第4話
その日の夕方、おたよは神社にお参りに行きました。何かふしぎなことがおこるのではないかと、あたりを見まわしながら歩いていきましたが、お参りをすませて家に帰ってくるまで、何も変わったことはありませんでした。おたよも吾平もちょっと拍子抜けしてしまいました。でも吾平は、
「なあに、今日とは限らないさ。二、三日待ってみてもいいじゃないか。」
と言って、がっかりしているおたよをなぐさめました。けれども、十日たっても一月たっても何も変わったことはおこりません。いつしか、おたよも吾平も夢のことはすっかり忘れてしまいました。
そして月日はどんどん過ぎて行って、もう明日でまる一年になろうとしていました。その日の夜のことです。おたよは、またふしぎな夢を見ました。あの時の神様が、夢の中に出てきたのです。神様はやっぱり一年前と同じで、白い長いひげをはやした立派なおじいさんでした。かみさまはおたよに向かって、
「約束通り、お前に子供を授けてやろう。」
と言うと、すっと消えてしまいました。
おたよはびっくりして目をさましました。そして隣に寝ている吾平をゆりおこしました。
「あんた、起きてくださいな。あんたったら。」
吾平は目をこすりながら起きだしました。
「うん、何かあったのかい。明日も早いんだ。ゆっくり寝かしてくれよ。」
こんなふうにぶつぶつ言っている吾平に向かって、おたよは言いました。
「あんた、私また神様の夢を見たのよ。神様が私に、約束通り子供を授けてやろうっておっしゃったのよ。」
でも吾平は、
「何だ、また神様の夢か。またこの前と同じでただの夢だよ。」
と言うと、また寝てしまいました。
けれども、おたよの考えは違いました。だって、一年も前に夢の中に出てきた神様が、また夢の中に出てきたのですから。おたよは神様の約束を信じることにしました。そして何か月かが過ぎ、おたよは本当にみごもったのです。おたよがそのことを吾平に打ち明けると、吾平はたいそう喜びました。そして感心したように言いました。
「やっぱり、神様の約束は本当だったんだな。」
そして、二人はあらためてあの夢のことを話し合いました。でも、二人ともどうしたわけか食い気の虫のことだけは思いだしませんでした。
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