第15話 あっち向いてホイガチ勢
「恵音は今までのクロードくんの動きを全部見てから動いてる」
「は? どういうことだ?」
「簡単な事だよ。じゃんけんをした後負けたら顔を、勝ったら指を動かすでしょ? その動かしたタイミングでクロードくんの動きを見てから行動してるんだよ」
満足そうに頷く冬也。
私の仮説は正しかったらしい。
「俺から見た感じ後出しで動いたりしてなかったぞ?」
「それはそうだよ。だって恵音コンマ何秒の差で動いてるんだもん」
普通そんなことができる人なんていないし、いたとしてもそれを視認することができる人もいないはずだ。
私は今までずっと優子さんから指導を受けていたからギリギリ視認することができたけど……。
視認することができても恵音のようにコンマ何秒で動くことなんて私にはできない。
あの様子だと冬也は最初から知ってたみたいだしこんな可愛らしい見た目でとんでもない力を秘めているみたいだ。
「……ダメだ。理解できない……」
クロードくんは顔に手を当てる。
「でもそれがホントなら恵音反則じゃないのか?」
「そんなことないでしょ。僕たちの中だとこれがあっち向いてホイだし。ね、冬也」
「……あぁ。実は昔からこの遊び方が主流だと思ってた」
「……お前ら狂ってるぜ……」
手を掲げてお手上げのポーズ。
あかりちゃんとフィリスさんも驚いている。
「ということで、不正はなかった! いい?」
「……ああ、もういいよ。これは勝てそうにない。俺に買ったご褒美に次は冬也と戦わせてやろう」
「待て待て待て!」
「いいのー!?」
目をキラキラとさせて冬也に迫る恵音。
「待ってくれ。これまじで疲れるんだよ。勘弁してくれ……」
「へへっ」
仕返しだとクロードくんが笑う。
自業自得だね。
「それじゃあ始めるよー。ルールはいつもと同じね」
「動かしていい時間は0.2秒までのやつな。了解。そろそろお前にも勝ちたいし……やってやる!」
観念したのかやる気を見せる冬也。
2人とも燃えている。
「「最初はグー! じゃんけんぽん!!」」
「あっち向いてホイ!」
「「じゃんけんぽん!!」」
「あっち向いてホイ!」
繰り返されるあっち向いてホイ! というセリフ。
お互いの顔と指が0.2秒の間とめどなく動き続ける。
冬也が顔を右に動かした瞬間に恵音の指が右に動き始める。
その瞬間次は顔を上に動かし恵音がまたそれについていく。
それを見た冬也は顔を左に動かしつつ恵音の行動を読んで最後の瞬間右に動かす。
恵音はそれについていくことが出来ず0.2秒が経過。またじゃんけんをする。
ありえない……。少なくとも0.2秒間の中でできることじゃない……。
「あっち向いてホイ!」
あの後30回くらい攻防戦が行われた。
未だ決着はつかず今も激しい戦いが繰り広げられている。
「痛っ……」
私の小さな声が漏れる。
情報量が多すぎて目が、頭が痛む。
「くっ……」
思わず目を閉じた。
痛みが少し緩和された。
と、
「あっち向いてホイ! やったー! 僕の勝ちー!」
ついに決着がつく。
勝利したのは……ガッツポーズをしている恵音の方か。
「くっ……、またか……」
「もう1回やる?」
「いや、疲れたからいいや。あと、みんな集まってきたしな」
冬也が周りを見て言う。
冬也にならって周りを見渡すと今まで空席だった場所が埋まってきている。
「ようやくバーベキューができますのね」
「2人の戦い? を見てるだけでこんなに時間がすぎていくなんて思わなかったよ」
フィリスさんは相変わらず食べることしか興味がないご様子。
あかりちゃんはうーんと体を伸ばした。
「それじゃあ始まるまで少しきゅーけー」
恵音の合図と共に冬也もぐったり。
もうすぐ始まるんだ……今日1番のイベント、バーベキューが!
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