第128話 追い詰められたクルト(後編)

「人数が少ないな」


「みんな、仕事が忙しいと……」


「くっ!」




 なにを言っても無駄な親父は放置して、俺はエックハルトの家で行われる予定の集会に顔を出した。

 この集会は、他の村落の連中には秘密ということになっている。

 なぜなら、本来平等なはずである三つの村落の中で、本村落の連中にだけ事前に俺に対し意見を言う機会を与えている件が公になれば……。

 他二つの村落の住民たちの反発を呼んでしまうからだ。

 ただ、この会合の存在などとっくに連中には知られているはず。

 クラウスがいるからな!

 茶番ではあるが、俺はバウマイスター騎士爵家の家督を波乱なく継ぐため、与党を増やすこの会合をやめるわけにいかなかった。

 親父だって、この会合にはついこの前まで参加していたのだから。


「だからといって、少なすぎるではないか!」


 本来、この会合に出席できる本村落の人間は二十人ほど。

 広い農地を持つ豪農に、これまでバウマイスター騎士爵領内で市場と利益を独占してきた職人たち。

 遺憾ではあるが、あの裏切り者であるヘルマンが当主の従士長家と、数名の従士も出席が認められている。

 ところが、今日の会合に来た領民達は合計でたったの八名。

 前回の半分以下であり、一体どうしたというのか?


「皮革職人のディルクは? 服飾職人のインゴは? 木工職人のルーカスは?」


「それが……」


 参加者を見ると、これまで俺の次期当主就任を強く支持していた職人組で出席しているのは、鍛冶屋のエックハルトだけになっていた。

 理由を聞くと、エックハルトが渋々とその理由を説明し始める。


「しばらく休業するそうです……」


「はあ? 休業?」


「はい……」


 エックハルトの説明によると、彼らはヴェンデリンが開店させた商店に客を奪われて開店休業状態であったところ。

 奴の誘いに乗って、職人を辞めることを決意したらしい。

 確かに俺の目から見ても、この領内の職人たちの腕はお世辞にもいいとは言えない。

 だが素人が作るよりはマシだし、別に使えないわけでもない。

 第一、彼らは俺の有力な支持者でもあった。

 利権のための打算的な関係ではあったが、逆に利権さえ与えていれば支持してくれるので楽な存在なのだ。

 この考えは、俺ばかりでなく親父や祖父の代からまったく同じであった。

 それが、この大切な会合を欠席したばかり、職人を休業するというのだから、ただ驚くしかなかった。


「そんなバカな話があるか!」


「私もそうですが、彼らはここ三ヵ月間、ほぼ開店休業状態でして……」


 これもヴェンデリンが、ブライヒブルクや王都から仕入れた品を売るようになり、すっかり客足が途絶えてしまったからだ。

 質が良くて値段も少し安いのだから当然……いや! さすがにこれを看過するわけにはいかない!

 バウマイスター騎士爵領の産業を空洞化させたヴェンデリンの罪は、大変に重いのだから。


「挙句に、税収の大幅ダウン! ヴェンデリンこそ、このバウマイスター騎士爵領を衰退に追い込む不貞の輩である!」


「それがクルト様……」


 エックハルトが俺に反論だと?

 まあ、今は寛容の心も必要か……。


「私はただの鍛冶屋なので税収についてはよく知らないのですが、産業の空洞化については、将来改善されるそうで……あっ、これはあくまでも、ヴェンデリンが言っていたことですが……」


「それはどういうことだ? あいつは、またなにかやらかしたのか?」


「実は……」


 客と売り上げがほぼゼロになって困っているところに、ヴェンデリンは『子供を外に修行に出せばいい』と提案してきたらしい。


「このまま外の商品と競争しても勝ち目がない以上。それに対抗できる島を作れる職人たちが、領内で新規に工房を立ち上げるべきであろうという話です」


 ヴェンデリンはそのコネを使い、職人たちの子弟を王都やブライヒブルクの工房に見習いとして送り込んだのだそうだ。

 そして、将来修行先から独立を認められた子弟たちが、親たちが維持していた工房で新規に仕事を始める。

 そういう提案を持ち込み、大半の職人たちが受け入れたわけか。


「今現役の職人たちはどうするんだ?」


「稲作をして生活するそうです」


 年齢的に考えて、彼ら自身が今から修行をしても無意味とは言わないが、独立を許可されるまで修行するのは難しい。

 だが、まだ若い子弟なら修行の成果も出やすいはず。

 そこで彼らは、休業した工房の設備を維持しながら、開墾地で稲作をして生活の糧を得るそうだ。

 

「エックハルト。お前は……」


「私は……」


 職人たちをただ追い込むのではなく、逃げ道を用意してそこに誘導する。

 王都で中央の腐れ貴族たちに毒されたヴェンデリンらしい、反吐が出る策略であった。

 唯一、鍛冶屋のエックハルトだけはそれに参加していないようだが、前に奴はヴェンデリンと直に顔を合わせて揉めている。

 そのため、自分は許されないと思っているのであろう。

 そういう経緯があるので、こちらとしても裏切る心配がなくて使いやすい男だった。 


「豪農たちの参加が少ないのも、ヴェンデリンのせいかのか?」


「はい……」


 ヴェンデリンのせいというよりも、俺に対する抗議だろうな。

 欠席をしている豪農たちは、すでに豪農と呼べるような存在でなくなっている。

 本村落以外で農地の拡大と再配分が進み、むしろ規模が小さい農家に転落してしまったのだから。


「(連中の意図はわかっているさ……)」


 ヴェンデリンに鞍替えをし、彼に本村落の開墾やら区画整理をしてほしいのであろう。

 それが嫌なら、俺になんとかしろというプレッシャーを与えるべく、今日の会合をわざと欠席したわけだ。


「(ヴェンデリンが余計なことをするから! 領民共が付け上がる一方ではないか!)」


 他にも、子沢山の農家などでは、土地を相続できない子供たちの存在も問題になっている。

 遠征で成人男性の戦死者が大量に出たので、それを補うために生めよ増やせよと親父が奨励したのはよかったのだが、子供が多すぎて、もう十年もすると農地が足りなくなってしまうことがわかりきっていた。

 遠征後、ヴェンデリンが三歳になったくらいの頃から、親父は自ら陣頭に立って新しい農地を開墾した。

 働き手が減っている状態での開墾で評判は最悪であったが、それでも農地の拡大には成功している。

 麦の収穫量も増えて、商隊から得られる金や物資も増えていた。

 ところが、そこでまた一つ問題が発生する。

 未開地を除く領内で、もう開墾できる土地がなくなってしまったのだ。

 残っていても、ヴェンデリンが魔法でなんとかした土地と同じく、障害物だらけだったり、平坦にするのが困難な土地ばかり。

 さらに無理やり開墾しているせいで、畑の形が歪で農作業が面倒になっていた。

 配分の不手際で、新しい畑の農作業に行くのに徒歩一時間かかる領民もいるなどという、笑えない現実も発生していた。

 各村落の周辺の土地は、もうこれ以上開墾できない。

 未開地の開墾しやすい平原には狼や猪や熊が出没するので、護衛をつけないと、開墾はともかく畑の維持が困難であろう。

 だからこそ手を出さないでいたのに、ヴェンデリンは三ヵ月ほどでこれらの問題をすべて解決してしまった。


 魔法で、すべてを解決してしまったのだ。


「さて、このバウマイスター騎士爵領に大きな危機が訪れているわけだが……」


 ここに来ている参加者たちも、内心ではもうヴェンデリンに鞍替えをしようかと迷っているのは明白で、俺の話を興味なさ気に聞いていた。

 こいつらからすれば、むしろヴェンデリンにバウマイスター騎士爵領が乗っ取られた方が都合がいいのだから。


「(ヘルマンも来ないか……)」


 以前は、会合には必ず顔を出していたヘルマンも欠席している。

 もし来られても、今ではヴェンデリンの手先として動いているので、参加を認めるわけにはいかなかったのだが。

 それに以前から、ヘルマンは三つの村落の扱いに差をつけることに反対していた。

 このバウマイスター騎士爵領の現実が見えない青臭い意見でしかなかったが、本村落の若い世代にも賛同者がいて、えらく難儀したのを記憶している。


「あのう……クルト様」


「なんだ?」


「今回は、我々からは特には……」


 今までは散々本村落への優遇を求めてきたくせに、今となってはそれがヴェンデリンにバレては困るというわけか。

 どうせバレているのに愚かな連中だ。

 ヴェンデリンは、今までの我々の方針とは逆に本村落以外を優先している。

 その意図は明白で、俺の支持基盤への揺さぶりを狙ってのことであろう。

 そして俺が引き摺り降ろされた後には、本村落も平等に扱うはず。 

 そうすれば、本村落の連中は他村落と同じ扱いでもヴェンデリンに恩を感じるという寸法だ。


「(あのクソガキめ!)」


 それから十分ほどで、本村落の有志を集めた会合は終了する。

 安定した統治のためとはいえ、これまで優遇して意見を聞いてやっていたのに、ヴェンデリンの魔法を見た途端にもう裏切りの準備を始めている。

 やはり、元は卑しいスラムの住民であったからであろう。

 ムシャクシャするので、頭を冷やしに本屋敷裏の森へと歩いていく。  

 思えば、ここからヴェンデリンの出しゃばりは始まったのを思い出した。

 まだ六~七歳くらいの頃から一人で森に入り、そこで子供とは思えない成果を挙げていた。

 毎日ホロホロ鳥やウサギ、猪などを狩り、山ブドウ、自然薯、山菜、薪などを持ち帰ってくる。

 親父やお袋は大喜びであったが、俺からすればやはり出しゃばりとしか感じられなかった。


「あのクソガキが! あの時に死んでいればよかったのに!」


 あの時とは、数ヵ月前ヴェンデリンたちが古代地下遺跡を探索している最中、一週間ほど連絡不能になったことだ。

 その時、中央からルックナーとかいう貴族の使いがやって来て、いかにも思わせぶりな報告をするので、無駄にぬか喜びしてしまったのを思い出す。

 今でも、たまに思い出すと怒りが沸いてくるほどだ。


「ふんっ! あんな中央の貴族など当てにはならん!」


「そうでもないですよ」


「誰だ!」


 突然、後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには以前ルックナー男爵の命とやらで手紙を持参した男が立っていた。

 なんでも、ルックナー男爵からよく依頼を受ける冒険者との話であったが、顔色が悪くて陰気さを感じる不気味な男という印象は変わらないな。


「お久しぶりです」


「前は、わざわざ偽情報をすまなかったな。おかげで色々と大変なんだが、またお前を寄こすとは、中央の貴族も案外暇なんだな」


 どんな反応をするのかと思い、まずは嫌味を返してみることにした。

 しかし一切動揺せずか。


「申し訳ございません。ですが、私は依頼者の命令で手紙を届けただけですので」


「本当だかどうか、怪しいものだがな」


 この男、もしかしたら冒険者に見せかけたルックナー男爵の家臣かもしれない。

 信用できない人物に、わざわざこんな僻地まで手紙を届けさせるわけがないのだから。

 

「本当に私はフリーの冒険者ですよ。多少力量に自信があるのと、口が堅いのでこういう仕事で稼いでいる身なのです」


 王都からリーグ大山脈を超えたこの僻地まで一人で来るのだから、相当腕っ節と体力に自信があるのであろう。

  

「それで用事とは?」


「そうですね。お互いに時間は貴重ですからね」


 そう言うと、この陰気臭い冒険者は古ぼけた小さな木の箱を俺に差し出す。


「これは?」


「はい、バウマイスター男爵暗殺で役に立つ道具です」


「……」


「時間が惜しいと、共に言ったと思いますので話を進めます。簡単に言うと、ルックナー男爵はあなたにこれを売って恩を売り。あなたは、コレでバウマイスター男爵を暗殺して迫り来る危機を突破するわけです」


 俺の危機がどういうものかなど、今さら口にするまでもない。

 ヴェンデリンに領内を侵食され、今では俺を支持する領民たちは極小数になってしまった。

 みんな、ヴェンデリンの魔法と財力で切り崩されてしまったのだ。

 さらに今では、親父までもがヴェンデリンの肩を持っている。

 親父に言わせれば領内発展のためなのであろうが、俺にはわかっているさ。

 もう俺を切り捨て、次期当主にしないつもりなのだ。

 その理由はとても簡単で、親父はバウマイスター騎士爵家当主として領内の継続と繁栄に責任がある立場なので、そのために長男である俺を切り捨てることを厭わないのであろう。

 まさしく『断腸の思い』なのであろうが、結局切り捨てられるのは俺で、親父は『領内で混乱を招いた責任を取って引退する』といって悠々楽隠居に入るはずだ。


「(俺を切り捨てた功績で、ヴェンデリンから多額の仕送りでもしてもらって贅沢三昧か。いい気なものだな、親父)」


 トカゲだって尻尾を切り落せば痛いが、そんな痛みはすぐに忘れてしまう。

 だが、切り落された尻尾の方は堪らない。

 だからこそ俺は、起死回生の策を得てヴェンデリンを排除しないといけないのだ。


「お疑いですか?」


「ああ、お前らは胡散臭い」


「でしょうが、ここはお互いに追い込まれている仲間同士として協力し合いませんと」


「お互いに追い込まれている?」


「はい。ルックナー男爵も大ピンチなのです」


 陰気臭い冒険者は、俺にルックナー男爵の危機とやらを説明した。


「未開地の開発が、バウマイスター男爵主導で行われるとまずいのです」


 もうすでに王都では、一日でも早く俺が排除され、未開地の開発を始めり、そこに自分たちも入り込みたいという貴族たちがお祭り騒ぎなのだという。


「俺の立場は?」


「怒らないで聞いてくださいね。これまで中央との接触がなかった田舎領地の跡取りがどうなろうと、未開地開発の利権に比べればなにほどのこともない。まったく興味がないわけです」


「言ってくれるな……」


 広大な未開地に、ヴェンデリンが持つ莫大な額の資産。

 これが合わされば未開地は一気に開発が進むし、なによりヴェンデリンには子飼いの家臣が少ない。

 そこに、余っている親族や家臣の子弟たちを陪臣として送り込む。

 開発工事なども最初は外部に発注するので、各貴族たちは懇意にしている商会や業者などに受注させたい。

 開発に必要な資材などの売買に、工事で出稼ぎにやって来る人員の選定、

 貿易の利権も、莫大なものになるはずであった。

 

「貴族のみなさんは、とにかく必死なわけです」


 そんな貴族たちからすれば、俺はもう完全に死んだ人間扱いなのであろう。

 むしろ、まだ生きているのかと。

 

「依頼主も、利権確保に忙しいだろうな」


「それは無理です」


 ルックナー男爵がいくら足掻いても、彼とその派閥は未開地開発の利権に加われないそうだ。

 この未開地開発で主導的立場にあるのは、ブライヒレーダー辺境伯とエドガー軍務卿。

 そして、ルックナー男爵の兄にあたるルックナー財務卿だ。

 兄と仲が悪いルックナー男爵には、一セントとして金や利権が入ってこない仕組みになっていると、陰気臭い冒険者は説明した。


「元々実の兄であるルックナー財務卿と対立していた関係で、バウマイスター男爵とも疎遠だったのですが……」


 ヴェンデリンが遺跡探索で一週間ほど連絡が途絶えた際、奴が死亡たという噂を流し、それが原因で、ヴェンデリン本人からもその寄親であるブライヒレーダー辺境伯からも嫌われてしまったそうだ。


「こう言ってはなんだが、自業自得であろうよ」


 ルックナー男爵は、中央で会計監査長をしているそうだ。

 さぞかし、自分の頭脳に自信があるのであろう。

 しかし結果は、俺と同じくヴェンデリンの魔法と財力に押し流されそうになっている。

 会計監査長なのに、金の力に負けるとは皮肉な結果だな。


「俺を引き摺り降ろしたあとの未開地開発の利権であぶれて、派閥の維持も不可能になるとはな。ご愁傷様だな」


 俺自身、明日にはどうなるのかも不明であったが、ルックナー男爵も人に思わせぶりな手紙を送って翻弄した罰というやつであろう。

 この絶望的な状況下でも、少しだけ溜飲が下がる思いであった。


「お気持ちはわかりますが、ただ相手が下に落ちるのをバカにしていても、双方に未来はありません」


「そんなことはわかっている」


 お前などに言われなくても、それはわかっている。

 このままだと、間違いなく俺は廃嫡の後に教会送りであろう。

 以前、ヴェンデリンと決闘をした公爵のように、死ぬまで軟禁されてありもしない信仰の日々を送ることとなるはずだ。

 そんな生活は、死んでもゴメンであったが。


「つまりだ。起死回生の一手で、俺がその箱の中のものを使ってヴェンデリンを暗殺。その財産と未開地開発の権利を継ぐ。というわけだな?」


「はい、仰るとおりです」


「しかし、こんな小さな箱の中身で大丈夫か?」


「これは古代遺跡から出土した魔道具ですから、大きさは関係ないです」


 古代遺跡からの出土品とあって、形りは小さいがその効果は絶大なようだな。

 俺はこの手のものに詳しくないのでよくは知らないが、このまま座して滅ぶよりも、これに賭けた方がいいのかもしれない。


「やってみるさ」


 このままだと、来月の本村落の会合に誰も来なかった、などという笑えない未来すらあり得る。

 ならば、その元凶であるヴェンデリンを殺す魔道具とやらに賭けてみてもいいはずだ。


「それで、これはいくらなのだ?」


 季節の贈り物でもあるまいし、この手の品を貴族が貴族に無料で送るなどあり得ない。

 むしろ、無料などと言われると逆に怪しくなってしまう。


「料金は、将来の利権で優遇していただければとの、依頼主からのお話です」


「なるほど。一時的な金よりも、永続する利権が欲しいのか」


 それに、その方が派閥に参加している貴族たちに分配しやすいという理由もあるようだ。


「承知した。それでこの魔道具の使い方は?」


 それからしばらく、俺は陰気臭い冒険者からこの古い箱に入った魔道具の使い方について説明を受ける。

 確かに、これならヴェンデリンを暗殺可能かもしれない。


「見た目は、ただのオカリナにしか見えないがな」


「ですが、強力な魔道具です。これが呼び寄せるものによって、バウマイスター男爵の命日も近いでしょう」


 俺の頭の中で、哀れに殺されるヴェンデリンの姿が浮かぶ。

 奴が死ねば、その財産を使って未開地の開発が主導できる。

 中央のプライドと企みだけは一人前の貴族たちが、俺に利権を請うために頭を下げに来る未来が見えてきた。

 まるで、乞食のようだな。

 実に、楽しみな未来じゃないか。


「物が物なので、あまり人気のない場所で使ってください」


「三日後、ヴェンデリンが未開地のかなり奥まで視察に行く。その時に使うさ」


「わかりました。依頼主にはそのように伝えます」


 最後にそう言い残すと、陰気臭い冒険者は森の奥へと消えて行く。

 そして残された俺は、懸命に込み上げてくる笑いを押し殺しながら、手の中にある古ぼけたオカリナを見つめ続けるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る