第4話 街にお出かけですわ
今日は、テナにお願いして街に連れて行ってもらえることになりました!!
~昨夜~
「テナ、私明日街に行きたいのだけれど…「ダメです!」
間髪入れずに断られてしまいました。
「お嬢様、街の治安が悪いとかではなくて、人が行きかっている場所ではお嬢様を完全に守ることが難しくなります。まだお嬢様は小さいですし…」
「お嬢様はご存じないかもしれませんが、人攫いだってまれにあるんです」
「でも、一人で行くわけではないし、テナが一緒に来てくれたら大丈夫だと思うの」
さすがに一人で行こうとは思っておりません!道とか全然わからないですし…
でも『思い立ったが吉日』といいますか…
はやく金銭感覚を身に着けたいんですわ!
「私も護身術程度のものは身に着けておりますが、しょせんその程度です。もちろん命に代えてもお嬢様はお守りしますけど」
うむむむ…
「じゃあ護衛もつけて…それならいいかしら」
「そういう問題ではなくてですね!」
そんなの一生街に出れないじゃないの!
「お願いよ!テナ」
「そんなかわいい顔で見ても駄目です」
かわいい顔!?はしているつもりなかったですけど…
絶対説得して見せますわ!
「テナぁ…平民っぽく装いますから」
「お嬢様の赤い瞳はエリュトロン家特有のものです。すぐばれてしまいます。駄目です」
「顔を隠しながら行くわ」
「だめです」
というやり取りを何回も繰り返していたら、
「わかりました…」
テナがおれてくれましたわ!
「ただしフードをかぶって、護衛は5人付けます。絶対私のそばを離れないでくださいね」
という条件付きで…
「せめて護衛は二人!そんなに護衛がいたら貴族とばれてしまいますわ」
「貴族のお忍びだということはお嬢様が歩いているだけで分かってしまいます。貴族であることを隠すのは無理です。ですので、護衛だとばれない程度の距離で5人付けます。それがいやでしたら街には行きません」
「…はい」
ということで…しっかりフードをかぶって5人の護衛をつけております!!
「では、行きましょうかお嬢様」
「ええ」
これって何気に人生初の馬車ですわ。今までベンツしか乗ったことがありませんし
「今日はあまり豪華な馬車でいけませんがご容赦くださいね」
「全然いいのよ。私がお願いしたことだし」
とは言ったもののお尻が痛い…
思ったより馬車って揺れるのね、前世で車を考えた人はほんとに天才だわ…
まぁ、せっかく外に出たことですし、周りの景色に集中しましょう!
はぁ、あのヒロインと第一王子アズラクが出会った噴水はあるのかしら?あの広場は?あの店は?
そういえばあのお菓子屋さんも街にあるのでしたよね?あそこで第二王子ブラウがヒロインのために何を買うか悩むのですわ。それがかわいらいしくて…
おっと駄目ですわ。私は今日金銭感覚を身に着けるために街に行くのですわ
決してあの夢にまで見たスチルの場所に行きたいからではありませんわ!
「お嬢様、街が見えてきましたよ」
テナの声で外に目を向けると、ヨーロッパのようなおしゃれな街が見えてきていた
「まぁ、きれい」
街が見えてきてからすぐに目的の場所に到着
「お気をつけて降りてくださいね」
「わぁーー!」
人々が活発に行きかっていて、とても楽しそうですわ!
「テナ!行きましょう!」
初めに行ったのは
ケーキ屋さん!私、甘いものすごく好きなんですの
どれか買って帰ろうかしら?
「お嬢ちゃん、ケーキ好きなのかい?」
ぱっと顔を上げると店長と思われるおばさんがこちらを見てニコニコ笑っていた
「ええ、とっても好きよ!甘いもの全般好きだけれど、ケーキは特に好きよ」
「ここのケーキはどれもほんとにかわいいし、おいしそうね」
私が普段料理人に作ってもらっているケーキもおいしいのだけれど、こういう素朴なケーキも時々食べたくなるのよね
「そんなことをいってもらえるなんてうれしいね」
おまけしちゃうよと言って私が頼んだケーキにもう一つ違うケーキをつけてくれた
「いいんですの?申し訳ないわ」
「そんな子供が気を使っちゃいけないよ!」
「それにいいとこのお嬢ちゃんだろ?そんな子が買ってくれるなんてほんとにうれしいよ。またきてね」
貴族にも通用する味なのかと錯覚してしまうよと笑って、手を振ってくれた
ほかのお店にも行ったけれど、みんないい人ばかりで全然危険なんかないじゃない
「全然思っていたのとちがうわ」
みんなほんとにいい人ばかりだわ。話しているとあたたかくてほっこりする。貴族だからとへこへこしないし…
また行きたいなぁと馬車までの帰り道で思っていると
アクセサリー屋さんのネックレスが目に入った。
ヒロインも似たようなのつけていたわね…たしか街の噴水のところでヒロインとぶつかったアズール王子はそのヒロインが持っていたネックレスを魔法学校に入る時まで覚えていて…
「…様!お嬢様!早くこちらに」
人ごみに押されたテナがこちらに手を伸ばしているのが見えた瞬間ふっと自分の体が宙に浮いた気がした
「え?」
目をあけるとそこはさっきまで思い浮かべていた噴水のところだった
ちょっと待って!え?何が起きたんですの?
さっきまでテナと一緒に広場を歩いていたのに、どうしてこんなところに…
うつむいて下を向けば複雑な魔方陣が目に入ったので、慌てて飛び退いた
「え?これは何ですの?」
見たことのない模様で焦りが募る
「…とりあえず、テナを探さないと!」
ここはスチルで見たことのある場所だけど…うれしさよりも焦りでぜんぜん喜べない
「ここから広場までの帰り方なんてゲームにのっていなかったですし…」
「どうしましょう、きっとテナが探しているわ」
ゲームで見たといっても見知らぬ場所で一人きりはとても怖い
人が多すぎて、ルージュの身長ではテナを見つけれそうにないですし…
今日は家に帰れないかもしれないと最悪なことまで考えそうになってきた
帰りたい、テナのところにはやく戻りたい…
ルージュはまだ幼いからか、今までの私だったらこんなところで泣くような人ではなかったけれど、涙がこぼれて止まらなくなってきた。
「お嬢ちゃん、迷子かい?」
声をかけられて振り返れば、にやにやとした大きな男の人が立っていた
「一緒に探してあげよう、おいで」
手を引っ張られたので、焦って手を振り払って走った
あれはテナの言っていた人さらいではないかしら…
「おい、待て!」
人をかき分けて男が迫ってくる
ルージュは小さいから人をすり抜けることはうまくできても、疲れるのは早いし、遠い距離まで走れない
どうしたらいいの、怖い…
涙で視界がゆがんできたとき
どんっと誰かにぶつかった
ルージュは軽いから、ぶつかったはずみでこけてしまった
「大丈夫?」
その声に顔を上げると、ルージュと同じぐらいの歳の男の子が手を差し伸べていた
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