第17話 茨の花園
「ケイネ、お肉ばかり食べてないでちゃんとお野菜も取りなさいな」
「えー、バーベキューと言ったらお肉でしょー」
「確かに気持ちは分かりますがあのふたりを見てください」
フィリスさんが冬也とクロードくんのほうを見る。
「あのふたりが食材を焼いてくださるおかげで
と言いながら焼かれたピーマンを食べるフィリスさん。
さっきの発言通りお肉よりも野菜の方が多い。
「そっかー……わかったよ、冬也たちもお肉食べたいだろうしね」
そんな姿を見たのか観念したらしい。
「それじゃあ俺たちも食べるとするかな」
「おう」
そんなタイミングを見計らったかのように冬也とクロードくんが椅子に座る。
6人みんなで食べたいからね。
「いただきます」
「いただきまーす」
自分たちで焼いた食材を食べ始める冬也とクロードくん。
もちろんお肉から。
恵音は少し、ほんの少し羨ましそうだった。
「そのさ、ちょっと気になったことがあるんだけど、ここってなんで"茨の花園"っていうのかな?」
自分の気持ちを誤魔化すかのように無理矢理話題を作る恵音。
「それ私も気になってたんだよね」
その話題は私も気になっていることだった。
「それは確か……」
「それは?」
「では、少しお話をしましょうか」
心当たりがあるらしいフィリスさんにみんなが注目。
一息ついてから話し始めた。
「人々が初めてこの島、人工島はなかったので鈴海本島のことですわね、を見つけた時のことです。人々はこの島を探索することにしたのですが1日では探索しきれず野宿をすることにしたそうなのです。その時野宿した場所がここと言われておりますわ」
「ふーん」
「野宿といえば火を起こすでしょう? 普通でしたら就寝する時には火を消すものなのですがこの時は火を消すのを忘れて寝てしまったらしいのです。そしてその夜人々が寝静まった時その消し忘れた火が辺りに燃え移りかなりの規模の山火事になったそうなのです」
「ここが……火事に……」
「その時です! 人々が飛び起きパニックに陥っている時に地面から巨大な茨が何本も伸びてきてその山火事を鎮火したそうなのです。人々はその茨に感謝をし、そこからこの地を"茨の花園"と名付けたと言われております」
「へー」
そんなことがあったとは。
でもなんで……
「なんでその茨で山火事が鎮火できたの?」
「それは……分かりません……。祖父からこの話を教えてもらったのですがどうやって鎮火されたのかは分からなくて……」
申し訳なさそうにするフィリスさん。
むしろ教えてもらえただけでもありがたいのに。
「あ、そうですわ! 確かまだその茨が残っていたはずです!」
「ほんと!?」
「ええ! そうですわね……このあと見に行きませんこと?」
「うん! 行こう行こう!」
「僕も行く!」
「私も!」
みんな乗り気だ。
冬也? うん、おっけーだね。
「そうと決まりましたら今ある食材を全部食べきってしまいましょう! クロード」
「ハイハイ」
自分の持ち場? に戻っていくクロードくん。
この腹ぺこお姫様はただお腹が空いているだけなんじゃないかなと少しだけ思ってしまった。
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