第12話 自己紹介

 近くの喫茶店にやってきた俺たち。

 案内された席に座ってとりあえず飲み物を頼む。

 店員さんが俺たちの元を離れたのを見て金髪少女が口を開いた。


「ということですので自己紹介を致しますね」

「わーぱちぱちー!」


 恵音が軽く茶々? を入れた。


「コホン。わたくし、フィリスリア・フォン・ルクナシアと申します。ルクナシア王国から留学という形でこちらにやってまいりました」


 上品に話す少女。

 ルクナシア王国から来た苗字がルクナシアの少女……。

 もしかして!?


「ということは、フィリスリアさんってそのルクナシア王国のお姫さまなの?」


 恵音が言う。

 結衣もあかりも同じことを考えていたのか驚いた顔をしている。


「ええ。そうですわ。一応私はルクナシア王国の第2王女です」

「わーすごーい! 本物のお姫さまだー!」


 はしゃぐ恵音。

 それと引き換えに俺と結衣、あかりは絶句。

 一国のお姫様がこんな一般人(俺と結衣は少し違うが)と一緒にいていいのだろうか。

 今更ながら緊張してきた。


「そ、その、フィリスリア、様? そんなお姫様が俺たちみたいな一般人と話をしていても大丈夫なんですか……?」


 お姫様は頬を膨らませる。

 まずい……。俺今もしかして変なこと言ったか……?


「そのフィリスリア様というのをやめてくださいまし。フィリスでいいですわ。あと、敬語も不要です。私たちはこれからこの学校で過ごす仲間なのですわよ。そんな硬い言い回しでは寂しいではありませんか……」


 予想と違ったことで怒っていたお姫様。


「そんなこと言われても……」

「まあいいじゃないか少年。お嬢もそう言ってるし

さ」


 お姫様の隣に座っている少年が口を挟む。


「おっと、申し遅れた。俺はクロード・ウォームだよろしくな」

「お、おお」


 茶髪の少年、クロードは言葉を続ける。


「お嬢は元々あんまり友達がいなかったんだよ。だからな、今日のことすごく楽しみにしてたんだぜ」

「そうなのか?」

「ああ。だからさ、ここはお嬢のわがままを聞いてやってくれないか?」


 俺に向かってウィンクをしてくる。

 なるほど、友達があまりいなかったのか……。

 俺と同じなわけか。


「分かった。じゃあ、フィリス、クロード、これからよろしくな」

「よろしくねー」

「こちらこそですわ」

「それじゃあ次は私たちの番だね」


 結衣が口を開く。

 

「トウヤ、ユイ、ケイネ、アカリですわよね」

「なんで知ってるの!?」


 結衣が驚き声を上げる。

 あかりも恵音もキョトンとしている。

 もちろんおれもびっくりした。


「皆様お互いに名前を呼びあってましたし、覚えてしまいましたわ」

「そ、そうなんだ」


 何を話そうか少し、ほんの少しだけど考えていたため出鼻を挫かれた感じがした。


「お待たせ致しました」


 いいタイミングで店員さんがやってくる。 

 飲み物を並べて……あれ俺たちサンドイッチなんて頼んだっけ?


「そのサンドイッチは私からのプレゼントですわ」


 自慢げに話しながらサンドイッチに口をつけるフィリス。

 クロードが俺に目で語りかけてくる。

 な、言った通りだろ?

 もう一度フィリスを見るともう次のサンドイッチを頼んでいた。

 このお姫様、食欲旺盛すぎやしませんか……。

 サンドイッチを頬張る。

 とてもおいしかった。


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