第52話 地上へ帰還
「エリオット君、あれ」
「ん?」
「どうした?」
階段を上がった先で何かを発見したシモーネさん。僕とフレデリカさんが一緒に、指差す先を見てみる。そこには、見覚えのあるモノがあった。
「お、石碑じゃねえか」
「そういえば、これは地上にも有るんですよね」
「ということは!」
フレデリカさんが、見えたモノの名前を口にする。それは僕たちが、ダンジョンの最下層で発見した、台座の横に置かれていた石碑とよく似たものだった。
リーヴァダンジョンに入るときは見過ごしていた石碑。階段の脇に設置されていた石碑には、一番上の“ケラヴノス”と書かれた文字。それ以降は、全く読めない文字がつらつらと書かれている。
この石碑が階段の脇に設置されているということは、もう地上近くだということ。
「やっと、出口のようです。この通路を先に進めば、外に出られますよ」
「えぇ、そのようね。疲れたわ」
「おっしゃ! ようやく、何日かぶりの太陽が見えるのか」
シモーネさんとフレデリカさんは、嬉しそうな表情を浮かべて感想を声に出した。僕も、同じような顔をしているだろう。本当に、地上へ戻ってこれてよかった。
「最後まで、気を引き締めて行きましょう」
「えぇ」
「そうだな」
まだ僕たちのいる場所は、岩や土で出来た洞穴の中だった。薄暗い照明があって、まだ地上に出たわけではない。最後まで、気を引き締めて挑まないと。何が起こるか分からない。2人に声を掛けて、警戒を促す。
石碑から視線を外して、通路の先を観察してみる。真っすぐ伸びた一本道で、奥の方にはダンジョン内の薄暗い光とは違った、真っ白い光が見えるような気がした。
おそらく、あれが外に繋がる出入口だろう。
リーヴァダンジョンに入場した時の長い通路を思い出しながら、僕は外に出られるであろう一本道の通路を、光が小さく見える方向へ向かって歩いていく。
一番前に、フレデリカさん。真ん中には僕が居て、後ろにはシモーネさんが並んで歩いている。
「ふぅ。……無事、外に出れましたね」
「よっしゃ!」
「お疲れ様」
通路を先に進んでいくと奥に見える希望の光が、どんどん明るく大きく見えるようになった。空と太陽が見えて僕はようやく、安全だという実感を得ることが出来た。
僕たち3人は、非常に危険な状況に陥ったものの大きな怪我を負うこともなく、無事に地上へ揃って戻ってくることが出来た。
「はぁ、久しぶりの太陽は眩しいなぁ」
フレデリカさんが太陽に手にかざしながら目を細めて、空を見上げていた。僕も、彼女と同じように空を見ようとするが眩しくて顔をそらす。
ずーっと薄暗いダンジョンの中に居たせいなのか、目がチカチカと光に慣れない。太陽から目を逸らしつつ、出てきた場所の周りを観察してみた。
木に囲まれている。周りには、誰も居なかった。入る時に見た、あの特徴的な赤いレンガも見当たらない。別の場所に出てきたのか。
その辺りには人の気配が無く、整備されているような様子もなかった。
「この場所は、どこなのか分かる?」
「うーん」
僕と同じように、視線をあちこちに向けて周りの観察をしていたシモーネさんが、ここはどこなのか尋ねてきた。僕も分からないから、唸って答えられない。
僕たちが出てきた場所は、ただの洞窟があるだけの入り口にしか見えない。周りは木に囲まれていて、どうやら僕たちが今居る場所は森の中ということだけ分かる。
「もしかしたら、ここは未発見のダンジョンなのかもしれません」
「え? 私たちは新しいダンジョンを発見したの?」
「そうね。ケラヴノスという名前のついたダンジョンなんて、聞いたことが無いわ」
今僕たちが出てきたのは、“ケラヴノス”という聞き覚えのないダンジョン。道中も冒険者とは一切出会うこと無く、出入口の付近に立っても誰も来ない。
ケラヴノスダンジョン。なかなか最下層まで深くて、その途中の下層には伝説級のモンスターに分類されるドラゴンも待ち構えていた。そんなダンジョンなら、多少は噂されたり話題になっているはずと思う。だけど、僕たち3人は聞いたことが無い。
これらの事から、このダンジョンはまだ誰にも知られていない未発見のダンジョンではないのか、という可能性を考えた。
「そうだとすると、やっぱりまだ自分たちがどこに居るか、分からないわね」
「そうですね。まず現在地を知りたいです。近くに、村か街が有ればいいんですが」
「とりあえず行ってみよう」
「えぇ」
こうして、ダンジョンから無事に脱出した僕たち。だったが、依然として居場所を特定できないでいた。この近くに村か街などは無いか。人を探して情報を得るために3人で、この辺りを調査することになった。
「あ! 人が居るぞ」
「話を聞いてみましょう」
夜までには、村を見つけられたら良いなと思っていた僕たち。近くに、小さな村があるのを発見した。情報収集するために、話をしたい。ということで聞きに行った。
「フレデリカさんにシモーネさん、居場所が分かったかも」
「本当か?」
「私たちは、一体どこに?」
実は、王国から近い場所に居ること知った。ここは、王国の南にある山の中であるということが判明した。王都まで、そこそこ近い。
僕たちは、すぐに移動を開始した。日が暮れる直前に、僕たちは無事に到着した。僕たちもよく知っている、あの王都に。
リーヴァダンジョンへに潜り、戻ってきた頃には6日間も経過していた。
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