第3話

おたよは

「あっ。」

と言って目をさましました。そして自分が家の中にいることに気がつきました。となりには夫の吾平がぐっすりと寝ています。

「何だ、夢だったのね。」

と、おたよは思いました。でも、夢の中のできごとは、まるで本当にあったようにはっきりと覚えています。

「きっと神様が夢の中に出ていらっしゃったんだわ。とうとう今日が百日目。夜が明けたらお参りに行きましょう。」

おたよはそう思って、また目をつぶりました。そして眠りにひきこまれながら、ふと思いました。」

「食い気の虫って、何なのかしら。」

 あくる日、目をさました時にも、おたよは夢のことを覚えていました。あんまりふしぎな夢だったので、朝ごはんを食べながら夫の吾平に話しました。

おたよが話し終わると、吾平は言いました。

「うん、そりゃ確かに変わった夢だな。おまえ、今日が満願成就の日だろ。よく気を付けて行っておいで。何かふしぎなことがおこるかもしれないよ。」

「それにしても」

と、二人は同時に言いました。

「食い気の虫って一体なんでしょね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る