第5話僕の知らないキミ

たどり着いたのは、自転車置き場。昼休みは、ほとんど人気がない。キミは、胸に手を当て、フーッと一息吐いた。僕は校舎の隅から顔を出し、キミを見ていた。分からない。この状況も、今日のキミも。すると向こうから、誰かがやって来た。同じクラスではない。学年も違うかもしれない。背の高い、メガネをかけた真面目そうな人だ。二人は似た雰囲気を持っている。

キミは制服のスカートをギュッと握りながら、何か大切なことをその人に伝えようとしている。僕の知らないキミがそこにいた。その瞳は真っ直ぐに、その人を見つめている。これはよくある告白シーンってやつかもしれない。

「…何やってんだろう。」

僕は、その場から走り去った。分からない。なんでこんなに苦しいのか、分からないー。

昼休みが終わる5分前。キミがとなりに戻ってきた。目が赤い。5時間目は、数学なのに、キミの机には公民の教科書が出ている。

分からない。キミが今、どんな気持ちでいるのか。

分からない。僕はどうして、気になってしまうのか。

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