食いしんぼの虫の話

OZさん

第1話

 昔々、上州は否含山(いなふくみやま)のふもとに小さな村がありました。その村に吾平というお百姓が、おかみさんと一緒に住んでいました。おかみさんの名前はおたよといいました。吾平夫婦には、もう結婚して何年もたつのに、子供がありませんでした。そこで、村のはずれの社に行って、神様に願をかけることにしました。百日の間、雨の日も風の日も神社にお参りをして、子供が授かりますようにと、お願いをするのです。

 おたよは、毎日毎日一生懸命に神様にお願いをしました。たとえ嵐の日でも休みませんでした。そして、とうとう明日で百日目という日になりました。その晩、おたよはふしぎな夢を見ました。夢の中で、おたよは百日目のお参りに行くところでした。

「ああ、今日でとうとう百日目だわ。神様は私の願いを聞いて下さるかしら。」

 おたよは村をまっすぐに通り抜けて、村のはずれの神社につきました。神社は街道から少し離れた杉林の中に、ぽつんと立っていました。村からは少し離れているし、街道からも離れているので、いつも人はあまりいません。たまに、ほこりをかぶった旅人が一服しているだけです。

 おたよが神社についた時も、やっぱり誰もいませんでした。おたよは階段を上って御堂の前で手を合わせてお祈りしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る