第11話
この話は間もなく村中に広がりました。村の若者たちの間でも、娘たちの間でも、この話でもちきりです。特に娘たちの間では、その話がさかんにされていました。それでもみんなは、あのまりが太一に気に入られるはずがないと思っていましたから、最初のうちは、ちょっと話題に上るだけでした。たとえばこんな具合です。
「ねえ聞いた。あのタドンったら、太一さんをそっと見てたんですって。どういうつもりかしら。」
とか、
「タドンのくせに生意気よ。身の程知らずもいいとこだわ。」
「あんなこ、ほっとけばいいのよ。」
といったぐあいでした。
でも、太一が村の若者たちに冷やかされても、平気な顔をしているものですから、太一の気性を知っている人たちは、なんとなく心配になってきました。
特に、みんなのうわさの的になっていたおしのは、うわべでは平気な顔に見せていましたが、内心はおだやかでありませんでした。
最初のうちは、みんながおしのの目の前で、太一とまりのうわさをしても、平気な顔をしていましたが、そのうち、いやな顔をするようになりました。それでみんなは、おしのが来ると話をやめてしまい、別のなんでもない話をしているふりをするようになりました。でも、おしのはりこうでしたから、そんなことはすぐに気づいてしまいます。そして、だんだんとがまんができなくなりました。そうです、おしのはまりにやきもちを焼いていたのです。おしのは、こんなふうに思ったのです。
「太一さんが、あんなタドンを好きになるはずがないわ。あのこはいつも鳥や獣と遊んでいるから、何かふしぎな力を持っているのよ。きっと太一さんにもその力を使ったのよ。そうに決まっているわ。だって、太一さんは私を好きなんだから。」
それで、とうとうこんなことを言い出しました。
「ねえ、みんな。太一さんがあんなタドンを好きになるはずがないわ。きっと、あのこは何かふしぎな力を持っていて、太一さんにもその力を使ったのよ。これからあの子のところへ行って、そんなことやめさせるのよ。」
すると、みんなも口々に言いました。
「そうかもしれないわ。」
「きっとそうよ。」
「生意気だわ。」
「こらしめてやりましょうよ。」
そして、この話が村の若者たちにも伝わり、みんなでまりをこらしめてやろうということになりました。もちろん太一にはないしょです。そして、ある日みんなはいよいよまりの家へ行くことになりました。
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