第6話 苦手なもの
「みなさん、苦手なものってありますか? わたし、暗いところが苦手なんです。少し寂しくって」
リサちゃんがみんなに言う。
「私はおばけかなー。いないと思ってるんだけど、なんとなく不気味でさー。おばけ屋敷とかもムリ」
へー、マヤちゃんがおばけ苦手なの、ちょっと意外。
「私は人混みが苦手。気分が悪くなるし、この見た目のせいで迷子と間違えられるし。高校生なのに」
「人混みが苦手ってのは同感だな。人に酔うっていうか、変な気分になるんだよな。っていうか、迷子ってなんだよ、さすがアカリ」
ナギトくんがおもしろそうに言う。
「仕方ないでしょ。私だって好きで間違われてるわけじゃないんだから」
「ヒカリさんはどうですか?」
「ぼくは、クモが苦手かな。あと、ゴキブリも。動きがだめ。ゴキブリとか飛ぶし」
「ヒカリちゃん、男の子なのにクモだめなのー? 私はクモ平気だよー。益虫でしょ、クモって。害虫食べてくれるって聞いたことあるよ。ゴキブリは私もだめだけど」
おばけはだめで、クモは平気なんだ。
「ところで、えきちゅうって?」
「利益の“益”に“虫”で益虫。いい虫ってこと」
アカリちゃんが解説してくれた。
「ありがとう、アカリちゃん」
「どういたしまして」
「リサ、暗いとこがだめって、寝るときとかどうしてんの?」
「小さいライトをつけて寝てますよ。眩しすぎない程度に」
「へー、そっか。そういうのもアリか。暗いとこって私も苦手かな。おばけって暗いとこ好きそうだし、昔読んだ絵本とか、暗いとこでおばけ出てたし」
「そりゃ、真っ昼間におばけが出たら、おかしいだろ」
ナギトくんがツッコむ。
「ま、それもそうだね、あっ! ヒカリちゃん、ゴキブリ!」
「うわぁ! どこどこ!? ゴキブリやだー!」
「あはは、冗談だよ、冗談。ヒカリちゃん反応おもしろくてかわいいー」
「からかわないでよ! マヤちゃん!」
「ところで、ナギト、アンタ何やってんの?」
ナギトくんはさっきいた場所から二メートルくらい離れたところにいる。
「い、いやゴキブリが出たってお前が言ったから……」
「アンタ、もしかしてゴキブリ苦手なの? さっき言えばよかったのに。なんで隠してたの?」
「隠してたつもりはないが、なんかイメージと違くないか? 俺がゴキブリ苦手っての」
ナギトくんもゴキブリ苦手だったんだ。ちょっと親近感。
「別に。アンタ昔からヘタレでしょ。小学生のときに好きな子にラブレター渡せなくて、どうしようって私に——
「それを今言うな! やめろ!」
「えー、なにー? 恥ずかしいのー? だって事実じゃん。私に泣きながら相談してきたじゃん。てか、普通、女友達に相談する?」
「やめてくれ……昔のことは」
えー! 昔のナギトくんってそんなだったの!?
「ナギトさんにそんな一面があったんですねー。萌えですねー」
「ちょっと意外」
「確かにちょっとビックリ」
「でしょー?」
「ヒカリまで……」
ナギトくんはしおらしくなっている。
「それで結局そのお相手とはどうなったんですか?」
リサちゃんが興味津々だ。
「あー、あー、きこえない」
ナギトくんは耳を塞いで聞こえないふり。
「それがね、結局渡せてないらしいの。とんだヘタレでしょー」
「ますますギャップ萌えです」
「ねえ、もうそこらへんでやめないと、ナギトくんが魂抜けそうになってるよ」
ナギトくんは遠い目をしていた。
「おーい、ナギト、もどってこーい。もう話終わったから」
「ハッ! 悪夢は終わったのか?」
「はいはい、これくらいでやめといてあげる。(だいたい私の気持ちにも気づかなかったくせに、この鈍感野郎)」
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもない!!」
「なんだよ、怒鳴ったりして」
「あー、これは……」
「相当なヘタレね」
「なんだ、お前らまで」
「ねー、リサちゃん、アカリちゃん、どういうこと?」
アカリちゃんとリサちゃんはやさしく微笑むと、
「「ひみつ(です)」」
どういうことなんだろ……?
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