でもあまり違和感は感じないな。
やはり、久々の巫女服は偉大である。
自分を名前で呼んでくれというのも、先にエリーゼに頼んで既成事実を作ってから、俺にも言った?
主君の奥さんが涼子って呼んでいるのに、俺が秋津洲さんって呼んだらおかしいので、間違ってはいないんだ。
でも、実は涼子って意外と強か?
「私はこの島の平和のため、ヴェンデリン様の下で一生懸命に働かせていただきます。残念ながら、お飾りの代官職と治癒魔法使いとしてですが……」
自分に統治者としての資質がないと自覚している涼子は残念そうであったが、それでも島一番の名族の出だ。
その血は、この島を纏めるのにとても役に立つ。
彼女がいることで反抗する者が少なくなるのなら、これはもう万々歳であろう。
できれば、これからも秋津洲家が代々この島の代官職を世襲し、それが多くの人たちに認められるよう、バウマイスター伯爵家と婚姻関係を結んで……あれ?
俺が涼子を見ると、彼女はとても可愛らしい笑顔を浮かべた。
エリーゼの方は、その笑顔がなんか怖い……。
これ以上深く考えるのはやめよう。
今は、北方平定の方が先だ。
「あなた、ちょっと失礼しますね」
行軍の合間に休憩に入ったのだが、いつもなら俺の側を離れないエリーゼが席を外した。
彼女は十分ほどで戻ってきたが、なんと普段の服装ではなく、涼子と同じく巫女服姿であった。
「似合うね、エリーゼ」
「ありがとうございます」
俺に褒められたエリーゼは、とても嬉しそうだ。
金髪巫女服も、これはこれでとてもいいな。
「でも、どうして?」
「涼子さんと同じです。この島では、女性の治癒魔法使いはこういう格好をするのが常識のようなので、郷に入れば郷に従うを実践したのです」
この島に治癒魔法使いは少なく、女性はさらに少ない。
巫女服姿なのは涼子だけなので、エリーゼは女性治癒魔法使いはみんな巫女服を着るものだと思っているようだ。
「そうなのか? 涼子」
「私の場合、秋津洲家は元々神官の出なので……」
この島には神道に似た宗教があり、秋津洲家はその宗教の神官の出だそうだ。
徐々にその力は落ちているが、代々優秀な治癒魔法使いを輩出しやすく、治療と神官としての仕事、昔から世俗的な権力よりも宗教的な権威を利用して君臨していたわけか。
「そのため、分家やそのまた分家の神官たちに利用される危険があり、この北方に領土を確保しました」
唯一の本家の人間である涼子を取り込み、本家を乗っ取る算段だったのか。
それにしても、雪は本当に忠臣だよな。
「お涼様が普段おられる場所は『御所』と呼び、本家の健在を誇示しているわけです」
普段涼子と雪が住んでいる御所は、名前は立派だが大きな屋敷程度でしかない。
だが、その近くにふんだんに地下水が湧く場所があり、そこを領地が水不足だった兼仲が狙ったわけか。
「第一段階の目的としては、伊達家が本拠を置く『米沢城』を確保し、そこを本拠地にして北部を掌握することです」
米沢って、確か伊達家の本拠地だったような……。
まさか、本拠地まで同じ地名とは思わなかった。
「それはいいけどよ。その前にまずはナンブじゃないのか?」
エルからすれば、まずは最初に戦いになる南部家の方が気になるようだ。
「雪さん、南部家とはどれくらいの力があるのですか?」
エルに同調したハルカも、雪に南部家の戦力を問い質した。
「そうですね……南部家で千人程度は動員可能かと思いますが、我々とは違って田植えや種まきが終わっていません。半分動員できれば大したものだと」
「ですが、主家の危機なのでは?」
「それはですね、ハルカさん」
南部家は大領主ではあるが、大半は領地は小領主の集合体であり、本家の領地はそこまで大きくない。
「農繁期に動員なんてかけたら、小領主たちはそっぽを向くでしょうね。無理強いすれば、他の大領主に裏切るなんて日常茶飯事ですから」
「……大変なのですね……」
ミズホ公爵領ではミズホ家の力が強く、ハルカはこの島の現状が信じられないようだ。
大領主が兵を挙げると、それに近隣の小領主たちが従う。
それで勢力が増えたように見えるが、他の大領主が兵を挙げると、今度はそちらに寝返って勢力図が塗り替わる。
これを延々と繰り返すわけだから、この島の戦乱は一向に終わらないわけだ。
そうなると、従わない小領主たちを殲滅するという手法を取りそうな気がするが、それはタブーなのだそうだ。
たまに領地を奪われる領主もいるが、彼らは一族は追放処分で終わってしまう。
逃げ延びた領主一族は、追放した領主に対抗している領主の世話になったり、中央の三好家などに仕えたりするらしい。
戦乱とはいえそこまで血みどろというわけではないが、これだと永遠にアキツシマ島の統一は難しいだろうなとは思う。
「そこで、膨大な魔力を持つお館様の存在が役に立つのです」
俺、導師、ブランタークさん、エリーゼ、ルイーゼ、カタリーナ、テレーゼ、リサ、アグネス、シンディ、ベッティ。
上級魔法使いがこれだけおり、それだけで過剰戦力といっても過言ではない。
イーナ、ヴィルマ、カチヤは中級クラスの魔力を持ち、この島では頂点に近い実力を持つ。
エルとハルカはオリハルコン刀を持ち、残念ながらこの島の鍛冶技術で作られた刀では歯が立たない。
雪によると、この島ではオリハルコンが採れないそうだ。
外部からも持ち込めておらず、それどころかミスリルすら存在しない。
鋼で作られた刀や槍が最高品質の武器であり、エルやハルカとまともに斬り合えないのが現実であった。
「でも、戦力比が圧倒的な方がいいな」
犠牲を少なく平定するには、強大な力で脅すしかない。
統治を安定化させるには、これは時間をかけないと駄目であろう。
それにしても、陛下はよくわかっている。
俺にこの島を押しつけてしまうのだから。
「ヴェル、あの内乱よりは楽だと思うよ」
「そうね、この島には古代魔法文明の遺産もないだろうから」
ルイーゼとイーナに励まされ、俺は行軍を続ける。
「ぷっ、ヴェル様」
不意にヴィルマが俺の腕をトントンと叩くので振り返ると、彼女の横にエリーゼに続き、巫女服に着替えた三名がいた。
カタリーナ、リサ、ベッティである。
「なぜ?」
「軍勢の中で、治癒魔法が使える者を区別するためです」
この中で一番の治癒魔法の使い手であるエリーゼが巫女服に着替えたので、うちの女性陣で治癒魔法を使える者は全員着替えたそうだ。
カタリーナは、水系統の治癒魔法で軽傷者には対応できる。
リサも、ブリザードの二つ名から水系統の治癒魔法が使えた。
ただし、カタリーナと同じく軽傷者にしか対応できないそうだ。
俺の弟子である三人娘の中では、ベッティが唯一水系統の治癒魔法が使えた。
ただし、二人と同じく軽症者にしか対応できなかった。
「ヴェル様、カタリーナが変」
「うーーーん」
カタリーナの巫女服姿が似合わない理由は簡単であった。
洋風そのものの縦ロールの髪型と、和風そのものの巫女服の相性が最悪だからだ。
リサとベッティは、涼子ほどではないがよく似合っているのだから。
「私、元のドレス姿に戻りたいですわ」
「従軍中なので、そこは我慢していただく方針でお願いします」
「仕方がありませんわね」
カタリーナは意外と真面目なので、雪から軍規の関係でと言われると、なにも言い返せなかった。
兵士たちからすれば、誰が治療してくれるかわかった方が安心であり、その数が多い我が軍の士気は高く保たれるわけだから。
「リサさんは、よく似合っていいですわね」
すっぴんのリサは落ち着いた感じなので、巫女服が似合っている。
ベッティはまだ未成年で幼いので、やはりとても可愛らしかった。
「負傷しても、これなら安心だな」
「そうだな」
「んだんだ」
従軍している兵士たちは、自軍にいる治癒魔法使いの多さに安心していた。
みんなが巫女服に着替えたのは、決してコスプレ趣味のせいというわけではないのだ。
「治癒魔法使いを用意できない領主の方が多いので、我々はもの凄く恵まれていると思います」
秋津洲家は元々治癒魔法使いの家系だからこれは例外で、大半の領主は一族に多くても二~三名くらいしか魔法使いがいないそうだ。
その中から治癒魔法使いはというと、数代で一人出れば御の字らしい。
「まず一番最初に当たる南部家は?」
「それでも、服属領主の当主や一族には魔法使いがいるので、十名ほどはいるかと。ただし、みんな初級です。治癒魔法使いは一人いれば上出来かと」
「そんなものなのか……」
最近、どこの名族でもなかなか魔法使いが出なくなって困っているらしい。
そのため、今では魔法使いの子供が産まれると問答無用で跡継ぎにされるケースが多いそうだ。
「血が濃い方が魔法使いが出やすいので親戚同士で婚姻を行うも、子供が産まれなかったり、産まれても体が弱くて長生きできなかったりしますね」
一つの島で一万年以上も暮らしてきたので、そろそろ遺伝子に限界がきているのであろう。
だが閉鎖的な島で生きてきたからこそ、逆に魔法使いの才能がなんとか遺伝してきたという現実もある。
地球のハスプブルク家のように、大分遺伝状態の悪化が進んでいるようだが……。
「ゆえに、外部から優秀な魔法使いの血が入ることに私は歓迎です」
「そうですね。昔は島一番の魔力の持ち主と謳われた、秋津洲家の当主である私がこの程度なのですから……」
涼子は、ここ数代で秋津洲家の当主が持つ魔力量が大幅に減ってしまったと俺に説明した。
「ですから、私とヴェンデリン様の子供が秋津洲家の当主となれば安泰ですね」
「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」
涼子の発言で、その場の時間が一瞬止まってしまった。
「あれ? おかしいことでしょうか? 秋津洲家の代官職がお飾りだとしても、秋津洲家の当主は代々優秀な治癒魔法使いの方が求心力があるではないですか」
涼子の言い分は正論だ。
正論だからこそ、俺は答えに窮した。
エリーゼたちがどんな顔をしているのか、見るのが怖い。
「細川家も、できればお館様の血が入っていた方がいいですね。なにより、私もお涼様も一族唯一の生き残りとなってしまいましたので」
さらに、雪も爆弾を投下した。
「ええと……そういうことはあとで決めるのが……「前方に敵軍あり!」」
ちょうどいいタイミングで、俺たちの前面に敵軍が姿を現した。
実は南部家にバレるよう行軍を続けていたのでこれは想定内であり、俺からしてもさらに嫁が増えるかもしれない話を先延ばしにできたので、心の中で南部君に拍手を送ったくらいだ。
「全軍、応戦準備!」
先陣と味方の軍勢を纏める兼仲が、素早く隊列を整えて敵軍と対峙した。
「どのくらいいるかな?」
「うーーーむ、総勢で六百というところである!」
ブランタークさんと導師は、まるで物見遊山のように南部軍を観察していた。
「攻撃してこないな」
「先に大将の物言いがあるのが、我々の決まりですので」
相手の隙を突き、奇襲をかけるような戦争は滅多に起こらないらしい。
互いに軍勢を出し、大将同士がそれぞれに要求などを言い、それから戦闘になるそうだ。
敵軍から三十歳ほどと思われる男性が馬に乗ったまま、数騎のお供を連れて姿を現した。
「我こそは、南部家の当主南部晴政である! 秋津洲の女当主よ! なにゆえ兵を挙げたのか?」
南部家の当主は晴政というらしい。
俺は歴史に詳しくないので、彼が戦国時代の人物と同名なのかわからなかった。
従っている連中は、服属している小領主のようだ。
全員が魔法使いだとわかる。
「ブランタークさん、これぞという強者はいませんね」
「そうだな。あのナンブとかいうのがもう少しで中級かなってところだ」
南部家は名族らしいが、当主の魔力が減少していく宿命から逃れられていなかった。
他の小領主たちは全員が初級クラスであり、小領主なのに中級の兼仲が、北部で一番の猛将だと評価されるわけだ。
「細川藤孝! 説明を求めるぞ!」
秋津洲家の実務は、細川家が見ている。
この事実は周知のようで、晴政は雪にどういうことかと大声で尋ねた。
「見てのとおりです。この島の外から、膨大な魔力を持つバウマイスター伯爵様がアキツシマ島の平定を決意なされ、我が主秋津洲高臣様がこの島全体の代官に任じられました。素直に降って従うのならよし。嫌ならば、バウマイスター伯爵様とその配下の方々の魔法で消し炭にされるのみ。信じるも信じないも、貴殿のご自由ですが」
「呆けたか! 小娘!」
随分と傲慢な言上であったが、元からこう言って晴政を挑発するのが作戦のうちであり、彼が激高したので上手く行ったな。
「その若造がバウマイスター伯爵とやらか。それほど凄い魔法使いだというのか?」
「あーーーあ、だそうですよ。ブランタークさん」
「この島の魔法使いの劣化は酷いな」
なにしろ、他の魔法使いの力量を見抜けないのだから。
兼仲は俺たちの強さに気がつき、恐怖に慄きながらも戦った。
晴政たちは、俺たちの魔力量にすら気がついていない。
確かに、この島の魔法使いの劣化は酷いと思う。
「試してみるか?」
「なにを試すのだ?」
「俺たちで決闘して、勝った方が総取りだ」
「総取りだと?」
「そうだ、お前が勝てば秋津洲領も七条領も南部家の領地になる。お前が負けたら、我々が南部領を併合する。わかりやすいだろう?」
「そのような条件、あとでお前らが負けてもやっぱり嫌だと言うかもしれないじゃないか」
「それはないな」
「ほう、なぜそう言い切れる」
「絶対に俺が勝つからだ。むしろ、お前が負けてやっぱりなしという危険の方が高いな」
「言わせておけば! ここに居るすべての兵たちが証人だ! いくぞ、バウマイスター伯爵とやら!」
思ったよりも、簡単に挑発に乗ってくれた。
あとは、俺が晴政を撃ち破るのみだ。
とは言っても、彼は所詮は初級。
師匠のような技巧派というわけでもなく、俺は軽く『魔法障壁』を張って彼の魔法を防いだ。
晴政は連続して『火球』を放って俺にぶつけようとするが、すべて簡単に弾かれてしまう。
「全然効かないな」
「舐めるな!」
晴政はもっと巨大な『火球』を作ってぶつけるが、やはり俺が張った『魔法障壁』には通用しない。
しかも、彼は初級でしかない。
すぐに魔力が尽きてしまった。
「降伏するか?」
「お前は、俺の攻撃を防いでいただけではないか!」
「つまり、攻撃を食らいたいと?」
「守るのは得意なようだが、果たして攻撃はどうかな?」
「じゃあ、攻撃してやる」
俺は直径三メートルほどの『火球』を作り、晴政の上空に浮かせた。
それを見た晴政は、絶句したままその場で動けなくなってしまう。
「念のために聞いておくけど、これをお前の体に落としてもいいか? 多分、骨も残らないと思うけど」
「……」
次第に、晴政の顔色が真っ青になっていく。
「南部家の家臣の人たち、及びに服属領主の方々。南部晴政殿につき合って滅びの美学を追及されるのなら、俺は止める気はないけどね。それで返答は?」
「我ら津軽家は降るぞ!」
「九戸家も降る!」
「北家も降ります」
「八戸家もだ!」
晴政を除く全員が、彼よりも先に降ってしまう。
そして最後の残された晴政もついに決断した。
「南部家も降ります……」
「それはよかった。じゃあ、この『火球』は邪魔だな」
俺が作った『火球』を不要とばかりに少し離れた場所にある岩山へとぶつけると、その岩山はドロドロに溶けてなくなってしまう。
それを見た晴政たちは、全員その場で腰を抜かした。
「悪辣よのぉ、ヴェンデリン」
「殺すよりはいいさ。魔族の件もあるから、なるべく早くに島を統一し、あとの統治で徐々に支配力を増す方法で行く」
「まあ、それがよかろう。どうせこんな特殊な事情のある島じゃ。王国も無茶は言うまい。我々に押しつけた罪悪感も多少はあるであろうから、あとで支援なり援助を集るのを忘れるでないぞ。名目は『将来王国が南方探索をするための後方拠点整備費』あたりかの。もっともな理由をつければ、役人は納得する生き物じゃからな」
圧倒的な力で脅かして、相手の気力を折ってしまう。
この作戦を俺に提示したのは、兼仲には難しい軍政面で協力してくれているテレーゼであった。
伊達に元フィリップ公爵ではないわけだ。
「わかったよ、テレーゼは頼りになるな」
「この程度の忠告、大したことでもあるまいて」
我がバウマイスター伯爵家、秋津洲家合同軍は、犠牲者ゼロで北部の有力領主南部家を降すことに成功するのであった。
これで大分領地が広がったな。
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