第2話
「神様、どうか私たち夫婦に子供を授けてください。一人でもいいんです。どんな子供でも一生懸命に育てます。」
すると、急にすぐ近くから声がしました。
「それは本当だな。」
おたよはびっくりしてあたりを見まわしました。でも、誰もいません。
「やっぱり気のせいだったんだわ。」
そう思って帰ろうとすると、また声が聞こえました。今度ははっきりと聞こえました。おたよがお祈りをしていた御堂の中から聞こえてきたのです。
「お前の今の言葉は本当だな。」
おたよはすっかりあわててしまい、恐ろしさに声も出せません。それで、ただうなずいただけでした。すると御堂の中が急に光りはじめました。最初はちらちらと小さな光でしたが、やがて目もくらむような白い光になりました。その光の中から、一人のおじいさんが現れました。白い着物を着て、まっ白なながいひげをはやし、肩までたれている長い髪の毛も、みなまっ白でした。おじいさんは言いました。
「こわがらなくてもよい。わしはこの社の神じゃ。お前の熱心さには感心した。だから、お前たち夫婦に子供を授けてやろうと思う。」
おたよは嬉しさのあまり、急いで神様にお礼を言おうとしました。でも神様は手をふって」言いました。
「あわてるでない。そのかわり、わしの宝物をお前たちに預かってほしいのじゃ。わしがいいと言うまで預かってくれるなら、子供を授けてあげよう。」
おたよはうれしくなって言いました。
「喜んでお預かりいたします。」
そう言ってしまってから、ふと
「神様の宝物って何だろう。」
と思いました。でも、そんなおたよの思いには気がつかないで、神様は言いました。
「そうか、そうか。それではわしの宝物を預かってもらおうか。」
そう言うと、神様はてのひらに何かをのせました。神様の手の上で何やら動いています。神様はそれをおたよの目の前につき出しました。おたよは
「あっ。」
と言って飛び下がりました。
それは、なんと小さないも虫だったのです。おまけに、奇妙なことにかわいい女の子の顔をしていて、ちゃんと両手までもっていたのです。
「これは食い気の虫じゃ。ではお前に預かってもらおう。」
神様はそう言うと、その虫をおたよの手の中に落としました。おたよは一瞬手でふりはらおうとしました。でも、虫はてのひらに落ちたと思ったら、あっというまに
溶けてしみこむように、手の中へ消えてゆきました。
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