第40話 これからの対処法とビッチ四天王
「それで、昴君はこれからどう対処していって解決させるつもりなのかしら?」
パルパルさんに聞かれて考え込む。
その場その場で何となく対処し、妹に付きまとうな!とキツく言ってやれば大抵の男は諦めるだろう。
しかし相手はそもそも女であり、なおかつお豆腐メンタルの持ち主ときた。
ここでそのような手に出てしまえば、場合によるが近藤さんがお豆腐過ぎて『死んでやるー!』となりかねないので、何とか相手が納得できる形で断りを入れたいところだ。
が、生憎そのような特殊ケースに遭遇したことはこの人生で一度もない。
ここはメンタリストとか、臨床心理士とかそういう系の人から助言をもらったりした方が良いのだろうか。
「知り合いにカウンセラーとかいれば何かしらの助言はもらえるかもしれないんだけどな……」
「了解よ!」
言うや、パルパルさんはスマホを右の胸ポケットから取り出し、画面を操作して通話を開始する。
それから少しのやり取りをした後、電話を変われと言わんばかりにこちらにスマホを差し出す。
「……誰?」
怪訝に思いつつ、スマホの画面に目をやると、そこには『まさこさま』という名前?が書かれていた。
本当に誰だよ!?
どこかの高貴なお方とかなのか!?
「良いから出なさい」
「………」
無言でパルパルさんからスマホを受け取り、受話器を右耳に当てる。
「も、もしもし……お電話変わりました。瓜生昴といいま――」
『あんらぁ~?とっても若い雄の声が聞こえるわぁ~!おばさん興奮しちゃう~♪』
まさかの発言にぎょっとした後、朝倉に「ほんとに誰!?」と訊ねる。そんな俺に対し、爆笑する朝倉。
こんな時に悪戯!?悪戯なのか!?
『パルちゃんから話はさらっと聞いたわぁ~、あなたの妹さんが同性に告白されそうで困っているそうね~。それで、あなたはどうやったら相手を傷つけずに諦めてもらえるかって考えているんでしょ~ぅ?』
ただのセクハラまがい、または欲求不満なオバハンと話をさせられているだけかと思ったが、もしかしたらこのまさこさまという女がまさにカウンセラーなのかもしれない。にしても根回しが早すぎるような気もするが……
だが、もしかしたらこの件を解決させる糸口になるかも?とは思う。
しかし、ここで一つ問題が生じる。もしこのまさこさまがカウンセリングのプロだとしたら、いったい幾ら費用が掛かることか少し怖い。
「い、幾らしますか……?」
『あんらぁ~?もしかしてお姉さんの声に欲情しちゃったぁ~?お姉さんは一発――』
「ちっがぁーう!」
一言も『1回幾らか?』とは聞いていないのだが!?
まあ、主語的な説明を抜かした俺も文句は言えないけど……
「そ、相談料は幾らするのか聞いてるんですよ」
『そんなのただで良いわよ。そもそもお姉さんはもうプロではないんだし!オーッホホホホッ!』
無料か、それなら幸いだ。
それに相談やアドバイスだけで料金を取ってもという部分があるのかもしれない。
俺だって簡易的なイラストだけでお金払うとか言われてもと思ったりする時あるしな。
「はあ、それで早速本題ですが俺はどうしたら良いのでしょうか?」
『方法はいくつかあるわぁ~。その中で最も温和に解決できる方法を教えてあげる、うっふふふふっ!』
えっ?なぜそこで笑み?
もしかしてミスったらかなーり面倒なことになるやつとかだったりして……こうリスクは高いけど最も温和に解決できる方法とか?いや、でもわざわざ相談に乗っておいてそんな方法を教えたりはしない……はずだ。
「その方法とは……?」
『それはねぇ~、ずばり――』
それから最も温和に解決できる方法とやらを聞いた俺はそのまま終話し、朝倉にスマホを返却する。
「それで?解決しそう?」
「まあ、一言いえるとすれば、これは俺の頑張り次第ってことになりそうな方法だったな」
「ふーん、じゃあもし教えてもらった方法で無事に解決できたら一つ私からの借りってことになるよね?」
「ん、おう」
どっちかと言えば、あのまさこさまへの借りということになるのでは?と思ったりはするけど、そもそも朝倉に斡旋されなければその方法すら浮かばなかったことだろう。
ともすれば、これは朝倉への借りということでも問題ないのかもしれない。
「えへへぇ~、いずれ返してね♪」
「ちなみに、せっかくだから朝倉にも手伝ってもらえって言われたのだが……大丈夫か?」
「もち♪まっかせなさーい!」
そう言うと朝倉は右手で自分の胸をポンと叩いた。
なんとも頼り甲斐のある女である。
胸のサイズとしてはあまり頼れるとは思えな……いや、これは失言になりそうだからやめておこう。
とにかく、一人でこの件を対処するよりはよっぽど楽になることだろう。
「それで、どうやって対処する予定なの?」
「そこは……まあ、単刀直入にいえばこうだ」
そう言って俺は朝倉にこれからの作戦を説明する。
俺がまさこさまに言われた方法はこうだった。
まず、件の近藤さんと接近し、彼女の心情やキラに対する思いを確認。
その後、近藤さんの状況やキラへの思い次第で適宜対処していくという流れだ。
「で、適宜対処ということだが、その対処法も話しておこう」
対処法についても伝授されているので、それらについても朝倉に説明した。
そしてすべての説明が終わると朝倉は一言口を開く。
「さ、さすがまさこさまね……完璧な作戦。学生の頃にビ〇チ四天王と言われていただけはあるわ」
何その異名。今後接するのが余計怖くなるような異名だな。
「あっ、ちなみに叔母さんも同じくビ〇チ四天王だったらしいわよ」
「はあ!?」
あんな未だに処女臭い女がかつてビ〇チ四天王と呼ばれていただと……?
「信じていないようね。ならば!」
そう言うと、朝倉はスカートの右ポケットからスマホを取り出し、画面を操作するとこちらにとある画像を見せた。
見た感じプリクラで、4人の女子が映っているのだが、全員イケイケなギャルでポーズもチャラいし、いかにも3股4股はしてそうな軽い感じで頭も悪そうだった。
しかも落書きで「4P中♡」と書かれているところがまた更に軽そうな印象をこちらに与えてくる。
で、その中の一人が正義先生そのものだった。
「確かにビ〇チかもしれないな」
「まあ、叔母さんの場合は処女ビ〇チ担当だったらしいんだけど」
「何そのカテゴリ!?」
「叔母さん的には心に決めた一人としか一生したくないという思いがあったらしいわ。その頃はまだそういう相手はいなかったみたいだけど……」
右手人差し指で右頬を搔きながらこちらから目を逸らす朝倉。
「まあ、その相手がようやく見つかったから、今はその頃以上に活き活きした生活が送れているって言ってたわよ……」
「……待て!その『お気の毒様』と言わんばかりの気まずそうな表情はやめろ!いたたまれないから!それと重い!正義先生の思いが重い!」
「そうよね、でも叔母さんの気持ちは分からなくもないわ。だ、だって、昴君は……その、何事にも一生懸命だし、優しいものね……」
「うっ……」
潤んだ瞳に上目遣いで言われて思わず胸がときめいてしまう。
――その仕草は反則だ。
そう思い、堪らず視線を逸らす俺であった。
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