この世界はつながっている

タマゴあたま

この世界はつながっている

「なあ、最近彼女とどんな感じ?」


 久しぶりに会う友人に俺は尋ねる。


「上々だよ。この間、彼女にネックレスをプレゼントしたんだ」


 こいつは俺と違って彼女がいる。


「だんだん冷めてくるものだと思ってたけど、そんなこともないみたいだな。羨ましいもんだよ。俺も彼女ほしいぜ」

「絶対に恋人はいた方が良いって。もう人生バラ色! 世界が変わるよ。それこそ180度ぐるっと!」


 そう言うこいつの瞳はキラキラと輝いていた。


「ところで、お前は彼女のどこに惚れたんだ?」

「断然顔だよ! 面食いだってのは君も知ってるだろ?」


 即答だった。そういえば、こういうやつだった。


「露骨だな。まあ、わからなくもないが。他にはないのか?」

「顔意外だと、性格かな。性格が合わなかったら長く続かないからな」

「なるほどな。ゆくゆくは一生添い遂げる相手かもしないからな」

「なんだよそれ。君って意外と硬派なんだね」


 驚きつつもコロコロと笑っている。


「ネガティブなだけだよ。振られるのが怖いからな。自分から告白したこともないし、もちろん告白されたこともない」

「いつか良い人が現れるって。別に良いと思うよ。受け身で」


 俺の愚痴にウザがることもなく聞いてくれる。


「でも、俺に彼女なんてできるかな? お前と違ってブスだし……」

「しっかりしろよ。いいか。君は自分がブスと言ったが、イケメンとかブスとかってのは見ている人が決めるんだ。それに、君が『自分はブスだ』と思っているとそれが表面に出てしまって、君の魅力が霞んでしまうよ。それに、君には笑顔でいて欲しいんだ。君の笑顔はとても素敵なんだからさ」


 そう言ってニカッと笑う。ああ、こいつは優しい人間だ。きっとこいつの彼女もこういうところに惚れたんだろう。彼女はきっと世界一の幸せ者だろう。


「さすが彼女持ちは違うな。彼女にもこんなこと言ってんのか?」


 照れくささを隠すために、俺はからかうように言う。


「彼女に似たようなことを言うことあるよ。でも、今の言葉は他でもない君に送った言葉だよ。親友である君には暗い顔より笑顔でいて欲しいし」

「親友ね。嬉しいこと言ってくれるな。ところで、男女の友情って成立すると思うか?」

「可能だと思うよ。友情は愛の一種だと思っているからね。男女の愛、同性愛、家族愛、師弟愛。様々な愛がこの世界にはあるんだ。だから、男女の友情は成立すると思うな」


「なんとなくで聞いてみたんだが、意外と深い」

「今まで色々あったからさ」


 そういうこいつの顔は少し切なげだった。


「寂しそうな顔するなよ。笑顔でいろよ。親友」

「うん。ありがとう。――あっ、そろそろ彼女との待ち合わせの時間だ。ありがとね。時間を潰すのに付き合ってくれて。お礼に、ここの代金おごるよ」

「よしなさい、そんなこと。今から彼女に会うんでしょ? 彼女におごってあげなさい」


 俺は母親のような口調でからかった。寂しさがあいつにばれないように。


「いい友人を持てて幸せだよ。じゃあ」


 そう言って、あいつは店を出て行った。





「会えてよかったよ。俺の初恋の人」

 そう呟きながら、俺は彼女を見送った。

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