第49話 長期戦
主に僕が魔法でドラゴンに攻撃を当てて、ダメージを与えていく。注意を惹きつけたら、その隙にフレデリカさんが視界の外れた場所から不意をついて攻撃を加える。大剣で思いもよらない攻撃を受けたドラゴンは、怒りによってターゲットを変える。攻撃してきたフレデリカさんに向かおうとする。
頭の向きを変えようとする瞬間を狙って、シモーネさんが遠距離からドラゴンに意識外からの攻撃。再び、不意をつかれたドラゴンは顔を攻撃されたことに怯んで、動きが止まる。奴の意識から消えていただろう僕が再び魔法を放つ準備が完了して、ドラゴンにめがけて思いっきり放つ。
「ギャウギャウッ!?」
魔法の脅威に晒されるとドラゴンは、再び僕にターゲットを定めて向かって来る。ターゲットの管理を徹底する。
「一旦、引いて下さい。フレデリカさんは!」
「ッ! わかった……!」
接近戦を挑んでいるフレデリカさんは、ドラゴンが尻尾を振り回した攻撃に何度か当たっている。大剣で防御しようとしているが、ダメージが少しだけ通っている。
まだ戦えているが、一旦彼女を後ろに下がらせて休憩を取るように指示する。その間は、俺が奴を引き受ける。フレデリカさんは指示を受けて、すぐに後ろへ下がってくれた。指示通りに動いてくれるのが、本当にありがたい。
魔法防御壁を使い、ドラゴンからの攻撃を受けないようにする。シモーネさんは、遠距離からドラゴンの攻撃が届かないようにしたり、火炎を吐こうと開けた口の中に向けて矢を打ち込む。奴に攻撃をさせないようにする。
「回復した、戻る!」
「はい! 来て下さい!」
俺とシモーネさんがドラゴンを抑えている間に、フレデリカさんが復帰してくる。また同じ順番で、攻撃を繰り返す。
このようなパターンで何度か攻撃を繰り返して、気勢をくじくように動きを制していく。
ドラゴンは、普通のモンスターに比べて物事を判断できる知能があった。僕たちが順番にドラゴンを攻撃している、という連携パターンに途中で気が付く。
順番に攻撃していることに気付いたドラゴンは、次に誰が攻撃してくるのか予想をして身構えようとする。奴が身構えて攻撃に備えた事を察知すれば、僕たちは状況に合わせて連携の攻撃順番を柔軟に変えていく。
魔法を2回連続で放ったり、フレデリカさんが離脱するフリをして反転、再び接近して攻撃を加えたり。それぞれが瞬間に判断して、対処する。その都度、僕も指示を出していく。
こうなると、怒りで狂ったドラゴンは火炎を狙いも付けず周囲に吐き出し、巨体を思い切り動かして暴れ回しながら周りを破壊しようと猛り狂う。
そうなったら、僕たち3人は一気にフロアから急いで離脱。ドラゴンからの攻撃が届かない場所へ避難する。ドラゴンが暴れ疲れて体力が尽き、動かなくなったところ再び近づいて、攻撃していく。
「ギュウッ……!」
「ふぅ……、おそらく、もうすぐで倒せます! 最後の一踏ん張りを、頑張って!」
「ッ! おう!」
「わかったわ。危なくなったら、下がって! 私は、まだまだ余裕よ!」
「お願いします!」
戦闘は、2時間も続いていた。僕たちは結構な体力を消耗して疲れていたけれど、それ以上にドラゴンは傷だらけで満身創痍な状態となって動き続けている。驚異的なドラゴンの生命力である。
ドラゴンの身体は僕の魔法攻撃によって抉られた傷やら、フレデリカさんの大剣によって付けられた傷でいっぱいになっていた。奴の動きは鈍り、火炎も尻尾の攻撃も余裕で避けられるようになった。しかし、ドラゴンは動き続けている。油断をしないように攻撃を続けている。
ダンジョン内はモンスターは生命力が失くなると、光の粒子になって消えていく。もちろん、今戦っているドラゴンもダンジョン内のモンスターだから例外ではない。なので、傷だらけで死んだように見えたとしても、光の粒子に変わる瞬間まで戦闘は終わらないということ。
慢心していると、奴から思わぬ攻撃を受けてしまう。緊張感を切らさないように、注意しながら戦闘を続ける。
もうすぐ、奴は死ぬはずだ。そう信じて、僕たちは攻撃を続けた。
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