第2話 マンションの屋上のおじさん

 通学路、振り返るとそこにいる。

 マンションの屋上から、スーツを着たおじさんが私を見下ろしている。

 一週間前、あそこから飛び降りたおじさんだ。


 おじさんは私を見つけると、ゆっくり手まねきした。

「おいで。こっちへおいで。おじさんと、お友達になろう」

 遠くにいるはずなのに、おじさんの声がハッキリと聞こえた。


 私はおじさんとはお友達になりたくなかったから、走って逃げた。

 おじさんはマンションの屋上からは出られないから、追ってこられなかった。

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