第5話 ウサギの着ぐるみ

 通学路、振り返るとそこにいる。

 色とりどりの風船を持った、ウサギの着ぐるみを着た誰か。

 一週間前、近所の遊園地で首を切られたウサギの着ぐるみだ。


 ウサギの着ぐるみは私に近づくと、遊園地でもないのに風船を差し出してきた。

「風船をどうぞ。他にもたくさんあるよ。お腹が空いているなら、お菓子もあげよう」


 私は風船をもらって喜ぶようなお子様ではないし、お腹も空いていなかったから、走って逃げた。

 ウサギの着ぐるみは風船を持ったまま追いかけてきた。途中で足がもつれて、転んだ。

 転んだ拍子ひょうしに着ぐるみの頭が取れた。

 着ぐるみの中身は、空っぽだった。

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