第2章 勇者養成学校に入学する幼馴染達

第10話 学校入学



 女神石データ一覧

 お嬢様 ザ・お人よし 茨の道を進むもの

 馬鹿 ザ・考えナシ 無謀なる挑戦者

 僕 ザ・お世話係 とにかく頑張れ







 僕には二人の幼馴染がいる。

 物事をよく考えない馬鹿と、血すじが良いところのお嬢様。


 そんな幼馴染達と出会って数年。

 この二人は、色々あって勇者養成学校に入学した。


 受験する前に僕は、二人に散々文句を言ったんだけど……。


『正気か!? 考え直せ(馬鹿は主に学力の面で、お嬢様は特に世間体の面で)!』

『きちんと考えてる考えてる。あー、楽しみだな。早く学校に通いたいな。強い奴いっぱいいるかな』

『ヨルンは細かいこと考えすぎよ。誰かを助けるのが貴族の役割でしょ? なら、何も間違ってないと思うの』


 こんなやりとりがあったので、説得は失敗に終わってしまった。


 そりゃ、人の役に立つって点は同意だ。


 この世界では魔物が年々増えていて、駆除が間に合っていない所がある。

 大型化や狂暴化も進んでいて、冒険者達が退治していたのだが間に合っていないからだ。


 僕達も商売で各地を回っているが、それぞれの町や村の住人達はみな困っていた。

 こっちも商売中に魔物から襲われないため、護衛を付けることになったしな。


 そこでそんな世界の状況をなんとかするため、歴代勇者の遺物を複製するプロジェクトが立ち上がった。


 国を挙げての一大プロジェクトと称されたそれは、しっかり計画を練られて順調に進んでいるらしい。


 複製遺物の数は増えたし、それに伴って大量の勇者が名を挙げた(勇者の価値は、大暴落したが)。


 どうなんだって一部思う所はあるけど、背に腹は代えられない。

 

 そんな背景があって勇者になれる人が増えたため、一昔前より憧れる人々は多くなっていた。


 元々騎士を要請する学校はその需要にこたえて、時代の流れと共に変化していき、勇者を養成する学校になっている。


 だから、恰好いいからという理由で目指していた馬鹿と、人のためになりたいからという理由で目指していたお嬢様が、その学校に入学する事を決めたのだ。


『……入学おめでとうございます』

『めっちゃ含む顔してるけどありがとな! ヨルンも受かったんだろ。良かったな!』

『おめでとう。私達三人一緒に通えるのね!』


 こんな風に合格発表の日、死んだ魚の眼で祝いの言葉を述べることになったのは、思い出したくない記憶だな。


 僕?

 僕はただの箔付けのため、入学したに過ぎない。


 護衛だっていつも雇えるとは限らないし、確かな実績を積んで知り合いを増やせば、顔が利く仲になるしな。


 そういう利益がないなら、誰が好き好んで、勇者なんでそんなものになりたがるんだ。


 あ、幼馴染にいたか。


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