第247話 とある政変後の午後

「ヴェンデリン、やってくれたの」


「やってくれた? はて、なんのことです?」


「そのとぼけ方は、ヴェンデリンが好きではない貴族そのものだがの。その点についてはどう思う?」


「王国に戻るため、俺も足掻いた結果です。望郷の念の結果というやつかな?」


「まあいい。結果的に妾は、フィリップ公爵でなくなっただけのことじゃ」


「公爵位に未練はないと?」


「あると思うか? この妾に」




 ペーターにより、過激に極秘裏に行われた粛清劇によって、帝国はようやく一つに纏まった。

 俺たちも協力はしたが、実行には一切関わっていない。

 ペーターもそれを望まないことは明白であったから、ただ迎賓館で寝ていただけだ。

 その間にペーターは兵を動かし、テレーゼを強制引退に、対立を煽りクーデターを目論んだ兄二人と前皇后は病死という線でケリがついた。

 同じ日のほぼ同じ時刻に三人もの高貴な方々が病死した件については、あとで歴史学者が詳細に解説してくれるであろう。

 ただ一つ言えるのは、帝国を一つに纏めるために彼らは邪魔だった。

 だからペーターは、適切に処罰しただけのこと。

 将来、多くの犠牲を出さないように。

 こういう権力闘争で死者が三名しか出なかったのは幸運というべきか、本来は出てはいけないものなのかもしれないが、表向きはクーデター未遂など起こっていないというのが帝国の公式の見解であり、殺された者たちなどいないというわけだ。


「テレーゼ様は、独裁権を持っていたのでは?」


「エリーゼ、そんなものは意外と簡単に移ろうものよ」


 現在のテレーゼは、急遽ペーターから下賜された屋敷へと移っている。

 屋敷自体は、これまでの一連の反乱劇でお家断絶が確定したり、改易をされたり、ニュルンベルク公爵に組した貴族の帝都屋敷が余っていたのですぐに引っ越せたようだ。

 テレーゼは意外と落ち着いており、俺たちを客として出迎えるくらいの余裕はあった。

 兄たちが死んでも、表向きは悲しんだり、動揺していないようだ。


「遠征が仇となったようじゃな。兄たちに、領内の統治を任せる結果になったからの」


「あとは、テレーゼ様が皇帝になることに対する期待ですか?」


「それもある。人間の欲とはキリがないからの」


 テレーゼは軍を率いて長期間領地を離れており、そのせいで兄たちのコントロールが甘くなっていた。

 ついでに言うならば、別に彼らはテレーゼに逆らったわけではない。

 ただ彼女が、次期皇帝になるのを後押ししていただけだ。


「ペーター殿が政権を掌握した方法も問題になっての。妾が潔く身を引くなどと言ったら大騒ぎになるからの」


 彼女を支持する貴族や家臣たちが暴走して、本当の内乱になりかねない。

 テレーゼがペーターと対立したフリをしていたのには、そういう理由があったのだと語る。


「さてどうしようかと思った時に、まさにヴェンデリンがやってくれたの」


 まずは、テレーゼの有力支持者であったバーデン公爵公子を俺が引き抜いた。

 まだ行っていなかった襲爵の儀を、ペーター主催で行うように勧めたのだ。

 

「ヴェンデリン、そなたは力が落ちた妾たちが諦めると思うたのか?」


「いいえ。派閥は小さい方が先鋭化しますからね。自己保存本能に従って、勝手に生存競争を開始しますから」


「そなたは、難しいことを言うの。間違ってはおらぬし、その程度で兄たちは諦めなかったのも事実じゃ」


 組織や派閥は、小さい方が活動が活発になる。

 その結果、仲間割れや分裂が起こる可能性が高い。

 俺がバーデン公爵を引き抜いたのは、ペーターの権力基盤強化のためと、状況の変化を狙ってのことだ。


「兄たちは、力が減った分を前皇后とボンクラ貴族たちで補おうと考えたわけじゃ。数は力と考えたのであろう」


「殿下と対立している連中ですから、間違った選択肢ではないですね」


「表面上はな」


 内情は、これはという有能な者など一人もいないので、役に立たないどころか、逆にペーターに悟られる要因となってテレーゼ派は崩壊している。

 欲をかいた兄二人を抑えられなかったテレーゼも悪いが、彼女も今回の件では蚊帳の外に置かれていた。

 だからこそ、テレーゼは処刑もされず穏便に引退できたとも言える。

 

「皇帝の座か……。あれは麻薬に近いものがあるの。自分たちがなるわけでもないのに、兄たちはそれに酔って自滅した。まあよい、それが運命だったのであろう」


 別段皇帝になりたいわけでもなかったテレーゼは、失った皇帝候補の座に未練もないようだ。

 兄たちに関しても、昔揉めた関係だ。

 普通の兄妹のような関係とはいえず、兄たちが死んだのに悲しみもしないテレーゼを冷酷だと考えるのはおかしい。

 この世のすべての家族が、仲良しというわけではないのだから。


「帝国初の女性皇帝即位を阻止した、既得権益の権化バウマイスター伯爵ですか」


「ふん。若い指導者、生まれもわからぬ実力だけで成り上がった権力者、女性の身で皇帝候補にまでなった妾。後世の歴史家たちが喜んで題材にする人物の一人となろう。妾は負けたからこそ、彼らの興味を余計にそそるやもしれぬ」


 この世界にも判官贔屓のようなものがあるのかもしれないが、政治は能力がある者がやればいいのだ。

 日本でも、若いから、女性だからという理由でえらく持ち上げられ、実際にその地位に就くと、なにもできずに失敗する人も多かった。

 年寄りで男性がいいという類の話でもないが、ミスコンの投票でもあるまいし、選挙を人気投票にすると、いずれ選んだ本人たちにも不幸が襲うというわかりやすい例だったと思う。


「ペーター殿は普段はあんな感じではあるが、自分の義母すら平気で切った。妾には真似できぬ。ヴェンデリンの彼を見る目が正しかったというわけじゃの」


「さあ? それはどうなのでしょうか?」


 もしかすると、俺の人を見る目が思いっきり間違っている可能性も捨てきれなかった。

 のちに、ペーターが評判の悪い皇帝として歴史に名を残すかもしれないからだ。

 そんなことは、あとにならないとわからないのだから。

 それに、ペーターは皇后が嫌いだったので、切り捨てるのにそこまで悩んだとも思えない。


「どちらにしても、妾はこれで自由の身じゃ。名誉伯爵位のおかげで年金も出るし、アルフォンスが気を使って慰労金のようなものもくれた。私財もそれなりにあるからの。最低限の人員さえあれば屋敷は回るし、本当に気楽な生活じゃ」


 今のテレーゼは、執事一名、メイド二名、調理人一名、警備兵五名と、たったこれだけで生活を送っている。

 年金の額は法衣貴族に準じているからそんなに人を雇えないし、アルフォンスのためにフィリップ公爵家から人を連れ出すのを抑えたい。

 あとは、ペーターの猜疑心をかわそうという目的もあると思う。

 いくら彼がテレーゼを疑わないくても、思わぬところから讒訴される可能性もあるからだ。

 

「あの書類の山とも縁を切れたしの。面倒臭がりのアルフォンスが、どんな顔で処理をしているか見物ではあるの。もっとも、様子を見に行くとあいつは手伝えと平気で言いそうなので、触らぬ方がいいわけじゃが」


「さすがにそれはないでしょう」


「冗談じゃよ。さて、妾も暇になったからの。ヴェンデリン、どこかに連れて行ってくれぬか?」


 確かに、今のテレーゼは暇人であった。 

 政治に関われない、関わると余計な猜疑心を抱かれるので、わざと距離を置いて日々の暇潰しに余念がないわけだ。

 もう一方の俺も、そこまで忙しくなくなっていた。

 毎朝魔法の鍛錬をしてから、磁器作りの作業も午前中までで終わる。

 抱えている軍も、王国軍組と少数の傭兵たちで合計七千名まで減っていた。

 管理は、フィリップ、クリストフ、エルに任せてあるから、俺がすることはほとんどないのだ。

 サーカットの管理もすべて帝国の手に戻り、シュルツェ伯爵たちは王国軍組の管理や、ようやくまともな政権ができたので、王国との交渉を再開しようと忙しく働いていた。

 ちなみに、俺にはあまり政治的な仕事が回ってこなかった。

 なんでも、『バウマイスター伯爵様が、ずっとここを治めてくれればいいのに……』とサーカットの住民たちから言われることが多く、その危険性を察知したペーターが素早く手配してくれたようだ。

 他国の土地を治めるなど面倒だったので、俺には好都合であった。

 今は魔法の鍛錬と、磁器だけ作って資金稼ぎを行う生活というわけだ。


「あなた、少し出かけられてはいかがですか?」


「えっ? いいの?」


 今までは散々にテレーゼと揉めていたのに、なぜか今になってエリーゼは俺がテレーゼと出かけること許可してくれた。

 これは意外だ。

 

「まあ、たまにはよろしいでしょう」


「はあ……」


「というわけで正妻殿の許可は得た。出かけようではないか」


 俺はあっという間に庶民的な服装に着替えたテレーゼに腕を引かれながら、屋敷の外へと連れ出されて行く。


「えっ? エリーゼたちは?」


「今日は二人きりのデートじゃ。せいぜい楽しもうではないか」


 俺とテレーゼは、二人で帝都市街へと向かって移動を始めるのであった。





「えっ? テレーゼ様とヴェンデリンさんだけでデートですか?」


「よく許可したよね」


 ヴェンデリン様とテレーゼ様を送り出した私は、一人自分の屋敷へと戻りました。

 すると、ブランタークさんと共に魔法使いたちの鍛錬に行っていたカタリーナさんが戻って来ており、私の行動に驚いたようです。

 ルイーゼさんも、事情を聞いて驚きの声をあげます。


「二人きりで大丈夫なのかしら?」


「大丈夫ですよ、イーナさん。ペーター様が、あの二人を監視していないわけがありません。帝都の治安も回復してきていますから」


 私が一人で屋敷まで戻れたのも同じ理由です。

 もし私になにかがあれば、ペーター様の権威が大きく失墜するのですから。


「エリーゼ、私の心配ってそういうことじゃないんだけど……」


「テレーゼ様のことだから、一気にヴェルとの距離を縮めようとするはず。ちょうど身軽になったわけだし」


「ルイーゼさんの仰るとおりですわ。あの方は油断がなりません」


 イーナさんたちの懸念は理解できます。

 自由の身になったテレーゼ様が、ヴェンデリン様を口説こうとするに違いない。

 ですが、私はそれを認めてもいいと思っているのです。


「エリーゼ様、テレーゼ様はバイマイスター伯爵領に移住するの?」


「そうなると思います」


 ヴィルマさんは、私の考えていることに気がついたようです。


「そんなことがあり得るの?」


「ペーター様なら、そう考えるでしょうね」


 ペーター様は、テレーゼ様を権力の座から追い落としました。

 普通なら敗れたテレーゼ様は殺されても文句は言えないのですが、ペーター様の理性と後ろめたさが、彼女を穏便に引退させたのでしょう。

 ですが、名誉爵位持ちとはいえ内乱終了後にも帝国に残れば、余計なことを考える方々に利用されるかもしれません。

 もしそうなれば、ペーター様は最悪彼女を殺さなくてはいけなくなる。

 それが嫌なペーター様は、間違いなくテレーゼ様をヴェンデリン様に下げ渡すつもりでしょう。


「外国貴族であるヴェンデリン様への褒美に最適ですから」


「嫌な考えですけど、理には適っていますわね」


 血筋は皇家にも連なる元公爵閣下ですが、彼女が引退した経緯を考えると、外国貴族であるヴェンデリン様に下げ渡しても問題ないはずです。


「領地は最南端で、帝国もおいそれとは手が出せず、出されにくい。テレーゼ様単身で移住でしょうから、バウマイスター伯爵家の相続に口も出せないと」


「そういうわけです」


 イーナさんが考えているようなことを、ペーター様は考えたわけです。 

 

「でも、将来的には不安定要素にならない?」


「ルイーゼさん、貴族の血縁は可能性なのですよ」


「可能性?」


 そう、可能性なのです。

 帝国としては、安定した統治の邪魔になる血筋はいいテレーゼ様を送り出して、王国貴族に帝国貴族の血を混ぜようとしている。

 これが、数十年、数百年後にどう両国の政治に影響するのか。

 それを考えるのは、その時の当事者というわけです。

 血縁は、正逆どっちも可能性も秘めている。

 もっともこれは、お祖父様の受け売りですけど……。


「逆に考えますと、将来王国がテレーゼ様の子孫を押し立てて、帝国に攻め入る可能性もあります」


「凄い未来図だなぁ」


「ですが、どういう未来になったとしても、それはその時の人たちが考えればいいだけのこと。ただそれだけなのです」


「だから、エリーゼさんはテレーゼ様を受け入れると?」


「今のお立場は、決してよくはないですからね」


 テレーゼ様の厄介な点は、その気になれば十分に皇帝の資質を秘めている点かもしれません。

 本人はそれに気がついていないのか、完全に捨て去って自由に生きたいと願っているのか。

 ヴェンデリン様は彼女の資質を甘いと感じてペーター様を支援したのでしょうが、十分な補佐がつけば彼女も皇帝となることが可能です。

 少なくとも、アーカート十七世陛下よりはよほど有能な皇帝になるでしょう。


「その危険を避けるため、あえて身一つでヴェンデリンさんに嫁ぐのですか? エリーゼさんは、それで本当によろしいので?」


「以前ならば、意地でも阻止したのでしょうが……」


 テレーゼ様は、女性の身でフィリップ公爵閣下として苦労してきました。

 

『女の身で俺よりも治癒魔法が得意だと! 生意気な!』


 私でもこんなことを言われたりしているのに、テレーゼ様はもっと苦労しているはず。

 その重荷が消えて自由になった以上、ヴェンデリン様が受け入れる決断をしたら、私は彼女を受け入れてもいいと思うのです。


「あのしつこい誘惑は、重責によるストレスからってことかしら?」


「私、思いっ切り素の性格だと思うのですが……」


「私たちが変に血筋などで勘繰らなければ、許容範囲内かと」


「でも、ヴェルが『うん』と言うかな?」


 ルイーゼさんは、ヴェンデリン様がテレーゼ様を受け入れるかどうか疑問視しているようです。


「大丈夫、ヴェル様は結構テレーゼ様が好き」


「ヴィルマはそう思うんだ」


 実は、私もそう思っています。


「ヴェル様は、意外と年上が好き」


「そういえばそうだね……」


 ルイーゼさんが言葉に詰まりますが、それは私たちとヴェンデリンさんがあえて口に出さない『あの人』のことを言っているのでしょう。

 今はヴェンデリン様も会えない、いまだに続いている彼の義理のお姉さん、アマーリエさんのことを。


「ヴェルは、少々マザコンの気がある?」


「どうなのかしら? ヴェルって、妙に両親と距離感があるような気がするわ」


 イーナさんと同じく、それは私も感じました。

 仲が悪いわけではないのですが、お互いに距離を置いているというか。

 貴族の家ではそう珍しくもない話ですし、ヴェンデリン様は魔法使いの素質があったので、それが原因かもしれませんが。


「お母さんとは疎遠だけど、義理の姉さんたちとはみんな仲がいいですわね」


 アマーリエさんは除くとして、他の兄弟の奥さんたちとも仲がいいような。

 遊びに行った時には、お土産を持って楽しそうにお話をしていますから。


「それって、ヴェルが単純に女好き? 男好きじゃないからいいけどね。でも、そんなに年上好きに見える?」


「それは、私がいるからかもしれませんわね」


「カタリーナは関係ないんじゃないの?」


「ルイーゼさん、それはどういう意味で?」


「カタリーナはヴェルの一歳上だけど、見た目だけで包容力がないから」


 たまに、ヴェンデリン様にからかわれていますしね。


「ルイーゼさんがなにを仰るのかと思えば……。私は、年齢も経験も重ねた大人の女ではないですか」


「えーーー、そう?」


「ルイーゼさんはそう感じなくても、ヴェンデリンさんはそう思っているのです」


 ルイーゼさんとカタリーナさんが言い争っていますが、確かにカタリーナさんはたまに言動が幼くなるような……。


「包容力なら、エリーゼの方が上だって」


「ルイーゼさんは胸のことを言っているのですか? 私だって、そうエリーゼさんに劣るものではありませんわよ」


 カタリーナさんは私とそう変わらない胸の大きさですけど、それって包容力と関係あるのでしょうか?


「いや、胸の大きさイコール包容力って、その辺のオジさんじゃないんだから……」


「もの凄く不毛な論争ね……」


「イーナ、私も包容力ある?」


「えっ? 胸の大きさは関係ないんじゃないの?」


 二人の言い争いに、イーナさんは呆れているようです。

 あとヴィルマさんは、もう少し大人にならないと包容力が出ないような……。


「とにかく、ヴェンデリン様が年上好きとか、胸が大きい人が好きとかそういうことはどうでもいいのです。しばらくは、テレーゼ様とたまに遊んでいただければ」


「それはどうして?」


「ルイーゼさん、それはですね……」


 ヴェンデリン様の帝国内乱での功績は、すでに他の帝国貴族たちが追いつけないほど巨大なものとなりました。

 このまま真面目に働いてペーター様との緊張関係を作るよりも、あとは彼らに任せて遊んでいるように見せた方がいいのです。

 ペーター様からすれば、テレーゼ様を口説いて王国に連れて行こうとするヴェンデリン様は、とてもよい行いをする親友というわけですから。


「ヴェンデリン様はこう仰っていました。『狩るウサギがいなくなると、ウサギを追っていた犬は煮て食われる』と」


「それは疑い過ぎのような気もするけど、わかる気もするな。ヴェルって臆病な部分もあるから」


 ルイーゼさん、さすがはヴェンデリンさんと長いおつき合いですね。

 あの方の内面をよくご存じです。


「それはあるわね。でも、ただ単に遊んでいたいだけなのかも。テレーゼ様に関しては、あの人の押し次第だと思うわ」


「ヴェル様は、押しが強すぎる女性は苦手。上手くかわそうとする」


「あははっ! ヴィルマの言うとおりだ」


 それからは女性だけのお茶会となり、色々とお話をして久しぶりに休暇を楽しんだような気がします。

 ですが、ヴェンデリン様はテレーゼ様をどう思っているのでしょうか?

 私の予想は、そう外れていないと思いたいのですが。






「テレーゼ様、この辺の地理が全然わからないぞ」


「ヴェンデリン、様はいらぬ。妾もヴェンデリンも、今は帝国のお飾り伯爵なのじゃから」


「テレーゼ、俺の王国伯爵の方は実があるぞ」


「それは統治でご苦労なことじゃの」


「大丈夫、優秀な家宰がいるから」




 エリーゼと別れた俺とテレーゼは、二人だけで帝都市街を歩いていた。

 共に仕事もないので、とりとめのない話をしながらなにか楽しいものでもと、探しながら歩いていく。

 特に目的もなく、ただプラプラと歩いていく。 

 こんなことをしたのは、何年ぶりであろうか?


「ペーター殿は、色々とご苦労なことじゃの」


 視界に、こちらを監視する者たちが見える。

 護衛と監視を兼ねた、諜報部などから派遣された連中であろう。

 トップが前皇后の駄目兄貴から変わって、真面目に仕事をするようになったようだ。

 俺にやましい点などないし、今のテレーゼにはなんの力もない。

 彼女を利用しようとする勢力との接触がなければ、護衛をしてくれる便利な連中である。

 俺はすぐに彼らから視線を逸らし、テレーゼの顔を見た。


「ペーター殿には野心も能力もあるというわけか。もうじき内乱も終わるの」


「ニュルンベルク公爵はまだ粘りそうだけど」


「程度の問題じゃの。奴には、所詮は反乱者という世間の評価があり、今は間抜けな前皇帝ではなく、実力がある人物が帝都を抑えておる。この効果は大きい……。お茶でも飲むとするか」


 話の途中、テレーゼに促されて一軒の喫茶店に入った。

 そのお店の店内は、なぜか多くのカップルで賑わっている。

 すぐにウエィトレスが注文を取りにくるが、メニューの選定はテレーゼが素早くして俺は関与できなかった。


「解放軍のトップであったフィリップ公爵家は当主がアルフォンスとなり、あやつは皇帝などにはなりたくない口じゃ。彼がペーター殿に協力すれば、自然と他の貴族たちも協力する。これにて、ニュルンベルク公爵による勢力分断策は終わりじゃの」


 ニュルンベルク公爵は帝国南部に孤立した。

 勢力を伸ばしていた西、東部の南部地域諸侯も、一度ペーターが南下を始めれば簡単に裏切るであろう。

 小勢力とは、強い方に簡単に靡くものなのだから。


「中央の統制も進んでおるぞ。選帝侯家は数を減らすことが決まったはずじゃ」


 解放軍で活躍したフィリップ公爵家と、バーデン公爵家、新しく選帝侯になる予定のミズホ家。

 これ以外の選帝侯家は、すべて侯爵家に転落することになった。

 理由は沢山ある。

 まずは、いくら当主が人質に取られていたとはいえニュルンベルク公爵に組したこと。

 次に、解放軍との戦闘で家臣、兵員に致命的な損害を受けたこと。

 まだある。

 帝都解放後に当主の死亡が確認されたが、後継を巡って殺傷沙汰まで起こした家があったこと。

 まだまだある。

 大勢の家臣を失ったので領地を統治できず、現地で無用な混乱を巻き起こして周辺の諸侯に迷惑をかけたこと……いやまだ混乱は続いている。

 当然、降爵される各選帝侯家は苦情を言ったが、隠しようのない失態の数々に、そもそもノウハウのある家臣の大幅減少でこれまでの領地を維持できず、ペーターの決定に反抗しようにも兵力がない。

 逆らえば問答無用で討伐されるであろうから、彼らは渋々と受け入れるしかなかった。


「爵位は侯爵じゃが、ペーター殿は各旧選帝侯家に残った家臣に見合った領地しか与えておらぬ。中には子爵レベルにまで勢力が落ちた家もある」


「上手く、ニュルンベルク公爵の粛清を利用したような」


「結果的にはそうなったの。絶好のタイミングで帝国中央の力を増したわけじゃ。世間の人たちの恨みの大半はニュルンベルク公爵に向いておるからの。妾などは、ペーター殿がわざとそのように謀ったのではないかと勘ぐってしまいそうになる」


「まさか……」


「彼が立ち上がったタイミングに関しては、これ以上のものはないほど見事なものじゃ。近年、皇帝選挙になかなか勝てなかった皇家の者とは思えぬほどよ。この混乱期に、とんでもない男が現れたものよ」


 確かに、ペーターが蜂起したタイミングは絶妙だ。

 もっと早くに立ち上がればとも思うが、それだと失敗する可能性は高かった。

 それでも犠牲を減らすためにもっと早く決断して……と思わなくもないが、彼は帝国中枢に力がないまま内乱が終わるのを危険視していたのかもしれない。

 内乱で発生する犠牲者に目を瞑り、冷静に一番的確なタイミングで蜂起した。

 ペーター自身はつき合いやすい善性の人であるが、冷徹な権力者という二面性も持っており、義母、義伯父や怠慢な貴族たちには容赦しなかった。

 その二面性こそが、俺からすればペーターが皇帝に最適だと思った最大の理由かもしれない。

 

「テレーゼだと、自分が選帝侯だから他の選帝侯家に配慮し過ぎるかもね」


「それはあるの。明日は我が身だと考えるから、同格の選帝侯家に対してどうしても厳しい処分を避けようとしてしまう。その点ペーター殿は、皇家の当主でも次期当主でもない三男じゃ。案外、抵抗がないのかもな」


「後継ぎではないからか……」


 一瞬だけ、結果的に殺してしまった兄の顔が浮かぶ。

 もう少し上手くやっていれば、俺はクルトを殺さないで済んだのであろうか?

 実際に殺したわけではないが、結果的には殺してしまったも同じなのだから。

 前はそんなことを考えもしなかったのだが、帝国で人の死ばかりを見ているせいかもしれない。

 

「ペーターは兄たちを殺さないで済ませた分、俺よりはマシな人間かな?」


「ヴェンデリンの兄の話は帝国でも情報はあったがの。ペーター殿とて、父親と兄二人の無謀な出兵を止められなかったと考えれば同罪じゃ。それにの……」


「それに?」


「帝国の皇帝になろうとする者など、いくら元が善人でも、ロクデナシじゃからの。妾を可愛がってくれた先々帝も仰っていた。『皇帝に君臨した時点で、どんな聖人でもロクデナシとなる。あとは、いかにマシなロクデナシになるかだな』と」


「なるほどな」


 我が国の陛下も、同じようなことを考えているのであろうか?

 

「と、いつまでも難しい話を続けても意味があるまいて。注文した品もきたことだしの」


「テレーゼ、これって……」


 テーブルの上には、大きめのグラスに並々とジュースが注がれていた。

 色を見ると柑橘系の果汁だと思うが、問題はジュースの方ではない。

 グラスに二本、ストローらしき物体が差してあったのだ。


「(なんというベタな展開……)」


 カップルが、一つのグラスに二本のストローを差して一緒に飲む。

 近年の日本では、どの媒体でも滅多に見かけなくなったシーンである。

 しかし、このお店はそれがウリなようだ。

 席にはカップルばかりが座っており、一緒に顔を近づけながらストローを使ってジュースを飲んでいた。


「このストロー……」


「内乱の少し前くらいから流行しておってな。しかし、よく知っておったのストローを。熟練の職人しか作れないから高価なのじゃぞ」


 この世界にプラスチックなどないので、ストローは木製であった。

 さらに、この世界のストローにはジャバラの部分もあってちゃんと曲がる。

 その部分の材料には、魔物の素材が使われているようだ。

 木製部分と曲がる部分の繋ぎ合わせなども考えると、俺が考えている以上に高度な技術が使われているらしい。


「使い捨てじゃないんだ」


「一個百五十セント以上もするものを、使い捨てにできるわけがなかろう」


「高いな!」


 日本円にして約一万五千円のストローに、俺は思わず大声をあげてしまう。


「使ったら洗わないといけないからの。専用の洗浄ブラシと組でその値段じゃ。ある程度作業を分担しても、平均すれば一日に二個作れるかどうかじゃ。オマケに作れる職人も少ない。ストロー工房は、内乱中も在庫を溜めるのに大忙しだったらしい」


 使い捨ての量産品ではなく、繰り返し使うために別方向に進化したストローというわけか。

 よく見ると、熟練の加工技術が確認できる。


「さあ、妾と一緒にジュースを飲むのじゃ」


「テレーゼ。さも初めてのフリをして、このお店をちゃんと事前に調べていただろう?」


「さあての?」


 別にどちらでも構わないので、俺は自分の近くにあるストローに口をつける。

 ジュースはオレンジジュースに似た味で、よく冷えていて美味しかった。

 テレーゼの顔が近くにあるのでドキドキしてしまい、すぐにその冷たさがわからなくなってしまったけど。


「ヴェンデリン、今日はえらく素直じゃの。今までは妾を避けていたのに」


「それは勘違いだな。別に、俺はテレーゼが嫌いじゃない。むしろ魅力的な女性だと思っている。避けていたのは、フィリップ公爵で次期皇帝候補だったからだ」


 そう、彼女の立場が面倒だから避けていただけで、純粋な女性としての魅力がないわけではなかった。

 むしろ魅力的だからこそ、余計に無下にしていた点もあるのだから。


「お主、きゅきゅっ、急にどうしたのだ?」


 意外にも、テレーゼは顔を赤くしながら声を上ずらせていた。

 俺から魅力的だと言われて動揺したのかもしれない。


「どうもこうも。思ったままのことを言っただけだ」


「ヴェンデリン、それは妾を口説いておるのか?」


「さあ? どうなんだろうな? というか、今までは平気で種付けとか言っていたくせに」


「それは、妾がフィリップ公爵だったからこそ言えたことじゃ。考えてもみよ。その手の経験が皆無な妾がいきなりそんな大胆なことを言えると思うたのか? そういう立場だからこそ、大胆に自然に振舞えたという事情もあるというのに……」


 女性当主だからこそ、自分の夫や子供をどうするかと権力者の思考で考えることができ、恥ずかしいことも平気で言えた。

 だが今のテレーゼは、普通の二十歳の未婚女性に戻ってしまった。

 この世界では年増の入口らしいが、地球なら小娘扱いの年齢である。

 加えてその手の経験もないので、余計に恥ずかしくて堪らないようだ。

 さらに顔を赤くさせながら俯く姿が可愛かった。


「(思えば、俺の中身はテレーゼよりも年上なんだよな……)このあとは、下着でも選んであげようか?」


「夫でもない男性に下着選びなどさせられるか。もっと普通の場所に連れていけ」


「(随分と常識的になったな……)」


 喫茶店を出たあとは、普通に昼食をとり、いくつかのお店で買い物などをしてから屋敷に戻った。


「楽しかったの、ヴェンデリン」


「そうだな」


「妾は暇じゃからの。いつでも誘ってくれ」


「わかった。俺も楽しかったからな。うちの屋敷にも遠慮くなく遊びに来てくれ」


 俺は、テレーゼと別れて自分の屋敷に戻る。

 そしてその日の様子をエリーゼたちに話すと、彼女たちは驚きの表情を浮かべていた。


「普通に恥ずかしがるテレーゼ様? 新鮮な響きだなぁ」


 ルイーゼは、かなり失礼なことを言っているな。


「普通の未婚女性は、大体の方がそんな感じですけど」


 エリーゼから言わせると、豪胆な女性公爵様を演じないで済むようになったので、元に戻っただけでしょう、ということらしい。

 特に驚いたような顔は見せなかった。


「それで、普通にデートをしてきたと?」


「男女が二人で出かけると、みんなデートなのか?」


「えっ? デートじゃないの?」


 イーナが俺に驚愕の表情を浮かべる。

 そういえば、日本とこの世界との差を忘れていた。

 俺は知己の女性と遊びに出かけただけの感覚だったんだが、この世界では男女二人で遊びに出かければデートになる。

 エリーゼのように、傍にセバスチャンがいてもデートが成立するのが、この世界のやんごとなき身分の方々なのだから。


「周囲の人たちがデートだと言うのならデートなのかな? あっ、お土産を買ってきた」


「アッサリと流したわね。それでこれは?」


「恋人、夫婦専用のアイテム、ストローです」

 

 あの喫茶店で売っているお店を聞いて、テレーゼと一緒に買いに行ったのだ。

 ペアでないと意味がなく、値段も一組三百セントで高かったが、とてもよく売れるようで店内にはカップルの客が沢山いた。

 内乱に巻き込まれていなければ、仲のいい恋人同士や夫婦はデートが最優先なのであろう。

 殺伐としているよりも、平和でいいと思うけど。


「ストロー」


「使い方は実践した方が早いな」


 試しに大き目のコップにジュースを注ぎ、ストローを二本差した。


「あとは、二人でジュースを吸うと」


「そういうアイテムなのね。これを考えた人ってある意味凄いわね」


 イーナが、俺と顔を近づけながら感心したように言う。

 なんだかんだ言いつつも、実際に試すのがイーナの可愛い部分かもしれない。

 彼女の言うとおりで、ストローの考案者は色々と妄想力に長けた人物かもしれず、実利面でもストローの生産で稼いでいるのだから、間違いなく有能なのであろう。


「あの、私も」


「ボクも」


「ここは平等に」


「不公平はよくありませんわよ」


 結局、エリーゼたち全員とストローでジュースを飲む羽目になり、俺のお腹がチャポンと鳴った。

 不公平なのはよくないのだが、夕食前にお腹がいっぱいになってしまい、少し後悔したのは内緒だ。


「伯爵様、妙なことをしているな」


「帝都で流行している新製品を試していたんです」


「ふうん、今の若い者たちの間では不思議なものが流行しているんだな……」


 所用を終えて戻ってきたブランタークさんにもストローを二本渡すと、否定的なことを言いながらも素直に受け取った。

 もしかしたら、王国に戻ってから奥さんと使うのかもしれない。


「ただいま」


「ただいま戻りました」


「エル、ハルカ、いいものをあげるよ」


 仕事を終えて戻ってきたエルとハルカにも、二本のストローを渡してその使い方を教えた。


「おおっ! なんと素晴らしいアイテムなんだ!」


「帝都では、このようなものが流行しているのですね」


 エルもハルカも感動しつつ、急ぎコップに二本のストローを差して試そうとする。


「なるほど……。ジュースをストローで吸うと、ハルカさんの顔が近くに……近く……」


 ところが、急にエルが黙り込んでしまった。

 よく見ると、ハルカを押しのけてタケオミさんがストローを咥えていたからだ。

 シスコンとしては、エルと可愛い妹が顔を近づけてジュースを飲む光景が我慢できなかったのであろう。

 しかし、エルとタケオミさんが顔を突き合わせてジュースを飲む光景は大変にシュールであった。


「というか、まったく気配を感じなかったわね」


「この人、普通に達人だからね……」


 イーナとルイーゼは、まるで気配を感じさせずにハルカと入れ替わったタケオミさんの実力を再確認したようだ。

 確かに、俺もまったく気がつかなかった。

 才能の無駄遣いとも言えるけど……。


「ううっ……。ヴェル、全然楽しくない。ドキドキもしないし、むしろ殺意を覚える」


「ほほう、言うようになったな。エルヴィンよ」


 エルとタオオミさんは、互いに殺気をぶつけながらジュースをあっという間に飲み干してしまう。

 共に喉が渇いていたようで、あっという間にジュースはなくなってしまった。


「ヴェル、お代わり」


「またタケオミさんと?」


「違うよ! 俺もハルカさんとストローでジュースを飲むんだ!」


「無理じゃないか?」


 それから数度、コップにジュースを注いだのだが、必ずタケオミさんが邪魔をしてきたので、エルもタケオミさんも腹が膨れただけで終わってしまった。


「(タケオミさんがいないところでやればいいのに……。エルはバカなの?)」


「(それだと、負けた気がするんじゃないかな?)」


 と、ルイーゼの疑問に答えておく。

 そしてその日の夜。

 最後に屋敷に戻ってきた導師にも、念のためにストローを渡しておく。

 だが、彼の答えはある程度想定の範囲内であった。


「コップに入ったジュースなど、普通に飲み干せばいいのである」


 導師が奥さんや恋人とそんなことをしている光景が予想できないので、ある意味納得してしまう俺たちであった。


「そもそも、導師の飲むスピードが速すぎて、相手が全然飲めないと思う」


「それもあった!」


 ヴィルマの指摘に、大きく納得してしまう俺であった。





「ふーーーん。恋人同士の距離を縮めるアイテムねぇ……」



 翌朝、俺は皇宮のペーターを訪ねていた。

 特に用事があるわけでもないが、対外的にも俺と彼はとても仲がいいことをアピールしないといけない。

 仕事ばかりで大変らしいので、息抜きのために定期的に顔を見せてほしいと、エメラから頼まれていたのだ。

 こういう部分は、エメラの優しさなのかもしれない。

 彼女はこの前、臨時が取れて正式な筆頭魔導師に就任し、常にペーターの傍らから離れなかった。

 いまだ政情や治安が完全に回復しておらず、前皇后派や旧テレーゼ派のテロや暗殺の可能性もあったからだ。

 顔を出すと、そこにはペーター、エメラ、ランズベルク伯爵の三名しかいなかった。

 皇宮の管理者であるランズベルク伯爵は、皇宮の中で起こった出来事は絶対に周囲に漏らさない。

 ペーターの私的な相談を受けられる経験と頭脳も持つので、最近では常に傍に控えるようになっていた。


「それを奥さんたちと試したのかいい?」


「当然」


「それは羨ましいね。でも、こんなアイテムが流行していたんだ。早速エメラと……」


「お断りします」


「断るのが早いなぁ。でも、あとでちゃんと受け入れてくれるのがエメラのいいところ」


「バウマイスター伯爵様に、妙な誤解を与える言動はおやめ下さい」


 エメラはいつもの口調で否定するが、そういえばペーターには浮いた話題が一つもない。

 摂政の地位に就いているので、多くの貴族たちが自分の娘と結婚させたがっているはずだが、そんな噂をまったく聞かないのだ。

 となると、やはりエメラとはそういう関係なのであろうか?

 真相がわからない点は、さすがはペーターなのかもしれない。


「誰が考えたのかは知らないけど、凄いアイテムだね」


「売れに売れて大儲けらしいよ」


「借金王たる僕からすると、羨ましい限りだよ」


「いえいえ。新しい磁器で大儲けしている我が友ヴェンデリンに比べれば、ささやかな稼ぎですから」


「えっ? これってハルトが考案したの?」


 なんと、このストローを考案したのはランズベルク伯爵らしい。


「然り。私は愛の狩人ゆえ、恋人同士がどうすれば仲良くなるのかを常に考えているのです」


「そうなんだ」


「勿論、皇宮の管理も怠っておりませんとも」


 ランズベルク伯爵はペーターからの昇爵を断り、公的には政治に一切関わらず、皇宮の管理のみに人生を費やした。

 他には副業で、ストローの他にペアルック、デートマニュアル本、お勧めのデートスポット最新速報などの開発や編集なども行い、のちに帝都内で有数の資産家としても有名になるのであった。


「妾よりも、ペーター殿よりも、一番賢い生き方かもしれぬの」


 後日テレーゼが、ランズベルク伯爵に関してそう感想を漏らすのであったが。

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