第6話 私によく似た誰か

 通学路、振り返るとそこにいる。

 私によく似た女の子。

 私をじっと見つめている。


 私が近づくと、女の子も私に近づいてきた。

 私が遠ざかると、女の子も遠ざかっていった。

 きっと鏡があるのだろうと思って、女の子の前まで近づいてみた。

 手を伸ばすと、女の子も手を伸ばし、私達の手はぴったりと合わさった。温かくて、やわらかい手の感触かんしょくがした。


「あなたはだぁれ?」

 女の子にたずねた。

 女の子はニッコリとほほえんで言った。

「私はあなたよ。今日から私があなたになるの」


 私は私だから、女の子に背を向けて走って逃げた。

 女の子は私ではなかったから、私を追いかけてきた。

「待って! 置いて行かないで! あなたの家に帰るのは私なのよ!」

 振り返ると、女の子の顔はのっぺらぼうに変わっていた。

 私はそのまま自分の家にかけこみ、げんかんのカギを閉めた。

「あぁ……私のものになるはずだったのに」

 追いかけてきた女の子は残念そうに言って、消えた。

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