第223話 なぜ敵の親玉は、決戦前にこちらと話したがるのか? そして、ヴェンデリン最大の危機(その2)

「久しいの、ニュルンベルク公爵」


「壮健でなによりだ、フィリップ公爵」


「誰かに殺されそうになったが、生憎と悪運が強いようでな。こうして今も現世に留まっておる」


「それはよかった。貴殿がいないと、世の中は色々と面白みに欠けるであろうからな」


「よう言うわ」


「いやいや、これは本音であるよ」




 両軍が睨みあう中間地点において、ニュルンベルク公爵とテレーゼは挨拶を交わしていた。

 互いに皮肉交じりの言葉の応酬となったが、双方は激高することもなく、笑顔で会話を続ける。

 俺は、この生まれついて大貴族である二人のやり取りを、小市民的な視線で観察していた。

 歴史ドラマなどでありそうな光景だなと思いながらだ。


「バーデン公爵公子殿も加わらないので?」


「いや、私はいい……」


 この前の敗戦で懲りたのか、バーデン公爵公子は解放軍のナンバー2として、黙々と仕事をする人になった。

 またなにかやらかせば、ネタ的には面白いのであろうが、実際に被害を受ける俺たちとからすれば堪ったものではない。

 今の大人しさが続いてくれることを、俺は祈るとしよう。


「久しいな、バーデン公爵公子殿」


「そうですね、ニュルンベルク公爵」


 バーデン公爵公子自身も、ニュルンベルク公爵と進んで関わるのが嫌なようだ。

 軽く、社交辞令に則った挨拶だけをしていた。

 父親のことを聞きたいのであろうが、彼が正直に教えてくれるとは思っていないようだ。

 質問等は一切していなかった。


「では、食事にでもするか」


「お腹が減ってきたからの」


「戦の前の腹ごしらえというわけさ」


 準備もあったので、夕食となっていた。

 ソビット大荒地に張られたテントの中にはテーブルや椅子がセットされ、生け花や掛け軸なども飾られている。

 畳敷きではないが、これはニュルンベルク公爵に配慮したのであろう。

 それぞれの席には、箸、スプーン、フォークなどが置かれ、全員が席に着くと、ミズホ人の給仕係が最初の皿を持ってくる。

 

「最初に、お互いの随伴を紹介しておこうかの」


「そうだな、テレーゼの言うとおりだ。おっと失礼……」


「マックス、妾たちはこの呼び方の方がいいのかもしれぬな」


「では、そのままにするか。俺の随伴は、従士長のザウケンに参謀兼魔法使いのターラントだ」


 ザウケンは、五十歳ほどに見える。

 右頬に走る傷が特徴の、よく鍛えられた体躯をしている男性だ。

 ターラントは三十歳ほどであろう。

 これといった特徴がなく、とにかく目立たない、陰の薄い男だ。

 中肉中背で、顔にも印象に残る部分がまったくない。

 どこの町にもいそうな普通の男性で、この会食が終わったらすぐに彼の顔を忘れてしまいそうだ。

 

「(……いくら目立たなくても……おかしい……)」

 

 こうも印象に残らなさすぎだと、なにか底の知れない恐怖を感じてしまう。

 ブランタークさんがいないので懸命に魔力を探るが、推定で、出会った頃のカタリーナよりも少し多いくらいか。

 上級魔法使いとはいえ十分に対処可能だとは思うが、あきらかにあの四兄弟よりも実力は上であろう。

 なによりも怖いのは、いくら観察をしてもこの男の情報が頭に入ってこないことであった。

 この存在感のなさは、魔法のせい?

 しかし、魔法を使っている気配はまったく感じなかった。


「ターラントは、バウマイスター伯爵に興味があるそうだ。それで連れて来た」


 ターラントは、無表情なまま俺に一礼した。

 決して無礼さは感じないが、相手に好印象を与えるものでもない。


「(なんだろう? この嫌な感じは……。そうか! この男には、なにもないんだ!)」


 そこに、かなりの魔力を持つ男性魔法使いがいるのに、なぜか俺になにも印象を与えない。

 俺は、そんな彼に不気味さを感じていた。

 果たして、テレーゼはターラントについてどのように感じたのであろうか?

 今は聞けないが、俺はもの凄く気になっていた。


「お腹が減ったの。始めるとするか」


 テレーゼの合図で、ミズホ服姿の若い男性兵士が給仕役となって食事が運ばれてくる。

 やはり内容は、懐石料理に似たものであった。

 テーブルの上には、和紙に似た紙に達筆な字でメニューが書かれている。


 先付:豆腐、アワビ、フキ、卯の花

 お椀:鯛の湯葉包み、焼き唐墨、舞茸

 差味:黒マグロ、イカ、平目、エビ、赤貝

 八寸:ハマグリ、水菜、アナゴ浸し、タケノコ山椒焼き、イワシ旨煮、子持昆布

 焼物:サワラ西京漬け、ふきのとう

 煮物:小かぶ鮟肝玉子茶巾、白菜、小芋

 酢の物:サヨリ、赤かぶ、木くらげ

 食事:マツタケご飯

 止椀:赤出汁

 香の物:白菜 柴漬け

 デザート:水羊羹、ナシ、お抹茶


「(見事なまでに懐石料理……)」


 商社員時代に一度だけ連れて行ってもらった高級懐石料理に、メニューがよく似ている。

 食材の季節感がバラバラだが、これは魔法の袋に入れておけば新鮮な状態で保てるからであろう。

 その点は日本よりも有利で、順番に出てくる料理はすべて美味しかった。

 反乱軍と解放軍のトップ同士の会食なので、ミズホ上級伯爵はいい料理人を揃えたのであろう。



「バウマイスター伯爵は、箸の使い方が上手いな」


「そうですか?」


 料理に集中して静かにしていようと思ったのに、早速ニュルンベルク公爵が声をかけてくる。

 ミズホ人でもない俺が箸を上手に使うので、それを不審に思ったのかもしれない。


「前世がミズホ人なんですよ、きっと」


 本当は、前世が、文化、風習がよく似た元日本人だからなんだけど、まさかそれをバカ正直に教えてあげるわけにもいかない。

 言ったところで、信じてもらえる可能性も少なかったけど。


「なるほど、そういう切り返しがあったか」


「たまたま覚えが早かっただけでしょうね。思わぬアクシデントで、ミズホ伯国に寄る機会がありましたから」


 要するに、『お前が、帝都でクーデターなんて起こすからだよ!』と言っているのに等しかった。

 直接言わず、胡乱な言い回しになるのは、俺も貴族だから仕方がない。 


「バウマイスター伯爵は、魔法と共にミズホ文化の習得も得意というわけか」


 やっぱり、ニュルンベルク公爵は俺の嫌味に反応なしか。


「他に、取柄はありませんが」


 ニュルンベルク公爵は、なぜか俺によく話しかけてくる。

 テレーゼと降伏するしないの条件交渉でも始めるのかと思えば、テレーゼはたまに世間話をして、あとは料理に集中していた。

 バーデン公爵公子も食事に夢中で、向こう側のザウケンは出される料理を持て余していた。

 素材を生かす味付けなので、生粋のニュルンベルク公爵領の人間には薄味に感じてしまうのであろう。

 ターラントは、まるで機械のように黙々と料理を口に入れていた。


「(これは、駆け引きなのかな?)」


「今さら、お互いに降伏しろなどと言うだけ無駄なのだ。だから、実際に会うと案外話すことがないな。ミズホ料理は、俺にはとても美味しく感じる。ザウケンは、北部と南部の味覚嗜好の差があるので勘弁していただこう」


 思ったよりも、ニュルンベルク公爵は常識人のようであった。

 ミズホ料理が苦手そうな部下のフォローを入れられるくらいなのだから。


「ただ、こういう差の積み重ねが各地方や領地の間での対立を生む。それを正すための決起である」


「そういうことは、時間が解決しませんかね?」


「俺はせっかちなのだ。この大陸は一つに纏まった方がいい」


 ニュルンベルク公爵は、堂々と自分がこの大陸を統一するのだと述べた。

 雄弁に語る様子は、とても様になっている。

 これに魅かれて、彼に味方している者も多いのであろう。

 何事でも、見た目がに優れている者は有利なのだ。


「壮大な夢ですね」


「バウマイスター伯爵が俺の腹心となれば、案外簡単に行くかもしれぬぞ」


 予想はしていたが、ニュルンベルク公爵は俺を引き抜こうとし、それを聞いたテレーゼの顔が一瞬歪んだのを、俺は見てしまう。


「マックスよ、その発言は重大な違反行為であるぞ」


「すまぬな、テレーゼ。つい欲しくなってな」


 テレーゼがニュルンベルク公爵の発言を窘めると、彼は素直に謝った。


「バウマイスター伯爵は、妾に必要な男なのでな」


「臣下ではなくて、男か。だが、上手くいっておらぬようだな」


「バウマイスター伯爵は少し恥ずかしがり屋なのじゃ。すぐに妾の元に来るはず」


「テレーゼがそう言うのであれば、そうかもしれないな。しかしながら、昔から諦めが悪い」


「マックスもであろう?」


「そうだな、俺は諦めが悪い」


 反乱を起こしてまで帝国皇帝の座を欲し、リンガイア大陸の統一を目指す男なので、テレーゼの言うとおり諦めは悪いと思われる。


「バウマイスター伯爵は、俺についてどう思う?」


「その軍事的才幹があれば、帝国軍の重鎮として安泰でしたのに」


 このくらいしか思いつかない。

 それと、『あんたのせいですで大量に犠牲者が出ているが、それについてどう思っているんだ?』というものもあったが、これは胸に仕舞った。

 無礼以上に、どうせまともな回答は得られまいと思ったからだ。


「君は若いのに、考え方が守勢の人だな」


「そうですか? 世の中の大半の人たちは、これまでどおり平穏に暮らしたいと願っているはずです。野心があるといっても、せいぜいで人臣位を極めるとか、商売で成功するとかでしょう?」


「俺は帝国の覇権を、のちにはこの大陸の統一を目指したい。最初にこのくらい言っておかないと、帝国の覇権を握るのも難しそうなのでな。帝国軍の重鎮として人臣位を極める。君は、天才だからそう考えられるのだ」


「天才? 俺が?」


 ニュルンベルク公爵は、俺を天才だと言いきった。

 魔法では頷ける点はあるが、他は普通だと思っているので実感はなかった。


「君は魔法の天才だから、俺の気持ちなど理解できまい。いいかね? 今の状況を変えようとするのにもっとも必要なものとはなにか? それは、諦めが悪いということだ」


「諦めですか?」


「天才は、苦労なくその社会で生きていける。だから社会の変革など望まない。俺は天才ではなく諦めが悪い。だから、反乱を起こしてまで帝国の覇権が欲しかった」


 皇帝選挙に勝とうと努力を続けたが、あと一歩で及ばなかった。

 だから、反乱を起こしてまで帝都を占領したのだと。

 ニュルンベルク公爵は、己の考えを語った。


「別に、これまでの犠牲者たちに謝ろうとは思わない。俺は背水の陣でこの戦いに臨んでいる。勝てば帝国の覇権が手に入り、負ければ愚かな反逆者として無様に死に、後世で愚か者だと批判されるだけだ」


「もう少し、妾のことを考えてほしかったの」


「俺が負ければ、テレーゼが女帝か。帝国の統治は面倒だからな」


「陛下は生きておるのか?」


「生かしてあるが、あの男は凡庸だ。反乱後に復権しても傀儡になるだけだな。テレーゼがなんとかするしかない」


 テレーゼとニュルンベルク公爵の視線がぶつかって、火花でも見えるかのようだ。

 この二人は、自分以外に次の皇帝に相応しいのは、お互いだと思っているのだから。


「どちらか勝った方が次の皇帝になる。素晴らしく簡単なことではないか」


「ふんっ! マックスは勝ちを確信しておろう。でなければ、こんな席など開かない」


「ああ。確信しているよ。テレーゼには、優れた魔法使いが複数ついているな。だが、うちのターラントもそう捨てたものではないよ」


 この会食に連れてくるだけあって、やはりターラントはニュルンベルク公爵期待の魔法使いのようだ。

 彼は一言も発しないで、丁寧に静かに料理を口に運んでいる。

 『美味しい』も『不味い』もない。 

 ただ黙々と料理を食べているので、俺もしばらく彼の存在を忘れていたほどだ。


「(それが逆におかしい……)」


 彼の存在感のなさに、俺は違和感しか感じない。

 ただ目立たないというレベルを逸脱して、なにか魔法的な才能が原因でこういう状態なのではないかと思うようになっていた。

 彼が魔法を使っている気配がない以上、それしか理由がない。


「ターラントは、少し特殊な魔法使いなのでな。バウマイスター伯爵。君がターラントに敗北する未来を俺は確信しているのだよ。死なないうちに降伏してくれれば、それ相応の待遇を約束しよう」


 それから三十分ほどの時間が経った。

 再び世間話をしながら、最後の抹茶まで楽しんだニュルンベルク公爵一行は帰途につく。

 俺たちも、テントなどの片づけをミズホ上級伯爵に任せて帰途に着くが、馬が使えないので徒歩となっていた。

 テレーゼが俺の横で頻繁に話しかけてくるので、居心地が悪いバーデン公爵公子は先に駆け足で陣地に戻っている。

 過去の経緯もあり、俺とは特に仲もよくないので助けてはくれなかった。


「ヴェンデリンよ。ターラントとかいう魔法使いが気になるのか?」


「明日までに対策を……。いや、あの男が使う魔法がわからない」


「夜戦でなくてよかったか」


「天候や時刻と、彼の特殊な才能は関係ないような……」


「ヴェンデリン、それは勘か?」


「ええ」


 開戦は翌朝早朝だと、先ほどニュルンベルク公爵は宣言した。

 別に彼が、正々堂々とした戦いを望むフェアな男だからではない。

 反乱軍でも、組織だって夜襲をかけられる部隊が極端に限られているからだ。

 野戦陣地城壁前に幾重にも張り巡らされている、馬避けの堀や柵を越えて夜襲をかけても無駄に犠牲が増えるだけなので、夜戦は意味がないと判断したのであろう。

 夜襲可能な部隊はすべてニュルンベルク公爵の手駒であり、下手に使い潰せないというのもあった。


「臨機応変に対応していくしかあるまいて。それよりも、大切なことがあるぞ」


「大切なことですか?」


 それがなんなのかわからず、俺は首を傾げてしまった。


「妾は、知己であるマックスと殺し合いをする不幸な女なのじゃぞ。ここは、男として慰めるのが当り前であろう?」


「そんなに親しかったのですか?」


「ファーストネームで呼び合っていたであろうが。子供の頃は、何度か一緒に遊んだこともある」


 年齢も近いし、幼馴染同士とでも言いたいのであろうか?

 その割には、最初はそんな素振りは見せなかったが。


「ここ数年、マックスがああいう感じだったのでな。妾も暇ではなく、疎遠になって当然であろう?」


「そうなのですか」


 本当なのかどうかわからず、俺は適当に相槌を打って誤魔化すことにした。

 テレーゼとニュルンベルク公爵。

 もしかして、昔は婚約者同士だったとか?

 それなら言うか。

 俺の同情を誘うために。


「そんなわけで、妾は不幸な女なのじゃ。慰めておくれ」


 そう言うやいなや、テレーゼは俺と腕を組んで顔を肩に載せてくる。

 それも、野戦陣地の正門前でだ。

 当然、城壁の上の兵士たちは驚愕の表情で俺たちを見ていた。


「テレーゼ殿……」


「決戦前に、総大将と参謀の仲のよさをアピールじゃ」


 だからと言って、これはないと思う。

 すぐさま殺気を感じたのでその方向を見ると、そこには冷たい表情を浮かべたエリーゼが立っていた。


「エリーゼが怒っている」


 滅多なことでは怒らないエリーゼであったが、ここ最近はよくテレーゼに対して怒っている。

 今日も無表情なので、愛想笑いを忘れるほど怒っている証拠であった。

 続けてエリーゼは、そっと横にいたルイーゼとヴィルマの肩に手を置いた。

 すると二人は、その驚異的な身体能力を生かして高さ五メートル以上はある城壁から飛び降り、そのまま俺の元に駆けつけた。


「おかえり、ヴェル」


「ヴェル様、料理美味しかった?」


 二人は、俺の肩からテレーゼを引き剥がして、その両脇を固めてしまう。


「ただいま。料理は、今度ミズホ伯国に行った時に、似た料理を出すお店を探そうか?」


「そうだね。うわぁ、色々とあるんだねぇ」


「高級そう」


 ルイーゼはヴィルマと一緒に、今日の料理メニューが記載された和紙を見ていた。


「のう。妾をいきなり弾いて、なにかないのか?」


「テレーゼ様、はしたないよ」


「別に。私たちはヴェル様を迎えに出ただけ」


 テレーゼの抗議に、二人は冷静に言い返した。

 こういうことがよくあるので、すでにテレーゼの家臣たちも『不敬だ!』などと騒がなくなっていたほどだ。

 彼らは、俺とテレーゼがくっつくことを望んでいないのだから。


「ヴェル、明日に備えて寝よう」


「さすがに今日は駄目でしょう」


「それはわかっている。ただ一緒に寝るだけ」


 みんなで、ベッドを繋いで普通に寝る。

 寝る前に話をしたりゲームをするのも楽しいし、それでテレーゼの夜這いが防げるので好都合だった。


「妾も混ぜて欲しいの」


「総大将は孤独が定め。独り寝で十分」


「ヴィルマ、そなた毒舌に磨きがかかったの……」


 三人の言い争いを聞きながら開かれた正門をとおるのだが、俺の護衛役であるタケオミさんはまた目を潤ませていた。

 またハルカの件であろう。 

 他に理由がないとも言えるけど。


「タケオミさん?」


「ううっ……」


 少し離れた場所では、俺が戻って来るのを待っていたエルとハルカが楽しそうに話をしているところだった。


「ミズホの高級料理かぁ。どのくらいするんだろう?」


「そうですね。お館様が行くようなお店ですと、一人前コースで五シュからです」


「美味しいのかな?」


「美味しいと評判ですね」


「なら、今度一緒に行こうか?」


「でも、お高いですよ」


「たまにはいいじゃないか。戦争だからあとでご褒美もないと。初デートくらいいいところに行こうよ」


「デート……初デート……。そうですね。楽しみにしています」


 エルからのデートの誘いに、ハルカは嬉しそうに答えた。


「ハルカぁーーー!」


 それに反比例して、シスコンのタケオミさんは獣のような絶叫をあげていた。

 それを聞いた兵士たちは、怖いものでも見たかのように後ずさっている。


「妹が、可愛いすぎるんだね」


「そうなんだろうけど、俺には妹がいないから理解できない……」


 前世では弟しかいなかったし、この世界で俺は末子であった。 

 他に父のご落胤がいる可能性も否定できなかったが、いたからと言って妹という保証もない。

 

「あなた、おかえりなさい」


「ただいま、エリーゼ」


 そのあとは、みんなで家に戻って普通に寝て明日に備えることにした。

 疲れを残さないようにしつつ、完全に魔力を回復させ、明日は全力を出さないといけない。

 なぜなら、やはり俺の脳裏にはあの不気味な魔法使いターラントの姿が浮かんでいたからだ。

 そして翌朝、ついに両軍の間で決戦が始まるのであった。

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