第11話 小さな奇跡
「ここだな」
「開けるねー」
自分たちの部屋に着いた俺たち。
恵音がカードキーでドアを開ける。
もう寮じゃなくてホテルじゃん。
「お前はどの部屋だ?」
隣の少年に聞く。
「あ、俺も同じ部屋だ」
「まじ?」
「まじ」
「これは縁あるわ」
「僕は冬也と2人っきりでも良かったけどね」
恵音が冗談を言う。
「3人部屋だからそれはねーよ」
「えへへー」
中は結構広くやはりホテル感が増した、
とりあえず三つ並んでいるベッドの隣に荷物を置いておいた。
もちろん結衣の分は事前に渡してある。
「ダーイブ!!」
ベッドに飛び込んだ恵音を横目に部屋を確認。
トイレはあるがお風呂はない。
一応ホテルをそのまま寮にしたわけじゃないことは分かった。
テレビも付いている。
電源をつける。
情報番組が流れていた。
ポチ。恵音に消された。
えへへ、じゃねーよ。別に消そうと思ってたけど。
「なんか普通の部屋だな」
「ああ」
少年の呟きに応える。
落ち着いて来たみたいだ。
「そろそろ行くぞー」
「はーい」
「了解」
他に見るものも無くなったしエントランスに向かった。
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「冬也ー!」
エントランスで結衣が手を振る。
先に来ていたみたいだ。
それにしても何か嬉しそう。いいことあったのかな?
「聞いてよ冬也! あのね、私たちね、まさかの同じ部屋だったんだ!」
「そうなんですのよ! これが奇跡というものではなくて!?」
「ああ、それって」
「僕たちと同じだね!」
すかさず恵音が口を挟む。
これは本当に奇跡かもしれない。
「ほんと!? 世の中すごいこともあるもんだねぇ」
結衣が感慨深そうに頷く。
「まあそろそろ行こうか。これ以上話していると昼飯じゃなくておやつになっちゃうし」
強引に話を変える。
こうでもしないと一生盛り上がってそうだし。
「そうですわね。今日は夜に一年生全員でバーベキューをやるそうですし、ここで時間を取ってしまっては楽しむものも楽しめませんわ」
俺の話に少女が乗ってくれる。
そういえば名前を聞いていなかったな。
「それじゃあ早めに移動しよう。と、その前に、自己紹介がまだだったな」
「確かに」
「まあ! 忘れておりましたわ!」
みんな今気づいたみたいだ。
「それも含めての食事会と致しましょう。さぁ行きますわよ!」
あ、ここで自己紹介するわけじゃないんだ……。
今のはそういう流れだったのに。
スタスタと歩き出す。
もう行く場所は決まってるみたいだ。
「ごめんな、うちのお嬢ああ見えて食欲旺盛なんだよ。腹減ってるんだよ、多分」
なら仕方ない。
「皆様方! 早く行きますわよー!」
手を振って俺たちを呼ぶ。
その仕草はどこか上品なものだった。
「とりあえずついて行こうか」
俺たちは遅めの昼食を取るために人工島側へ向かった。
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