第2話 知らなかったわ
はい!おはようございます!
目がパッチリ覚めてすがすがしい気分でございますわ!!
ふふふ…
やっぱり起きても、ルージュの部屋のベッドでしたわ…
いや、これはもう受け入れなければならない事実とやらでしょうか
えーとやはりこういう時は今の状況を整理してから行動すべきだと思うのですよ
とゆーことで…
「紙、かみー…」
引き出しを開けまくって探してみる。
あーこれ?メモっぽいわね…
「あら、本」
机の2段目にメモらしきものと一緒に分厚い本みたいなものも見つけた。
パラパラとめくってみると、これがルージュの日記だと分かった。
――――――――
7月21日
6さいのたんじょうびです。ロートおにいさまがお花をくれました。おとうさまはこの日記をくれました。うれしかったです。毎日かきます。お母様もご本をくれた。
――――――――
6歳から書き始めたみたいですね…
え?可愛すぎませんか?あれ?悪役じゃなかったかしら…
あと、お母様をゲーム内で見たことありましたっけ…覚えていないだけかしら。
パラパラパラとめくって1年後の7歳ぐらいのところを読んでみた。
――――――――
1月2日
今日はとてもさむい日でした。お兄様は学校で、お父様はお仕事です。でもテナが一緒に庭でピクニックをしてくれたのでさみしくない。
――――――――
あ、思い出しましたわ。
確かルージュは3歳ぐらいの時にお母さまを亡くしていたんでしたわ。
どうして6歳の誕生日に「お母様がご本をくれた」なんて書いたのかしら。
…そういえばルージュはお茶会でも他の子がお母さんと一緒にいるのを見て、うらやましがっていたわ。
…ほんとはお母さまにも自分の誕生日を祝ってほしくて書いたのかしら…
それにお父様もお兄様も愛してくださっているのはわかっていても、忙しくて毎日会えなくてとてもさみしい思いをしていた。
さみしくてつらいけど誰にも言えなくて、だからテナや使用人たちわがままをたくさん言っていたのですわ。感情表現が下手で、うれしくても素直に言えなくて…
1月2日のピクニックだって、
テナが
『ルージュ様、今日はお外でお昼を召し上がりませんか?』
って言ってくれてうれしかったのに
『なんでわたしが外でご飯を食べなきゃならないの?わたしの白い肌が日に焼けたらどうするの?責任とれるのよね?』
って言ってしまって、ほんとうはピクニックせず、ずっと部屋にこもってただけだった。
嘘だらけの日記
ルージュの記憶がいっきに頭に流れてきた。
悲しかったこと、うれしかったこと、さみしかったこと…
テナや使用人の人たちに謝りたくても言えなくて、いつも後悔していた。
ルージュの感情と自分の感情が混ざって、涙がぽろぽろとこぼれはじめた。
止めようと思っても止まらなくて。
「どうしよう…」
コンコン
「お嬢様、起きてくださいませ……」
扉を開けたテナが唖然と私の顔を見た
そしてハッとしたように、私のそばに駆け付けた
「お嬢様!そんなに体調がお悪いのですか!?」
「テナ……」
「どうして泣いていらっしゃるのですか?」
テナが本当に心配そうに私の顔を覗き込んだ
「テナ…ごめんなさい…ずっと」
ぶわーと涙がさらに出て、
「うわぁぁぁぁん」
テナにぎゅっと抱き着いた。
「…お嬢様っ!?」
テナが慌てたように言う
「あのね…」
「ずっとさみしかったの…テナも使用人の人たちもほんとは大好きで…」
お母様がいなくて他の子たちがうらやましかったこと。
お父様とお兄様とあまり会えなくてさみしかったこと。
家のみんなが好きだったこと。
うれしくても素直に言えなかったこと。
たくさん、たくさん言いたいことがあった、ルージュが抱えていた気持ちの全部をテナに話した。
「お嬢様。大丈夫ですよ。」
テナがそっと私を抱きしめた。
「大丈夫です。お嬢様がさびしい思いをしているのは存じておりました。わたくしもずっとそのさみしさを埋められたらと思っていたのですが、うまくいかず。申し訳ありません。」
お嬢様…とテナもぽろぽろと涙を流した。
「ごめんなさい!たくさんわがまま言ったわ…家のみんなも許してくれるかしら?」
「もちろんですよ。家の使用人たちはいつもお嬢様のことを気にかけていたんですよ。お嬢様が寂しい思いをしていることはみんな存じておりましたから。」
そんなに自分を責めないでくださいとテナが涙ぐみながら言った
「ありがとう、テナ。でもやっぱりみんなに謝りたいわ…あの、みんなを集めてくれないかしら?」
「お嬢様が言うのなら、みなを集めてまいります。」
「本当にありがとう!」
テナが涙を拭いて、さっと頭を下げて部屋から出て行った
「…ルージュがこんなに寂しい思いをしていたなんて知らなかったわ。」
チェリーラブを死ぬほどやりこんでいたけれど、悪役令嬢ルージュの過去なんて出てこなかったから…
プライドが高くて、婚約者の王子への執着心が強い最低な女の子だと思っていたわ
ずっと主人公目線で見ていたから、悪役令嬢になってはじめてルージュの気持ちを理解できた
「お母さまがいなくて、お父様もお兄様もあまり家に帰ってこないのなら、婚約者である第一王子に執着するのもわかるかもしれないわ」
…だって結婚すれば、大好きな人とずっと一緒に居られて、寂しい思いをすることがないんですもの
婚約者になれば結婚はほぼ確実
私には彼しかいないって思いこんじゃっていたんでしょうね
そんな人を主人公に取られたら、あんな意地悪もしちゃうかもしれないわ
「苦しかったでしょうね…」
急にゲームの悪役令嬢だったルージュを抱きしめたくなった。
♦♦♦♦♦♦♦♦
テナが使用人のみんなを一階のホールに集めてくれた
みんな突然集められて困惑した顔をしていた
「あの、突然仕事中に集めてしまって申し訳ないわ」
「実は伝えたいことがあって…その…」
「ごめんなさい!」
みんなに深々と頭を下げた
「わたしはいままでずっと、みんなにわがままをいってきたわ。それにみんなを傷つけるようなこともたくさん言った。本当に申し訳なかったとおもっているわ。」
「これからはわがままを言ったりしないし、それに…」
言葉を続けようとしてみんなを見たら使用人みんながぼろぼろと泣いていた
「お嬢様、我々はお嬢様のことをわがままなどと思ったことはございませんよ。」
「小さいころから旦那様やロート様が家にお帰りになることが少なく、寂しがっていたのは存じておりました。使用人はみなどうにかお嬢様を元気づけられないかと悩んでおりました」
「謝る必要なんてございませんよ。お嬢様…」
みんなが口々に私に声をかけてくれた
「ありがとう。」
涙がポロリと私の頬を流れ落ちた
テナの前で泣いたからもう出ないと思っていたのに
「いままでたくさん気にかけてくれていたことに気が付かなかった。ほんとにありがとう。
みんながルージュに仕えてよかったと思えるような人になるわ」
ありがとうと再び言うと
みんなが笑顔で拍手をしてくれた
ねぇルージュ、あなたはこんな温かい人たちにずっと囲まれていたのよ
心の中でルージュが嬉しそうに笑ったように感じられた
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