第3話

キスをされた。首に。首中に。

赤黒い内出血が首に幾つも現れた。

不可抵抗だった。


5限の講義が終わると、いつも仲良くしていた男子が話しかけてきた。


「今日、これから予定ある?」


あー、ごめん。今日は彼氏が東京まで来てくれて。これから遊びに行くんだ。


そう返すと、彼はごめん。と小さく呟くように言った後。


誰もいなくなった教室で、貪るように私の首元に何度もキスをしていた。


何故かそれを拒否することができなくて、只々それが終わるのを静かに待っていた。


教室を出る。大学を出る。


すると、彼氏が大学の前に退屈そうに立っているのが見えた。


お待たせ。


彼氏は私を見ると、一瞬笑って。その後、不思議そうな顔をして。


次に、泣き出した。


人目も気にせず、号泣していた。


子供だね。


不思議と、私の心情は穏やかで。少しだけ晴々としていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金魚救い 味噌煮込み白木 @yasai69batake

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ