第二章

第1話 さぁ、ゲームの始まりですわ


アズラク殿下の突然の婚約事件が起こり、はや4年…


もちろんのことですがアズラク殿下の10歳の誕生日ではダンスのパートナーを務めさせていただきました…失敗はたぶんしてませんわ!



アズラク殿下はよくエリュトロン家の屋敷に来るようになりましたわ


今やあの頃の可愛い面影はなく、絶世のイケメンに育ちましたけど…



私は婚約の申し入れを受け取ったときはすぐ婚約破棄ができると思っていましたわ


でも何度も婚約解消をオブラートに包みながらお勧めしたのですけど、笑ってかわされて…



もう、ゲームの内容は変えれないのでしょうか…私は死…



いえ!なにを諦めてますの!



これはもうヒロインをちょっといじめて婚約破棄をいただくしかないですわ!!


私は死なずに路上ライブしてお金を稼ぐのよ!!




そして…今日はエスペル学園初登校の日


つまり、『チェリーラブ』のゲームが本格的に始まるということですわ



気合を入れなくてはいけませんわね!



よぉし!ヒロインを怪我させない程度にいじめ抜いて見せますわ!



「お嬢様、お仕度はできましたか?お時間でございますよ」


「できたわよ!」


「緊張しておりますか…?なんだかすごく気合いが入ってますけど」


「だ、大丈夫よ!緊張なんてしていませんわ…」


ゲームが始まると言うことも大事だけど、初登校ということにかなり緊張していますわ…


だって友達が欲しいんですもの!悪役令嬢がこんなこと言うのはどうかと思いますけど…


前世では羨望の眼差しで見られていたから、誰も気軽に話しかけてなんてくれませんでしたので



…あ、でも公爵家の人に気軽に話しかける人もいませんわよね…


気分がいっきにどんよりとした 




「お嬢様いってらっしゃいませ」


「…ええ、いってくるわ」


馬車に乗って見えてきたのはあのゲームと全く変わらないエスペル学園の外観だった


「あぁ、実際に見れるなんて…本当に綺麗な学校」




「お嬢様、着きましたよ」 

御者が馬車の扉を開く


「いってくるわ」


ドキドキする心臓を抑えて、エスペル学園の門扉をくぐった


きれいな桜が咲きほこり、花弁が風に吹かれてひらひらと舞い落ちる



あぁ憧れの…と余韻に浸っていたら



「ルージュ」


「アズラク殿下…おはようございます…あの、なぜこんなところで待っているのですか?」


あ、そういえばヒロインとはじめに出会うのはここだったかしら…たしかヒロインとアズラク殿下がぶつかるのよ


ヒロインとアズラク殿下は小さいときに街の噴水のところでぶつかったことがあって、それと全く同じ状況に既視感を覚えるのだけれど、まさかそのヒロインが小さいころにあった子だとは知らず…


あぁ!楽しみですわ!




「では、お先に…」

先に行ったフリをしてイベント見させていただきますわよ!


アズラク殿下と走ってきたヒロインがぶつかると言う初のイベント!


嬉しすぎて、緊張が吹っ飛びましたわ!


さぁ、どこで見ようかしら…



「ルージュ、どこ行くの?せっかく君を待っていたのに」


アズラク殿下がそっと手を引いて私の顔を覗き込む


ちょ、ちょっと、朝からこんなイケメンのオーラを受け入れる準備なんてしてませんわ!



「殿下、私のことは気になさらなくて大丈夫ですわよ。ただの婚約者ですし…」


そうですわ、どうぞヒロインと愛を育んでくださいませ



そうするとアズラク殿下はムッとして


「ルージュはただの婚約者じゃなくて、僕のたった一人の婚約者だよ」


パッと手を取りエスコートされながら学園の校舎中に連れられた



…あれ、今ヒロインのイベント消えたましたのですけど…



「あの方ってアズラク殿下では…」

「本当でしたのね、ルージュ様と婚約したっていう…」


あと、手を離してくださいませ!すごく注目されていますわ!


ニコニコと笑顔のアズラク殿下を眺めながらため息が出そうになったとき…



「きゃあ!」

っと可愛らしい声が聞こえてきた


そしてパッとアズラク殿下が動いた


これはゲームで何度も聞いたヒロインの声!!


アズラク殿下とぶつかるイベントが起きたのかしら?と前を見ると…



ヒロインが顔からスライディングしていました…


は?


アズラク殿下は…ぶつかることなく見事に避けていました



「大丈夫かい?」

そして手を差し出してあげるのかと思いきや


「ロイ、保健室に連れていってあげて」


パッとロイが現れてヒロインに手を差し出す



「じゃあ、ルージュ行こうか、遅れてしまうよ」

私の腰に手を回して歩き出した



え、待ってください!ヒロインのかわいい顔さえ見えれてないのですけど…



後ろをチラっと振り返るとヒロインと目があった


あ、かわい…と思った瞬間ゲーム内で見たこともないような顔で睨まれた


「へ…」


「どうしたのルージュ?」


「いえ、なにも…」


「そう?」



あれ、ヒロインってあんな顔でひと睨みますかしら?

いえ、私の勘違いですわよね!たぶん…




もちろん新入生代表挨拶はアズラク殿下でしたわ


ほんとうにイケメンとしか言いようがありません


あぁ、でもアズラク殿下を見ているとヒロインとのぶつかるイベント+保健室イベントがなくなってしまったことを思い出して…


涙が…




ワッと拍手がわいた


あ、新入生代表挨拶終わったのですわね


壇上に目を向けるとバチッとアズラク殿下と目があった


するとニッコリと笑いかけてきた


「あ…」


「きゃー今の見ました!私に微笑みかけてくださったのでは!」

「いえ、私ですわ!この角度といい!」

「あ、目が浄化されましたわ…」

まわりのお嬢様方が色めき立っている


私がちらりとそちらを見ると


「ちょっと、ルージュ様がいらっしゃるのに…」


「あ、も、申し訳ありません!」 

女の子達がパッと頭を下げた


そんなに私って怖いかしら…


「ぜんぜん気にしていませんわ」


「本当に申し訳なく…」


「本当に大丈夫ですって!」


あまりにも謝るので、少し口調がきつくなってしまった


ガタガタと女の子が震えて泣きそうな顔をしている


「ちょっと…」

どうしましょうと途方に暮れていたら


「そこの女の子たちは僕の話をそんなに聞きたくないですか?」


すると先程まで謝っていた女の子達が慌てて口を閉じた


ぱっと壇上を見ると


さわやかイケメンの上級生が壇上からこちらをみてクスッと笑った


シルバーのサラサラの髪にグレーの瞳


そして生徒会長…



たぶん攻略対象のグレイ・フェセクですわ…



「聞いてくれるようなので続けますね…」

眼鏡をかちゃりと上げて話を続けた

「先ほどアズラク殿下がお話しされたように、このエスペル学園では身分関係なくすべての生徒が平等にすばらしい授業が受けれるよう………」



生徒会長からの挨拶も終わり、いろんな先生方のお話を聞いて眠くなってきたところで…


教室移動の時間となりましたわ



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