第3話 用水路のおばあちゃん

 通学路、振り返るとそこにいる。

 用水路から顔を出したおばあちゃん。

 一週間前、大雨で増水した用水路に足をすべらせて落ちて、おぼれて死んだおばあちゃんだ。


 おばあちゃんはゆっくりと私のそばまで流れてくると、私に向かって手を伸ばした。

「助けておくれ。この手をつかんでおくれ」


 私が手を差し伸べずにいると、おばあちゃんは私の足首をつかもうとした。

 私はおばあちゃんを引き上げられるほど力持ちではなかったから、走って逃げた。

 おばあちゃんはゆっくりとしか流れられないから、私に追いつけなかった。

 後ろから「この、薄情者はくじぃうもの!」と、怒られた。

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