第10話 死亡フラグの再開ですわ
アズラク殿下は私の前にひざまずき、どこから取り出したのか、大きなバラの花束を差し出した
「アズラク殿下、立ってください!」
「受け取ってくれるまで、立たないよ」
ちょっと悪戯っ子みたいに笑った
そんなの、私がアズラク殿下をひざまずかせている悪者になるではないですか!?
「そうではなくて!!」
「受け取ってくれないの?」
アズラク殿下はひざまずいたまま少し悲しそうな顔をした
親族しか来ていなくても、この会場には何十人もの人がいる
もしアズラク殿下の婚約を受け取らなかったら、なんで言われるかわからない…
エリュトロン家にも影響するかもしれないし…
それに…こんな可愛い子に捨てられた子犬みたいな顔をされたら断れないわ!!
…お受けする以外の選択肢がありませんわね
そっと花束に手を伸ばした
「ありがとうございます。お受けいたしますわ」
あぁ、これで一歩死に近づいたのかしら…ははは…
ワッとその場がわいて、拍手が起こった
どこからか現れたお父様が
「ルージュが決めたならそれでいい」
と不服そうに呟いた
お父様の登場が遅すぎるわ…
「ルージュ、嘘だろ!俺のルージュが…」
お兄様の悲鳴も聞こえてくる
「よかった。嬉しいよ。じゃあ僕がファーストダンスの相手だね」
婚約者だからと言って微笑んだ
「踊っていただけますか?」
「はい。よろこんで」
アズラク殿下を踏まないか心配で倒れそうですわ…
足踏んだからって刑罰に処されることはありませんよね
アズラク殿下に連れられて、ホールの中心に行く
そして演奏が始まった
「ねぇ…」
い、いま話しかけないでいただけますか…
足が絡まりそうで
「寂しいときは側にいてくれるんだよね?」
「は…え?」
私の反応が面白いのかくすくす笑った
「覚えてないかな?君が男の人に追いかけられていて…僕が引っ張って走って逃げたよね」
初めて街に行った時のことでしょうか
結構怖かったので忘れてはいませんが…
「え、覚えていますけど…でも…」
全く違う人でしたわ…顔も髪の色も瞳の色も
「あの時僕は魔法で顔も髪も全部変えてもらっていたからね」
「そう、なんですね。あの時の男の子はアズラク殿下でしたのね」
信じられないわ、だって普通の男の子だと思っていたのに…
「どうして私だと、ルージュ・エリュトロンだとわかったのですか?あの時私はフードをかぶっていましたし…」
「君が顔を上げたとき、ほんの少しだけフードがずれて真っ赤なきれいな瞳が見えたんだよ。赤い瞳の女の子はエリュトロン家にしかいないからね」
話しながらも踊れるのはアズラク殿下のリードがかなり上手いからだろう
「君は言ったよね、寂しいときは一緒にいるって」
「そ、れは、言いましたけど…」
「君に言われてから気づいたけど、僕はずっと寂しかったみたいだ…だから、ずっと一緒にいてくれるよね?君がいたらもう寂しくないと思うんだ」
約束だよ。
そう言って笑った天使のような顔が私には悪魔のように見えた…
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