第6話 お父様とお兄様が帰ってきましたわ


馬車から降りて、門を開き、扉を開ければお父様とお兄様がいた


「え?なんでい「「ルージュ!どこに行っていたんだ(い)!」」


ぎゅーっと二人に抱きしめられる



お兄様は私と同じブロンドヘアに真っ赤な瞳。頼れるお兄さんって感じ。

お父様はマロン色の髪に同じく真っ赤な瞳で、優しい雰囲気をまとっている。



とりあえず二人とも死ぬほどイケメンなのでそんな人達に抱きしめられて鼻血が出そうですわ!!



「今まで家に帰ればルージュがいたのに、今日はどこに行っていたんだい?心配するじゃないか」

「こんな暗い時間に帰ってくるなんて…危ないだろ」

二人ともひどく心配した様子で言った



「旦那様、ロート様、そのことなのですが…」

「テナ言わないで!!」

今日のことを言われたらもう一生街に行かせてもらえなくなるわ!


「いいえ、お嬢様今日のことは報告しなければなりません、私の不手際で起こってしまったことですので」

「テナは悪くありませんわ!私が勝手に離れてしまったのだから」

「目を少しでも話してしまった私の責任です」

「テナっ!!」


このやり取りを見ていたお父様が少し笑いながら、提案してきた

「まぁ、よくわからないが、ルージュが無事に帰ってきたんだからよかったじゃないか、とりあえずルージュもお腹がすいているだろうし夕食にしよう」


その言葉で周りの使用人たちが夕食の用意のために動き始めた




テーブルにお父様とお兄様と私が座る


ほんとうに久しぶりだわ…前一緒に食べたのは(ルージュの記憶だと)半年前だったかしら…

お父様はちょこちょこ帰っては来てくれるものの、仕事で部屋にこもったり、顔だけ出してまた戻ったりで、全然ゆっくりと会えなかった


お兄様も寮で過ごしているから、夏休みとかの長期休暇で1週間ぐらい帰ってくるだけだったから



前世で…いつもパパとママと夕食を食べていたことを思い出しますわ…



「ルージュどうしたんだい?黙ってしまって…」

お父様とお兄様が心配そうにこちらを見る



「あ、いえ…3人でゆっくり食べるのは久しぶりだと思いまして…」

うれしいんです。と二人に笑いかけた



「「ルージュ…」」


「なんてかわいいんだ。いつもかわいいけど今日は特にかわいいよ!」

「ああ、神様こんなかわいい妹を俺にくださってありがとうございます!」



「二人ともそれは言い過ぎですわ!!」

人の前でそんなこと…恥ずかしすぎます!



「でもほんとに今日は素直だね。つんつんしてるルージュもかわいいんだけどね」



あ、そういえばルージュはこんな素直に自分の感情を人に伝えたことはないんでしたわ…



「ところで、お父様はとお兄様はなぜ急に帰ってこられたんですか?普段は連絡をしてから戻ってきますのに…」


「実は…テナから『お嬢様がとても寂しがっていらっしゃるのでもう少し家に帰ってきていただけませんか』と頼まれてね。それで帰ってきたんだよ。私はルージュが寂しい思いをしているのは知っていたのに仕事をどうしても優先してしまっていて。申し訳なかった」



「お父様は国王のお仕事のお手伝いをしているんですもの。仕方がありませんわ!」


「そう、だから陛下に『もう少しほかの若手を使ってくれ、これじゃあ全然家に帰れない』と言ったらこれからはたくさん休暇を取れることになったよ。全部私に仕事を任せすぎたんだ。若手の教育にもなるしね」


「これからはたくさんルージュと一緒にいられるよ」

お父様が本当に嬉しそうにニコニコ笑った


えーーそんな感じでいいんでしょうか…相手は王様ですのに…



そんな私の気持ちが伝わったのか、


「私は陛下とエスペル学園からの友人だからね」


「あ、そうなんですね。だから…」

はぁーと私が納得していると



「俺は父さんから連絡が来て、ちょうど休みだったから戻ってこれたんだ」


「友達に誘われたり、生徒会の仕事をしていたりしたら、あまり帰れなくてルージュに寂しい思いをさせた。すまない」

お兄様まで謝りだした


「謝らないでくださいませ!ご学友関係は将来とても大事なのですわ。私のことなど気にしなくて大丈夫です」


「いや、俺もルージュ不足で困っていたところだ。癒しもなくストレスがたまるばかりで…もう少し帰ってくるようにする」



「お父様もお兄様もありがとうございます。先ほど色々言いましたが、正直に言うとたくさん家に帰ってきてくださるのはとても…うれしいです。ただ私のために無理はしないでほしいですわ」



「ああ」

「もちろんだよ」



「いままで一緒にいてあげられなかった分たくさん一緒にいよう」


「はい。楽しみです!」


部屋中がほっこりとした空気に包まれた





「それで…今日は私の愛しい娘に何があったのか説明してくれるかな?」

お父様のいつもより低い声が一瞬で部屋の空気を重くした


「はい。今日は「テナのせいじゃないんですわ。私が…」


「ルージュ、ルージュの話はあとで聞こう。まずはテナの話が聞きたい」

はいとしか言いようがない声で言われたので私は口を閉じた



「で、今日は?」


「はい、今日はお嬢様と街に出かけました。護衛は5人付けておりましたが様々な店を巡った後、帰り道でお嬢様が転移の魔方陣を踏んでしまい、お嬢様は一人で噴水の広場の近くに転移してしまいました。そのあとお嬢様の話によると、お嬢様と同じ年齢ぐらいの男の子が声をかけてくれたようで、それからは二人で私たちを探したようです。お嬢様を見失ってしまった時間は約二時間ぐらいです」



テナには心配されると思ったので大きな男に追いかけられたことは話さなかった。その判断は本当に正しかったですわ。お父様に話すことになるなんて想像していませんでしたし…



「「男の子…」」

お父様とお兄様の眉がピクリと動いた


「お嬢様を一人し怖い思いをさせ、また見知らぬ男と長時間ともにいさせてしまったこと申し訳ございません」


見知らぬ男って…言い方が…



「そうなんだね。本当にルージュが無事でよかった。今日のところは良しとしよう。次からはこのようなことがないようにさらに気を引き締めなさい」


「はい、旦那様。ありがとうございます。お嬢様も怖い思いをさせてしまって本当に申し訳ありません」

テナが私に深々と謝った



「お父様!私がわがままを言って街に連れて行ってもらったんです。それにぼーっとしてしまったのは私です。テナに落ち度はありませんわ」



「そうかもしれないね。でもルージュに何かあったら責任を取らなければならないのはテナや護衛の人たちなんだ。それを肝に銘じてこれからは自分の言動に責任をもちなさい」



「はい、お父様」


そうだわ。私は街に行きたいとばかり考えていて、迷惑をかけてしまったわ



「それでなんだがね…男の子とはどういうことかな、ルージュ」


「あの、私が迷子になっていたところを見つけて、一緒にテナたちを探してくれたんですわ」


「それはよかったね。お礼はしたのかい?」

まったくよくはないけどね…とお父様が笑顔でぼやいた


「それが、お礼をしようと思ったのですが、いなくなっていて。お礼できなかったのですわ」



「平民の子かい?」


「たぶん…髪と目が茶色かったので…」

どんな顔だったかしらと男の子の顔を思い浮かべようとしたのに、まるでもやがかかったように思い出すことができなかった



「あれ…」


「どうしたんだい?ルージュ」


「いえ、あの男の子の顔が思い出せなくて…」


「へぇ、まるで記憶操作の魔法でも使われたような感じだね」


「記憶操作…?」


「ああ、主に忘却だね。でも誰もが使えるわけじゃない。それだとこの世は犯罪だらけだよ。使えるのは高位の魔法士だけ。たとえば宮廷魔法士とかね」


「まぁ、ルージュぐらいの年齢の子が記憶操作の魔法を付与されているとは思えない。多分ルージュにとって取るに足らない子だったんだろうね」



え…


前世から記憶には自信がありましたのに…とがっかりしながら、いつもよりおいしく感じる夕食を食べた



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