第14話
そうしているうちにも日は過ぎて、明日はまりの十七の誕生日という日になりました。でも、まりは相変わらず眠ったままでした。
その晩、おたよは夢を見ました。枕元に誰かが立って、おたよを呼んでいるのです。それは、白い着物を着た、ひげも髪の毛もまっ白なおじいさんでした。おじいさんは言いました。
「おたよ、わしを見忘れたか。わしは神社の神じゃ。わしの宝物をよく預かっていてくれたな。礼を言うぞ。さあ、返してもらおう。」
神様はそう言うと消えてしまいました。おたよは、はっと目をさましました。そして、まりを見ました。少しも変わった様子はないようでした。でもしばらくすると、まりの体がかすかに光り始めたのに気づきました。
はじめのうちは、ぽつんと胸のあたりに、明るさもほとんどわからないくらいでしたが、だんだんと広がるにつれて明るくなっていきました。そして、まりの体全体が光り始めました。だんだん明るくなってゆき、おしまいには見ていられないほどに輝きました。おたよは、あわてて吾平を起こしました。吾平もこの様子を見て、おどろきのあまり何も言えず、ただ、じっと見ているばかりでした。
だんだんと光はうすれてゆきました。そして光がすっかり消えてしまうと、そこには美しい娘が横たわっていました。まっ白な肌をして、すらっとした体つきの、美しい娘でした。吾平もおたよも、おどろきのあまり声も出ません。すると娘は目をさまして言いました。
「おとうさん、おかあさん。そんな顔をしてどうしたの。」
おたよは言いました。
「おまえは本当にまりかい。」
娘はふしぎそうに言いました。
「おかあさん、どうしたの。私がわからないの。」
そう言ってから、まりはふと自分の手を見て声を上げました。
「どうしたの。これが私なの。こんな白い細い手が私の手なの。」
おたよはやっと我に返ったあと、鏡を持ってきてやりました。そして涙を流しながら、まりの顔をうつしてやりました。
「ああ、これが本当にわたしなの。」
と、まりはつぶやきました。おたよは言いました。
「そうだよ、本当におまえなんだよ。」
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