第19話 魔獣との戦闘
「こんなすごいものがあるなんて私知らなかったよ」
「ほんとだよね」
茨を見てそんなことを言う結衣とあかり。
昼間に見てきた桜の華やかさとは違う力強さからくる美しさ。
ここにいるだけで何故か心がぽかぽかするような気が……、っ!
恵音が腰を低くし持っていないはずの刀の柄を握るポーズをとる。
その瞬間に恵音の左腰に刀が出現。
恵音自身の身長ほどある長い刀。
「冬也……」
「分かってる……」
恵音と同じく虚空の柄を握る仕草を取る。
その両手で刀を掴む。
恵音のよりも短めの刀。右手に黒、左手に白だ。
空間魔法。
常に腰や肩に装着している武器を一時的に別の空間に移動させる魔法だ。
結衣も気づいたのか両手には既に剣と魔導書(グリモワール)が装備されている。
「どうしたの3人と」
「静かに……」
あかりの言葉を遮るように3人に注意。
何かが来る……っ!
「ふっ!」
一閃。
ポニーテールがふわりと舞う。
恵音の1振りに何かが倒れた。
「これは……魔獣ですの!?」
横たわっているのは狼のような魔獣。
狙いが分からない……。
「冬也! 前!」
「くっ……」
間一髪で回避。
すれ違う瞬間に一太刀。
一撃与えるが致命傷ではない。
「んっ!」
あかりが無詠唱で魔法を発動。
「グギャァ!!」
火球が魔獣を襲う。
今度は致命傷だったのか魔獣が倒れる。
油断していた……。
「冬也! 大丈夫!?」
「ああ……」
結衣の問いに答え前を見る。
木々の隙間から赤い瞳がいくつも見える。
先程の魔獣と同じ瞳の色だ。
「どういうことですの……」
「分からない……が、警戒は解くなよ……」
茨に背を向けて立っているので逃げ場はない。
助けを呼ぶ時間もない。
いや、助けを呼ぶ必要なんてない!
「恵音!」
「……!」
同時に飛び出し、刀を振るう。
恵音は一撃で、俺は致命傷1歩手前を狙って魔獣を切り裂く。
理由は……あまり言いたくないな……。
どちらにせよ森の中だと刀は振りずらい……。
「冬也避けて!」
「ふっ!」
無理矢理体を捻りあかりの魔法を避ける。
今度は黄色い稲妻が魔獣を襲う。
よし!
「ナイス!」
「うん!」
「ひっ……」
悲鳴を聞いて後ろを振り向く。
あれは……魔獣!
一体逃したのか!?
「あかり!」
「ここは
翡翠の壁があかりを守る。
さすがお姫様!……へ?
フィリスのお尻からドラゴンの尻尾のようなものが……。
「クロード!」
「はいよ! サンダー!」
そんなことはお構いなしにクロードに指示を飛ばすフィリス。
クロードが作り出した稲妻が魔獣を襲い感電。
「はぁ!」
痺れた魔獣にいつの間にか空間魔法を使っていたのかフィリスが剣を一振り。
そのまま魔獣が倒れた。
「ありがとうございます……」
「いえいえ、大丈夫でしたか?」
「はい!」
2人とも強いな。
「冬也!」
「なっ……くぅ……」
後ろの様子を見ていたせいで前から来た魔獣の攻撃を避けることができず慌てて防御する。
日本刀は防御に向いてないのに……。
なら!
「恵音!」
「……ん」
俺の意図を汲み取ったのかコクンとうなづく。
「結衣! 少し頼む!」
「任せて!」
2人に任せて一度退却。
「冬也くん大丈夫!? 怪我してない!?」
「ああ、大丈夫だ。心配ない」
「そっか。怪我したらすぐ言ってね!」
近づいてきたあかりに言葉を返しながら刀をしまう。
「トウヤ! あなた何を!?」
「日本刀がダメなら!」
肩付近で虚空の柄を握る。
「こっちだ!」
2本の西洋剣を引き抜きながら飛び出した。
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