第5話

 月日はどんどん過ぎてゆき、おたよは臨月をむかえました。そして、とうとう待ちに待った赤ちゃんが生まれたのです。赤ちゃんは女の子でした。おたよは、さぞかしかわいい子が生まれたことだろうと、わくわくしながら待っていました。やがてお産婆さんが赤ちゃんを抱いてきました。

 でも何ということでしょう。赤ちゃんは色が真っ黒で、顔にはたくさんのあばたがあって、がりがりにやせています。鳴き声もかすかです。母親のおたよが見てさえ、何とも不器量な赤ちゃんでした。

「ああ、神様は何て意地悪ないたずらをなさるんでしょう。」

と、おたよは思いました。

「いくら、どんな赤ちゃんでも大事に育てますと約束したからって、これではあんまりだわ。」

 吾平も赤ちゃんを見た時は、おどろきのあまり口もきけませんでした。しばらくして、おたよはやっと落ちつきました。そして、神様との約束のことをじっと考えました。となりには、赤ちゃんが安らかに眠っています。おたよは、赤ちゃんを見ているうちに、勇気がわいてきました。

「そうだわ、やっぱりこの子は私の子供なんだわ。たとえどんなことがあろうと、神様との約束通り、立派に育てなくてはいけないのよ。」

と、おたよは思いました。

そして、吾平にもそう言いました。吾平もやっと気をとりなおしたのかうなずきながら言いました。

「うん、そうだな。お前の言う通りだよ。二人で力を合わせて育てよう。」

二人は赤ちゃんにまりという名前をつけて、大切に育てました。でも、まりは乳もあまり飲まず、年中泣いているばかりの、弱々しい赤ちゃんでした。吾平もおたよも、しょっちゅう何日も寝ずの看病をしなければなりませんでした。こうして、一年が過ぎてゆきました。

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