悪役令嬢は偉大なのですわ
朧ゆめ
第一章
第1話 前世でなにかわるいことをしましたか?
「うわーーーーーっ……!」
思い出した。めっちゃ思い出しましたわ。
メイドのテナに髪をとかれていたときにすごい勢いで前世の記憶が流れ込んできた。
「今日も、麗しいですわ」
「香水のブランドはどちらのかしら」
「あのバックはもしかしてエムメスのではなくて?」
この秀麗学園では全身何かしらの高級ブランドで着飾っているお嬢様達の尊敬のまなざしを一身に受けるスーパーお嬢様がいる。
その名も 最上 香織
私だ。
秀麗学園とは100年もの歴史あるナンバーワンお嬢様学校で、そこの生徒は社長令嬢、財閥令嬢などとにかくこの国トップの金持ち令嬢が来る学校である。
私はそこで毎日おほほうふふをしていたわけだ。
子供の頃から習わされていたピアノ、ヴァイオリン、絵はだんとつに上手くて、学校の成績も優秀だった。
学校ではみんなの手本と言われていた。
上品で賢く芸術的な感性を持った美しいお嬢様。
だったけど、学校やレッスンが終わった後にすることは…乙女ゲーム!
私は乙女ゲームが大好きだったのですわ!
乙女ゲームが好きすぎて夜更かししてしまった次の日
「まぁ香織様すこし顔色が良くないのでは?」
「きっとお勉強をなさっていたのよ」
いえいえ乙女ゲームをしていたのですよ…
と内心では思いながらうふふふと笑って
「すこしお勉強を…」
と言っていた。
こんなふうに猫をかぶっていたため、乙女ゲームの話をするような友達はできず(まずこの学校に乙女ゲームという庶民の遊びをしている人がいるかもわからないけど)、親にも内緒で一人で黙々と乙女ゲームをしていたのだった。
うんうんそうだったそうだったと思い出しながら鏡の前でうなずいてる私をみて、テナがけげんそうな顔で私を眺めていた。
「それで…なんで私はここにいるんでしたっけ?」
えーとその日は「ちょっと歩いて帰りたいから」と言って迎えの車を断って1人で帰ったはず
「そのあと…」
どうだったかしら。
桜が満開の川沿いを歩いてて…
あっ…
「そうでしたわね。川に落ちたんでしたわ。」
男の子が川に流されていて、助けようとして川に入って自分も流されてしまったような…
秀麗学院にはまずまず体育のような授業はなかったから
川に流されたとき「わたしって泳げなかったのね」ってはじめて自覚したんだわ…
息ができなくて苦しくて…必死に上に手を伸ばしたとき、誰かが手をつかんでくれたような気がする。
何も考えずに川に飛び込んだのは、わたしにしては愚かな行動だったわ…
前の日の夜からその日の朝まで乙女ゲームをしていたから、正常な判断ができなかったんだとおもうけれど
そう!そのわたしがはまっていた乙女ゲームがすっごくよくて!!
『cherry blossom love romanse ―彼らと秘密の恋を―』
略して『チェリーラブ』
その乙女ゲームは桜の花びらに降られながらヒロインがエスペル学園という魔法学校の門を開くところから始まる。
ヒロインは平民でとても賢かったが、魔法は使えなかった。
小さいころに教会ですごく膨大な魔力を持っていると判断されたが、10才になっても魔法を発動することができず、念のためということでこのエスペル学園に特待生として入学させられる。
通常魔力は貴族にしか備わっておらず、平民で魔力を持っていた例は今までなかった。
また、魔力を持つものは最低でも10才までには魔法が使えるようになるのだ。
学園に入ったヒロインは平民というだけでいじめの対象となり、さらに魔力は持っているが使うことができないということが貴族の令嬢たちにばれて、さらにいじめが過激になっていくのだが、
そんな状況でもヒロインは勉強で優秀な成績を取り続け、魔法を使う練習をあきらめずに続ける。
その様子を見た攻略相手達は彼女に興味を持ちはじめ、彼女をいじめから守ったり、魔法の使いかたを教えたりなどしてヒロインと仲良くなっていくのだ。
そしてついにヒロインの努力がみのり、魔法を使えるようになり攻略相手と幸せになるというゲームだ。
私は特に推しの攻略相手とかはいなかったが、ヒロインがすっごく大好きだった。
いじめられても凛と前を向き続けるヒロインは最高にかっこよくて、ハッピーエンドの時の最後の卒業パーティーで攻略者に婚約されるシーンは美しく、いつ思い出してもにやにやしてしまうものだった。
あっそうでしたわ!断罪シーンもめっちゃよかったんですのよ!
えーっと、第一王子の婚約者だった悪役令嬢のルージュ・エリュトロンがその第一王子にみんなの前で婚約破棄を宣言されるのですわ!それから…
ふと、鏡に映った顔を見る
そうそうこんな感じで目は真っ赤で大きくて、髪はきれいなブロンド。
猫目だからかちょっといじわるそうに見えるのよね…
乙女ゲームで見たルージュよりも幼い感じがするけど、8歳ぐらいかしら?
「って、えーーーーーーーー!」
なんで!わたしがまさかの悪役令嬢のルージュ・エリュトロン!
「え、ちょっとまってくださる!」
「はい?お嬢様いかがなさいましたか?」
テナが心配そうにわたしを見た
「さきほどから何か悩んでいるように見受けられますが…」
「テナ。もしかしてわたしは悪役令嬢ルージュ・エリュトロンかしら?」
「あくやくれいじょうは存じ上げませんが、れっきとしたエリュトロン家の長女ルージュ様に間違いありませんが…」
「そうよね!えぇ、知っているわ!」
「…さようですか。その、どうかいたしましたか?」
「大丈夫。なんでもないわ。確認したかっただけよ…」
いや、まったく大丈夫じゃありませんわ!!これはまさかのラノベによくある転生ですの⁈
いや、なんで悪役令嬢?転生するならヒロインでしょう!!
え?わたし前世で何か悪いことしたかしら?
ヒロイン好きすぎるのに将来いじめなければならないなんて…
いや、夢かもしれないわ!そうよ!きっと目が覚めたら、病院のベッドで寝てるやつね!!
「テナ、わたしちょっと体調が悪いみたいで…」
と言って、ベッドに潜り込んだ。
テナが心配する声が聞こえたが、わたしはそのまま眠りに落ちた。
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